第2話 疑問

 一体、この青年に何が起きた?


 運ばれてきた時には、すでに心肺停止状態だった。私のできることはと言えば、その確認を行うのみ。


 本当に、この青年に何があったのか? 一見して元気な若者に、いったい何が起こったのだろう。


 救急隊から聞いた話では、あの遊園地で彼の体に『何かが起きた』としか思えなかった。


 だが、それは一体何なのか? 彼に何が起きたのか?


 私の中で反復されるその疑問。もちろん、家族はそれ以上の想いだろう。せめて、考えられる原因だけでも、この家族に告げることができないか?


 そういえば、救急車にいっしょにのってきた子ならば、何か知っているに違いない。どんな些細なこともでもいい。何か考えられる手掛かりになれば……。


 そう思い、近くにいる看護師に声をかけてみる。


「わるいけど、遊園地から来た子がいたよね? あの子に話聞けないかな? そこで何が起きたのか知りたいんだ」



 かなり非難の色が混じっているその看護師の顔。だが、彼女は黙って部屋を出る。


 そして、しばらく時間が過ぎた後、その少女は看護師に支えられるようにして部屋へと入ってきた。



 看護師に連れてきてもらった彼女は、まだ眼元が腫れたままだった。こんな時に、それを聞くのも酷な事だとは思う。でも、どうしてもそれを確認しなくてはならない気がしていた。


「つらい時に申し訳ありません。遊園地での出来事を教えてください。どんな些細なことでもいいので、彼に関係することをできるだけ詳しく」


 こんな少女に、なんて酷な事を聞くのだろう。確かにそう考える自分がいる。だが、これは仕方がないことだ。そう自分に言い聞かせながら、彼女に話しを促していた。

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