第56話 海岸のダンジョン
北門を出て、シーダンに乗り海岸沿いの街道を北に進む。昼頃にはダンジョンの側にある小さな宿場街に着いた。
冒険者ギルドと商業ギルドが並んで建っている。宿屋が何件かあり、牧場もある。ダンジョンの為に作られた街みたいです。
牧場にシーダンを預けて、ダンジョンへ向かうことにする。
「シーダン、私達はダンジョンに入って来るから、ここで待っていてね」
「ブルルルッ、ヒヒ――ン!」
シーダンは、頭を軽く縦に振って一鳴きした。
「なんだか、シーダンもミーチェの言っていることが分かっているみたいだね」
「ふふ。シーダンも賢いからね~、そうかもね」
シーダンのたてがみに、私の魔力を込めた淡いオレンジ色のリボンを3つほど結ぶ。誰もシーダンを傷つけないように結界魔法の付いたリボンです。
「シーダンいいな、そのリボン。ミーチェの魔力が込められているんだよ。僕も欲しい……」
ジークが、シーダンに羨ましそうに言う。
「ジーク……どこにつけるの?」
ジークのキレイな銀色の髪は、長くないので付けられない。淡いオレンジ色はジークの髪とアメジストの瞳には似合わないよ……それに、ジークにリボンは無いなぁ。あっ! 腕にミサンガがいいかもね。
「ジークには、このオレンジ色は合わないから別の物を考えるね」
「えっ! 別の物? ミーチェ、嬉しいよ。フフ」
ジークが、嬉しそうに微笑む。この笑顔に弱いのよね~。
シーダンと別れてギルドで地図を買い、海岸のダンジョンへ向かった。切り立った断崖にダンジョンの入口があった。誰かが警備をしているわけでもなく、ギルドカードをチェックされることもない。
「ジーク、ここは誰でも勝手に入ることが出来るのね」
「そうだね。冒険者じゃなくても、入れるみたいだね。ミーチェ、変なのがいるかもしれないから、感知魔法は切らさないでね」
「はい、ジーク……」
この場合の変なのって、盗賊?
ダンジョンに入って、進んで行くとノアールが待っていた。
『ニャ~オ(ミーチェ、来たよ~)』
「あ! ノアール、先に来ていたのね」
やっぱりノアールは、感知魔法で反応しないのよね~。
「ノアール、先回り出来るなんて流石だね……」
3人でダンジョンの中を進む。岩壁の迷路な所は、他のダンジョンと変わらない。1~10階に出て来る魔物は、スライム・ラット・シェル(貝)・ゴブリン・バット(蝙蝠)・カエル・タートル。
強めのタートルが、良い値段で売れる亀の甲羅を出すそうだけど、甲羅より貝とカニよね~。私だけかな……
「ミーチェ、10階まではランクEとDの魔物しか出てこないから、どんどん進むよ。いいかな?」
「了解です。あっ! ジーク、お願いがあるの。シェルだけ私が倒したいです!」
そう、レアでホタテ貝がドロップするのよ!! 狙うでしょ~!
「クスクス、分かったよ。あぁミーチェ、スライムもミーチェが倒して欲しいな。レアでポーションが出るからね。フフ」
「えっ、ポーション? ……はい」
ジークはにっこりと微笑むけど、何も聞きませんよ……
「ノアール。10階までのシェルとスライム以外を2人で狩るよ」
『ニャ~!(分かった~!)』
サクサク狩りです。みんな一振りで倒しちゃいますよ。30分もかからずに階段に来ました。
「ねぇ、ジーク。先にお昼ご飯にしよう?」
「そうだね。2階に降りる前に食べてしまおうか」
『ニャ~!(やったー!お昼だ~)』
階段近くの小部屋で、壁を作ってゆっくりお昼を食べました。そして、特上カニ身を目指して頑張ります!
5階のワープを取って、夕方には10階のワープクリスタルまで到着しました。そして、いつものように1つ戻って9階の小部屋で野営します。
「ミーチェ、明日の朝一番にボス戦をしようと思うけどいいかな?」
「うん、いいよ。久しぶりのボス戦ね! ジークの一撃で終わるけどね。ふふ」
夕食を食べながら、作戦会議です。獲得したてのホタテ貝を、先ずは塩焼きにして食べた後、次のホタテには醤油を数滴たらす……じゅるっ、よだれが出てきます……
「10階のボスは、<迷宮都市>と同じでホブゴブリンだよ」
『ニャ~オ!(僕もがんばるよ~!)』
「フフフ。ノアール、宝箱狙いだからね。ミーチェの幸運を付けたいんだ。開幕にミーチェが魔法を撃って……終わってしまうかもね……」
う~ん! いい匂いがして来た!
「ホタテ貝の醤油焼きが出来たよ~! 火傷しないでね~」
気が抜けない作戦会議です……料理しながらだしね、ふふ。
「ミーチェが貝を欲しがる理由が分かったよ。美味しいね~。もぐもぐ……」
『ニャ~オ~(ミーチェの料理は凄いね~)』
えっ! ホブゴブリンって、そんなに弱かったの? と聞きたいけど、みんな食事に集中したので聞けない……
「ふっ、みんな最後のホタテは醤油バター焼きよ! これで、みんなホタテの美味しさを忘れられなくなるの! 私のことを笑えなくなるはず……」
「おお~! ミーチェが神々しく見えるよ。クスクス」
ジークは、肩を揺らして笑っている。
『ニャ~! ニャ~オ、ゴロゴロ……(僕もう好きだよ! ホタテがぁ~、ゴロゴロ……)』
ノアールは可愛いね~。作戦会議は何処かへ飛んで行きましたが、楽しい夕食でした。ふふふ。
ノアールもボス戦に行きたいと、魔人さんの所には戻らずに泊まって行くことになった。3人で川の字になって寝ました。
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