第8話 破壊-(8)
御光様。
濫觴村に代々伝わる、土着神の名である。
この一帯を守護し、人々を救うとされている神だ。だが、代償として人々が重大な過ちを犯せば、それを正すために災いを
どうにも不確実な部分が多いが、当時は口伝が主だったのでしょうがないだろう。つまり、それほど古い時代から崇め奉られているということだ。
形として残っている信仰は、身近なもので言えばこの『お供え』くらい。
村の子供たちが代わる代わる食べ物やお酒を社に持っていくという慣習だ。どれだけの意味があるかは分からないが、一日でも供物を忘れると逆鱗に触れるとあるので、面倒ながらも子供たちは皆従っていた。
御光様の社は、小山の奥に建てられている。
距離自体はそう遠くはないが、傾斜のキツい階段を上っていかなければならないので、どんなに若くても最後には息があがるだろう。
深い青をした並木と、年期の入った石造りの階段。同じような光景がしばらく続き、やっとの思いで社に着く。
社はちょっとした小屋ほどの大きさだ。
所々剥げた朱色の塗りに、比較的質素な造りの粧飾。中は大人が三人ギリギリ入れるくらいの広さであり、中央の祭壇には御光様のご本尊である『
「わあ、凄い。まさかこんな小さな村にこんな立派な物があるなんて……」
鎭の剣を見た女帰天師は、思わず息を呑んだ。
「村で唯一の宝物です。本当、誰が作ったのか……」
供物を祭壇に置きながら白蓮は言った。
「詳細は分からないの?」
「はい。そこまでは伝わってなくて……ただ、この剣に祀られている御光様は、人々の間違いを正すために災いを齎す、とだけ」
「ふうん。典型的な土着神ね。面白い信仰だけど」
「おいおい。本当にそう思うのか?」
背後から、帰天師の言葉に疑問を呈する声が。
振り向くと、そこには雑に切られた長髪に、不潔な
片手には酒を持っており、酔っているのか
そしてその腰には、格好と不釣り合いに立派な、緋色の束をした一振りがあった。
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