村の農家さんたちと仲のいい主人公。この設定にしたの興味深いですね。彼女の使い魔である「猫」の視点で物語が進んでいきますが、猫の目からすると、主人公は魔女なのに魔女らしくない。魔女のブランドイメージを全然体現していない。そこに頭を悩ませています。
その「ブランドイメージを重んじる」ということが、貴族の振る舞い・マナー教育に似ているなあって思いました。洗練された社会の人間しか、自分のキャラクターイメージを統一的に矯正しようという発想はでてきませんし、それに適応できない人々の玉の輿苦労物語は世界中に山ほどありますから、かなり農民寄りな価値観を持っている主人公は魔女というブランドイメージを体現する存在になれるとは考えにくいんですよね。
さてそれではどうするか。続きは自分の目でお確かめください。
魔女らしくない地域密着型魔女のご主人様と従者の猫は、ほのぼのと暮らしながらもある危機に直面している。本来、魔女は「恐れ」を栄養とするのに、ご主人様は村人たちに溶け込んでいるので、「恐れ」られなくなってしまったのだ……。
ご主人様の命がこのままでは危ないと、彼女を魔女らしくプロデュースしようと奮闘する猫が可愛いです。村で発生したある事件を基軸に物語が進むのですが、キャラクターの設定とミステリー要素が見事に絡み合い、結末へと収斂されていく様が読んでいて心地よいです。
怪事件の推理の先に、名コンビが見出した答えとは……!?
(カクヨムWeb小説短編賞2020“短編小説マイスター”特集/文=カクヨム運営)