第5話

「…ポテトサラダ美味しい」


そう言って小鉢に盛られたポテトサラダを口いっぱいに詰め込んで咀嚼する。


目の前にいる玲於は呆れた様にそれを見て笑う。

でも本当に玲於の作るご飯は美味しい。

冗談とか贔屓ひいき目抜きで…


もうここでお店開けるんじゃない?っていうレベル。

お昼も玲於に作ってもらいたい位なんだけど、私も玲於も朝がとても苦手なのだ…



ご飯を食べ終わって洗い物を玲於に任せ私は再びkureruの所に向かおうと部屋に足を向ける。


が進まない…


「あれ?」


ふと自分が抱きつかれている事に気づく。


「あの〜?玲於サン?」


身体に巻き付けられた腕を軽くトントンと叩き声をかける。


「…ん……」


私の心配を他所に玲於は私の背中にグリグリと頭を擦り付ける。


…え?

どうしたの?

不思議そうにふりかえっても抱き着いたまま一向に離れないので表情が伺えない。


「行かないで…」


暫くしてぽつんとそう呟かれると、返事をする間もなくパッと手が離される。


勢い良く振り返り背後を確認するとテレビの前のソファでぎゅうと縫いぐるみを抱き抱えて体操座りをしている玲於がいた。


玲於はチラチラと此方をチラ見しつつテレビを眺めていた。


「ん…」


ポンポンと自分の隣を軽く叩きながら小さくそう零す。


なるほど…

慌てて玲於の隣に座りテレビを眺める。

きっとお父さんもこのテレビ見てるのかな…







「…眠いか?」


何時間経ったのかずっとテレビを見たり、ゲームをしていた玲於がふと此方を向いて首を傾げる。


「ん…まだ平気」


そう言って相手の服を小さく摘んで寄り掛かる。


「…絶対眠いだろ?ほら寝るぞ」


軽々と私を持ち上げて冷たい廊下を歩く。

微睡みの中心地良い冷たさを感じつつ意識を落としていく。






「歌恋っ!!歌恋ってば!!起きろ…」


バタバタと忙しない足音と美味しそうなパンとバターの絡む匂いがする…


「ん…あと少し」


そう言って再び瞼を閉じようとする。



「今日はちゃんと学校行くって言ったろ?」


あれ?そんな事言った記憶が無いが玲於が言うなら多分私はそういったんだろう…

でも眠い。

寝たい。


「お昼から行く…」


間延びした声でそう言うが、聞き入れて貰えず布団が剥がされる。


手を伸ばしても布団に触れることが出来ずやむなく起き上がる。


部屋には既に玲於は居なかった。


制服に着替えて鞄を片手にリビングに向かう。

ご飯前に鞄を玄関に置いて玲於に“おはよう”と挨拶をする。


「おはよ…飯出来てるから食え」


そう言ってテーブルを指さす。


そこには溶けかかったバターの乗ったパンと冷たい牛乳とヨーグルトがあった。


壁掛け時計を確認しつつ口に詰め込む。



全部食べ終わって皿をシンクに突っ込んで玲於と一緒に学校に足を向ける。

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