第31話 スリーシテイズ 城塞・・港 

港の漁村、アラブ訛りのある者達、人種が違う者達が少なくない


「騎士様たちが守ってくれるなら

幾度も此処もゴソ島などは襲われたから安心だ ありがとうございます」

漁師たちなどの日焼けした者達が笑う


「そうか・・それは良かった」騎士達も微笑んだ。

他にも幾つもの歓談をして、騎士達は一時住まいに戻る。


一時住まいの屋敷で

「やはり、内地の貴族たちと揉めぬように港の位置に城塞を築こうと思う」

リラダン総長 それから、ため息が一つ漏れる。


「それに敵からの攻撃、海を荒らしまわる海賊船たちへの対応にも

やがてはオスマン帝国の海軍も来る可能性が高い」

リラダン総長が呟くように話した。


騎士達は そっと話をしていた。

「イスラムの商船も間違いなく捕獲出来るでしょう」「ふむ、身代金も期待・・」

「・・奴隷として捕らえますか」


「報復合戦が、また始まりそうだ イスラムの海賊、あの赤ひげも暴れ回っている」

「神の導きを信じて 我らは敵と戦い、キリスト教側の者達を守るのみ」


「海賊だけでなく

皇帝、スペイン王に他の王国は幾度も、耐え難い戦火で領土を奪われているから」


「東欧はすでに奴らの手中

スペイン王と血のつながりのあるオーストリアのウイーンの都も危なかった」


「ウイーン包囲戦か」「ああ・・それに以前の海戦では、こちらも煮え湯を飲んだ」


「フランス王、皇帝ハプスブルグ家が憎くて

長年、ハプスブルグ家と戦ってきたフランスは今度はオスマン帝国と

手を握ったからな」 


「まさか、我らを脅かす異教徒

オスマン帝国のスレイマン一世とフランスが手を結ぶとは・・」

「外交とやらで貿易の旨味もあるだろう」

 

「そこはヴェネチア、アマルフイなど都市国家も微妙だ」

「オリエント貿易支配地はオスマン帝国とタタール(モンゴル)に抑え込まれているからな」

「他にも支配下となったイエルサレム、エジプト

北アフリカのチュニス(南イタリアの近辺)」



「テンプル騎士団を壊滅させたのもカペー朝のフランス王」

「法王までも憤死させたカペー朝は絶えて滅んだが・・」


「大昔の仏の尊厳王(オーギュスト)、敬虔王さま方、十字軍遠征した歴代の王達がいたというに・・いと高き天の上で嘆かれるだろう 

今のフランスのヴァロア王朝もまたカペー朝の縁故になる」


「確かにフランス王フランソワ一世はカール五世陛下(カルロス五世)とも戦争で

死闘を繰り返している・・だが」


「仏の尊厳王と英国のリチャード獅子心王が共に戦った時代は遥か昔の彼方」


騎士達は共通のラテン語でなく、母国語でそっと話す

他の騎士達はそんな話もしていた。


南欧フランス出身のリラダン総長とヴァレッタ隊長はそんな騎士達の話を聞きながら

小さなため息に肩を少しすくめた。


地図を広げるリラダン

「赤ひげの海賊達はイスラムの海軍でもあり、奴らは必ず襲ってくる」


「我らの砦は

海に面した この三か所に建造する」


それは三か所、やや内陸よりだが

内海に引き入れた位置に飛び出す 海岸線の三か所


横に海へ飛び出した位置、後の美しい城塞都市 スリーシテイズ


「此処の名、城塞は聖エルモ・・と名をつけたい」

「此処を敵が一番に襲うでしょうね」「ああ・・その可能性が高い」

「こちらは・・名前は・・聖ミケーレ(聖ミカエル)砦」


島の陸、内部に入り込みつつ

飛び出した最先端の位置に作られる三つの城塞


激戦となる聖エルモ砦は墜ちる・・残酷で壮絶な運命が用意されていた。

生きながら引き裂かれる あるいは少しづつ肉塊となる


美しい地中海の青が、死肉と血で海が赤黒く染められ


そう、護り手の修道騎士達、従騎士、司祭 彼等は一人も生き残らず

悲惨な惨い運命が待っている 


なお、それはリラダン総長より数代後の引き継ぐヴァレッタ総長の頃となる。





21,11,12~11,14

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