おさらい・導入

 さてと、再び冒険を始めようと言う前に、ヴァイスシティについておさらいだ。


 ヴァイスシティはアルフレイム大陸最北端に位置するコルガナ地方にある。

アルフレイム大陸は北に行くほど寒かったりするぞ、俺寒いの嫌い、この真冬になんだってそんな所で冒険をしなきゃいけんのかね。そりゃやりたいからさ!

 で、そんなヴァイスシティは秩序で支配された領域はまあ狭く。

魔神って敵の襲撃、秩序で支配されていない領域から来る無法者に怯えてると。

どうにも重苦しい空気が町全体を覆っていると、辛気臭いのは苦手だ。


 そんでもって地理と歴史はと言うと。コルガナ地方西部の山脈から東の海へと流れる川の北岸に位置してると。元は穀倉地帯で、魔法を使って毎年豊作だったなんて言い伝えもあるが、魔神との戦争が始まってからは。城壁の外で農作業や牧羊を行う者がいなくなって今じゃ荒れた大地が広がるばかりのようだ、悲しいね。

 そもそもここはヴァイスシティじゃなくてモルガナンシン王国って所だったり。

 魔法文明時代(ラクシアの現代における三千年前くらいの時代の呼び方)に出来た国で、結構豊かだったらしいのだが魔神の襲撃が発生、街が壊れ、人が殺戮され、更におまけに奈落ってやばーい奴が出現した。


 最初は色々抵抗したし結構上手くいったけど、うじゃうじゃ出てくる魔神に結局は敗北。残念。で、紆余曲折あってモルガナンシンが再び表舞台にあがるのようになったのは。魔動機文明時代だ(魔法文明時代崩壊からおおよそ千年後、ラクシア現代において三百年前に滅んだ時代の呼び方)


 モルガナンシン王国の生き残りを担ぎ上げ、モルガナンシン公国って名前に変わってこの地を魔神防衛拠点にした。“魔神への盾”なんて呼ばれてたんだぜ。まあ、これもうまくいってたんだが。蛮族って悪い奴らの大侵攻と大陸全土に起きた大地震、後に大破局と呼ばれる災害によって。防衛施設は壊されて、更にその隙をついて魔神も入ってきて二度目の窮地を迎えるのでしたとさ。やっぱりダメだった。悲しいね。


 まあ、そんなこんなで一応は十数年耐え続けるが、追い詰められる。

で、それを打開すべく、人族(人間含む基本的にいい奴的な種族)のリーダーは不倶戴天の仇敵の蛮族のリーダーと手を組み魔神を退け、公国はその命脈を保った。

 のはいいのだが蛮族はそのまま国に居座り始めて、魔神の破壊と混乱を利用して勢力は拡大していった。そのせいでこのモルガナンシン公国は“悪徳の都”に成り変わったとさ。ここまで来ると俺だったらいっそ笑えと言ってしまうね。

 それほどまでにものの見事な清々しいほどの転落ぶり。一応は今でも正式名称はモルガナンシンだが、そんなの忘れて、この街は“悪徳の都”ヴァイスシティって呼ばれてると。


 さてと前情報はこれで最後かね、この街には4人の実力者がいる。

ビスクーネ川岸の港の全てを掌握する“千年の”チェザーリ

街を守護する黒剣騎士団を率いる“深雪の”ユイニー

旧市街(治安が悪い地域)における商業と流通を支配する“傷痕の”テレサ

この街の悪事の総元締め、蛮族の長“紅霞こうかの”ナグーザーバラ

 一応は魔神の脅威に対抗する為に協力関係を築いてるが。彼らが支配する組織は、主の意思を忖度してる様に抗争を繰り広げてるそうだ。


 まぁ、そんなヴァイスシティで、テオはなんやかんやと色々と駆け抜けて来た。

それはまた別作品で語られてるので読んで貰いたい。

そして、ここからは新たな冒険の新たな導入である。


導入4:秘宝


「まだまだ、先の長い旅になりそうだな……うん?」

(どうしたの、テオ、何か気になる物でも?)

「ああ、行き倒れだ、降りてくれ」


 本来なら冒険者に憧れる存在なんだが、テオは既に冒険者、その実力も英雄クラス

 なので、ちょっと変則的だが、シチュエーションはほぼ同じで少し改変。旅の途中で行き倒れたゴルディオ(人間/男/65歳)という老人と出会った事にした。

 

「ご老人、空腹ならば食料と水を分けれるが」

「いや、その必要はない、私の身体はもう持たない、その前に君にひとつ話をしたいんだ、効いてくれ」

「わかった、遺言を聞かせて貰おう」

「ありがとう、今から話すは、ヴァイスシティのとある「秘宝」の話……」

(ヴァイスシティだと!?)


 すでに死を覚悟していた、ゴルディオはテオにヴァイスシティに眠る秘宝についてを語り始めてくれる。テオにとって因縁あるあの土地にまだ謎はあるようだ。


 それによると、かつてゴルディオはあの悪名高い“悪徳ヴァイスシティ”で冒険者をしていたらしい。そして、30年前、彼と3人の仲間達はヴァイスシティの地下で「秘宝」を発見したのだ!

 その「秘宝」は、この世の物とは思えないほどに美しかったが、同時に恐ろしい呪いを持っていたため、仲間の一人だった斥候のフィルメラ(ナイトメア/女/当時28歳)がおぞましいバケモノへと変貌し、イーヴ神官のソロン(エルフ/男/当時33歳)は自ら命を絶ってしまった。ゴルディオと、魔術師のミムネア(ティエンス/女/当時23歳)は

、命からがら逃げ伸びたが、恐怖に取りつかれた彼はヴァイスシティを去ったのだと言う。


「残り少ない儂の財産を譲ろう。代わりに、いつか、あの“悪徳の街”に赴いて、バケモノへとなり果てたフィルエラを滅ぼしてはくれまいか?」

「……いつかではなく、今すぐにでも、だから、安らかに眠るといい」

「ありがとう。もしヴァイスシティを訪れたら、聖銀同盟のイオニスに……」


 最期にゴルディオはテオにかつての仲間を滅ぼして欲しい事を頼み、テオがそれに頷くと遺言と共に息を引き取った。ゴルディオへの祈りを捧げ終えたテオは彼の荷物を確認し、5000ガメルの銀貨と〈青い太陽が刻まれた銀の鍵〉を手に入れる。

 この鍵は「秘宝」と何か関係があるのかもしれない。

 この世の物とは思えないほどに美しい、呪われた「秘宝」!

 ゴルディオの遺言を果たすついでに、その「秘宝」を手に入れる事ができたとしたら、どんなにすばらしい事だろうか!


「グリフォン、南に向かうのは中断だ、進路を再び北に取れ」

(あら、その方角は貴方の大切な人が待つ方角では無いわよ)

「老人の最期の頼みを無碍には出来ん、いいからいけ!」

(ふぅ、強引な貴方も素敵よ、それじゃ早く乗ってね、いつでも飛べるから)

「ああ、目指すは、かの因縁の土地、悪徳の街、ヴァイスシティ!」


 こうして、ゴルディオの埋葬を済ませると、テオ浅はかならぬ因縁が眠る街。

ヴァイスシティへ向かい旅立ったのだった。

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