第二章 始めての魔力ゼロ 1.プロローグ
【カラト=フェイケン】
次の日、俺は日の登り始めたころにはすでに目を覚ましていた。学校を卒業して、家から出た後は、ずっと宿屋を泊まり歩いている。自分のベッドと言うものをよく知らないからか、俺はいつも気が張ったような気分で目がさめる。
ふと、俺の右脇から、すうすうと寝息が聞こえた。布団をめくると、案の定、そこにはワウが俺にしがみつくようにして寝ていた。
今日はどうやら寝小便をしていないようだ。俺はほっと息をつきながら、何とはなしに、ワウのことを撫でてしまう。
獣人だからなのか、子供だからなのか、ワウはとても体温が高くて、こう引っ付かれると暑く感じるくらいだ。
ワウが起きだす前に、俺はワウの頭を撫でるのをやめる。変になつかれては困るのだ。俺はゆっくりとワウを引きはがし、ベッドから降りると、鏡の前に立って、身支度を始めた。
俺は昔から寝癖が治りにくい体質だった。朝起きるたびに暴れまわる俺の髪は、よくメイドさんを困らせたものだ。いや、普通、メイドさんそこまでしてくれるもんだったっけか? 生まれつき、ずいぶんと甘やかされて育ったもんだ。
鏡越しに、なおもすうすうと眠るワウを見ながら、俺は昔のことを思い出して、クスリと笑ってしまった。
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