6.エピローグ

 昔の思い出にふけっているうちに、すっかりと時間がたってしまった。

 俺は何とか寝癖を屈服させ、この国一の家庭教師、カラト=フェイケンにふさわしい姿へと身支度を終える。

「そういや、今日は研究室の日だったな……」

 今日はカテキョではなくて、本職の研究の日だ。ここまで小ぎれいになる必要はない。だがまぁ、出勤中に誰かに見られるかもしれないし、研究の邪魔になるわけでもない。

 俺は宿の机の上に、ワウのために、一サパ紙幣を五十枚置いて、部屋を出た。

 宿から出て、町から町へと歩くこと三十分。この国の首都、アゼリアに立ち並ぶ研究棟の一つに俺は到着する。

 出勤時刻五分前。研究室にはもうすでに、同僚のラントンが、眠そうな顔で、実験の準備を始めていた。いつものように、ラントンがあいさつ代わりに俺をからかう。

「遅かったな、モテ男。今日はどこのご婦人の家から朝帰りしたんだい」

「五歳下の黒髪ぱっつんの女の子嫁にした奴には言われたくねぇよ。最近奥さんかまってあげてる? ダドリー」

 ダドリー=ラントンは余計なお世話だと俺の脇腹を軽くパンチした。

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