第101話 仏蘭西王の恋文

「まあ、フランソワ様からの手紙ですの?」

ポルトガル王の未亡人エレオノールは嬉しそうに言う。


「はい、姫様 仏蘭西の王様は王妃様亡き後、今は一人身で

貴婦人を大事にされる方です」吟遊詩人の少年シオン


「私を労る言葉に‥私をとても美しいと 私のような立場の者なのに」


「エレオノール様、貴方様は神聖ローマ皇帝、スペイン王の姉君

ハプスブルグ家の姫であらせられます」

営業用の素晴らしいスマイルで吟遊詩人のシオンが言葉を続けたのだった。


後には彼女エレオノールはフランス王の後妻となるのだが‥



こちらは 戦で囚われ、緩い監禁状態の仏蘭西王フランソワ王

「では、この手紙をフランス王宮にお届けします」

マルタ騎士団総長であるリラダン総長


「すまないな 内政での仕事もある それに私の軟禁からの解放の条件も」

やや眉をひそめてリラダン総長

「それから王の恋人である姫君にはこちらの手紙ですね」

「私を想って泣いているようだからな 彼女の夫の伯爵に虐められぬように」


しばしの沈黙


「レデイは花のように美しく、いたわれなければならぬ」

「…では、私はこれで」

「いつも有難う リラダン総長 

本来なら、今、仕えるのは私ではなく神聖ローマ皇帝やローマ教皇だから」

「…ええ、ですが 私はフランス貴族でもあります」

リラダン総長が扉を閉めた後


「ああ、間もなくデイナ―の時間だ エレオノール姫との食事の約束がある」

そっと微笑むフランス王がいた


オスマン帝国と結び、神聖ローマ帝国と対立と戦いを繰り返しながらも

歴代王として優秀でしたたかで 

内政ではレオナル・ド・ダビンチを招くなどのルネッサンスの華を咲かせた


この時の王は優雅な囚われの日を送っていたのだった。

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