第50話 流転

 俺達は、門に居た戦士によって、すぐに街の中心にある建物に案内された。


 「ほう、この瘦せた貧弱な子供が、5重魔法陣をつかえると?」


門の戦士が、綺麗な服を着たおっさんと小声で話している。




 「儂は、この街の代官を務めている者だ。 で、君は5重魔法陣を使用出来ると聞いたが、本当かな?」


 「うん、この師匠ゴーレムは5重魔法陣で作った」


俺がそう答えると、代官と言ったおっさんは師匠ゴーレムを見つめた。


師匠ゴーレムは、人にしか見えない、いや じっくり見ると 人としては非実在の者とわかるだろう、綺麗過ぎるのだ、その銀髪はサラサラと動きに合わせて揺れ、その瞳は瞬き一つせず美しすぎる曇りない赤、肌には傷痕一つさえ無くまるで白い陶器で作られたような芸術品。  そんな人が、居るはずがない そう 人形のみが持つ美しさを持つ人が居るはずが無い。


 「私を見ても、 マスターを疑うのか?」


師匠ゴーレムは、まるで不快感を隠さないように代官に言葉を吐いた。


 「少し、さわせてもらっても いいかな?」


師匠ゴーレムは、傲慢に手を差し出した。


 「これは、これは」


代官は片膝をつくと、師匠ゴーレムの手を取り口付けをした。


 「失礼しました、レディ」


代官は、まるで 惜しむように手をゆっくり離すと立ち上がり


 「まさに、英雄の異能ですな…… すぐ、州都に いや 王都に連絡入れましょう」


代官の目は、師匠ゴーレムに釘付けになっていた。


その後は、凄く丁重に扱われた、上等な服を用意され着替えた 食事も手の込んだ村では食べた事のない物が出された。


そして、広い部屋でフカフカのベットで暮らした。


もちろん、代官に色々と聞かれた。


村が壊滅した事を伝えると、すぐに調査をすると答えてくれた。


そして、異能ゴーレム クリエイトについては、執拗な程に隅から隅まで聞かれた。


特に、5重魔法陣については微に入り細を穿つ程聞かれた。


5重魔法陣は、3回しか発動出来てないと説明すると、少し落胆していた。


しかし、代官の態度は丁寧で優しい物だった 俺には


師匠ゴーレムに対しての代官の態度は異常だった、まるで……恋人に接するよう、まるで主人に接するように、全てにおいて師匠ゴーレムを優先しているようだった。



 そんな日が続き、この街での生活に慣れた頃に王都からの迎えがやって来た。



 俺達は、代官と共に王都に向け出発することになるのだった。


この頃には、3重魔法陣のゴーレムは50体に戻っていた。


俺とゴーレム51体、代官と護衛の戦士20名の王都への旅は始まった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る