第26話 イエニッチエリの少年

コンスタンティノープル トプカプ宮殿

まだ十代の少年兵士が任務についていた イエニッチエリの少年兵士


彼は 西の角にある宮殿の部屋をそっと見ている

同じくらいの年齢の高官の娘、美しい姫君


数年前、まだ任務についたばかりの頃、任務中にちょっとした怪我をした彼に

彼の怪我した手に薬を塗り、自らのハンカチを巻いてくれたのだった。


デヴシルメと言われる制度、税として徴兵される 東欧などから 

集められる子供や10代の若者たち 


彼の故郷・・引き離された家族、もう母や姉も兄妹の顔も思い出せない

自分の本当の名前さえ・・


改宗に 激しい修練の毎日だった 教育され、神と皇帝のみを崇め

特別な約束をされて 

とうに心は凍りついたと思ったのに


心が疼くのは 切ない彼女への想い


少し前に逢った 黒髪の青い瞳をした 美少女 不思議な女官が言った。


決して、宮殿の仕事から離れてはいけないと・・特にマルタ島 そこに行けば

死が・・残酷な死の運命が待っていると


あれはどういう意味だったか


中庭には穏やかな風が吹き抜き、噴水と花々が咲いていた。



2021,10,10 初稿









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