魔カードで遊ぼう

澄岡京樹

レッツ・フダディエイト!

魔カードで遊ぼう



「じゃ、お前も〈魔カード〉やろうぜ」

 友人たちに誘われて、俺は〈魔カード〉とかいう謎のカードゲームで遊ぶことになった。色々ルールがあるらしいが、今回は四人で行うバトルロイヤル・ルールだそうだ。


「でも俺そのカードゲームのことマジで全然知らんねんけど」

 そう訊ねても、

「いやいやキヨシならいけるって」

「ノリよノリ」

「とりあえずなんとなくルール把握できるようになったら良いからさ」

 と、三者三様な言い方と見せかけて全員思いっきり〈魔カード〉をオススメしてきていたのだった。どんだけ遊ばせたいねん。


 という導入。それで早速俺たちは〈魔カード〉で遊ぶことになったのだが……


われのターン! 吾は〈強欲のゴウヨーク〉を召喚! 城カードの前にゴウヨークを移動させターン終了」

「僕のターン! 僕は〈弩級弓兵バリスタ・アーチャー〉を召喚し、空中の足場に配置! ここでイベントフラグを立ててターン終了!」

「ワシのターン。……ふっふっふ、こちらの城カードにセンチネルが未配備の時、このセンチネルは召喚できる!」

「何!?」

「何だって!!」

「ワシは〈永き嘆きのタイダル・ティアー〉を召喚! これにより城カード周辺の堀からセンチネル〈ティアー・ドロップ〉を大量に召喚することができるッ!」

「何ィ! なれは吾らが城の守りを固めることを承知の上でッ!」

「クッ、タイダル・ティアーは進軍とともに僕たちの土地に存在する水マップからもティアー・ドロップを召喚できる! そんなレアカードを持っていたなんて……なんてね!」

「ぬ?」

「何だ? 我がタイダル・ティアーをどうにかできる策があるというのか?」

「そうだ! 僕は立てておいたフラグを発動! イベントトリガー〈炸裂! 天空のスナイパー〉! これにより強制的にイベント戦が開始! バリスタ・アーチャーの初登場補正をステータスに加算し——タイダル・ティアー、撃破!」

「何ィィィィィィ!!?」

「や……やりおった!!」

「ぐぬぬ……これによりこれ以上ティアー・ドロップは召喚できぬ……やるなァ……」

「フフ、これが僕とセンチネルたちとの絆だよ」

「ククク、ざまぁないのぅ……」


「いやわからん」

 いやマジでわからん。知らん英単語が大量に出てきた時の長文読解並みにわからん。——え、この意味不明の単語何? 他の単語から文脈を読み取るか——わからん、他の単語もわからん……何だこれ……何もわからん……——みたいな時あると思うんですけど今まさにそんな感じです。知らんワードが頻出しまくっててわかりそうで何もわからん。俺は一体何を見せられている? 俺は一体何をすれば良い? 俺はそもそもなんで参加させられてんの? そんな色々な感情がない混ぜになって混沌、つまりカオスな気持ちになったまま俺は謎の盤面を見せられていた。目的とか勝利条件とか諸々を何一つ理解しきれていないまま、ただただボーッと眺めるしかない状況。本当に俺は何でこのゲーム遊んでいるんだろう——と、


「キヨシ、ワシはこれでターン終了や……」

「次はキヨシくんのターンだよ」

「うぬの力、見せる時ぞ!」

 なんか激励してくる友人たち。申し訳ないんですけど全然わからんので何もノレてないです。


「いやマジで何したら良いのかわからんのだけど」

「とりあえず山札からカードを一枚引くと良いよ。引かなくても良いけど」

 あ、引かなくて良いんだ。なんか手札らしきものもあるけどやはり知らん単語だらけでよくわからん。なんか糸口になれば良いなと思って山札から一枚引こうとしてつまみすぎて二枚引いてしまった。


「あ、ごめん。一枚多く引いちゃった」

 というわけで一枚戻そうとしたのだが、


「何じゃとぉぉ!? 【ダブル・ディシジョン】!?」

 何?

「そんな……キヨシくん、そんな大技を今ここで!?」

 大技? 何が?

「ウムム……キヨシ、お前さん〈札伐闘技さつばつとうぎ〉の才があるようだな……」

 いやただのプレミ(※プレイミス)なんですけど。ていうか札伐闘技って何?


 なぜか唸りに唸る友人たち。何も説明してくれないので俺はとりあえず手札のカードをジャンジャカ場に出してみることにした。


「エッ! 〈陸を抉るドリルマン〉を水上マップに!? どうしてそのバグ技を知ってるの!!?」

 いやバグ技って何? これアナログゲーですよね?


「汝、何をした!? 〈天翔ける一角ライオン〉を城の地下迷宮に設置じゃと!!? それは伝説のレイド・イベント・トリガーではないか!!?」

 レイドイベント?? 何? これそもそもみんながプレイヤーになってバトるゲームだよね? 俺が何でボスキャラを投入できるの?


「ワ、ワシは信じられん光景を目にしている。……この状況でキヨシが場に出したあのセンチネルを見ろ……」

「何じゃって!!? 天才か??」

「そんな……あのセンチネルは——」


「「「〈矛盾王・パラドクスX〉!!!???」」」


 何を言っているのかサッパリだ。俺はただ手札からカードを適当に置いているだけなんだが?


「じゃあ後これも出してみるわ」

 ということでイベントなんたらって書かれているカードを城カードの上に置こうとしたんだけど、みんなが「あ、そこに置くんだ」みたいな表情をしたのでパラドクスXというカードの上に置いてみた。するとあら不思議。


「「「矛盾王が無限王にィィィーーーーーーッッ!!?」」」


 なんかわからんけどみんなすごく驚いて、あとなんかわからんけど俺は無限の力を手に入れて勝利したそうです。何もわからんままなぜか勝ってしまった。


「すごいよキヨシくん! 初めてでこんな魅せ方をするだなんて!」

「フン、吾は納得いかん。ビギナーズラックのまぐれ勝ちでないと良いがな!」

「だが運も実力のうちと言う。ワシは新たな札闘士フダディエイターの誕生に胸が高鳴っているぞ……!」


 そんなこんなで胴上げをされる俺。わっしょいわっしょいされる中、結局何で勝てたのか何もわからないままではあるが、なんかとっても楽しくはなってきた。褒められると気分が良いということだ。

 だから、まあそのなんだ——


 終わり良ければすべて良し。お後がよろしいようで。

 というわけで、良いお年を〜〜



魔カードで遊ぼう、了。

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魔カードで遊ぼう 澄岡京樹 @TapiokanotC

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