第55話  感知魔法

 翌日、<港街オース>に戻る。まだまだ見ていない所が沢山あるので、シーダンを宿に預けて街中を散策する。お気に入りのカフェを見つけないとね!


 オシャレなお店は貴族街にあったけど、港を見渡せるバルみたいなお店を見つけた! このお店は朝から夜中まで開いているそうです。


「ジーク! あのお店に入ってみたい~」

「フフ。じゃぁミーチェ、そこでお昼を食べようか」


 帆船を背景に、店の中は沢山の人で賑わっています。獣人さんも多くて、何の獣人なのか考えるのも楽しい。ジークに獣人さんについて教えて貰っていたら、感知魔法が反応した。


 以前ジークに言われて、感知魔法をずっと掛けたままにしている。魔物はもちろんだけど、知っている人と殺気のある人に反応するようにした。


「ねぇ、ジーク。シャーロットさん達がこっちに来るよ……」


 目の覚めるような真っ赤なドレスを着たシャーロットさんと、その後ろにセバスさんがジークに向かって来た。もの凄く目立っていますよ……


「ジークハルト様……私達、3日後の船で東の港町に向かうことにしました」

「……」


 ジークは何も言わない。素っ気ない返事どころか、スルーです。後ろのセバスさんは、一礼して無言、無表情です。プロですね……


「ジークハルト様、引き留めてはくれないのですか? どうして?」

「……」


 シャーロットさんが怖い……ジークにあれだけハッキリ言われたのに引き留めろ、って……


 セバスさんが耐え切れず間に入る。


「ジーク様、申し訳ございません……3日後には、船に乗りますので、お許しください」

「セバス……頼んだよ」


 ジークは、呆れたようにセバスを見る。セバスさんは、顔を引きつらせて頭を下げる。嫌がるシャーロットさんを引っ張って出て行った。セバスさん、シャーロットさんのお世話が大変そうですね……


 バルでの食事も終わり、ジークとギルドの資料室へ行った。これ以上、シャーロットさんと顔を合わせたくないので、ダンジョンへ行くことにしたんです。ダンジョンに出て来る魔物と、ドロップ品をチェックする。


「ジーク! ドロップ品にカニ身があるよ~! カニ鍋が出来るよ!」


 なんと! ドロップにカニ身と特上カニ身があるよ……どう違うのか食べ比べないとね! これは、迷い人である私の使命だと思うよ!


「ミーチェ、それは美味しいんだね?」

「うん。ジーク、天にも昇る美味しさなのよ~。新鮮なら生で食べられて、ウットリする甘さなのよ~。2種類もドロップするみたいだから、食べ比べしないとね! うふふ」


 あぁ、鍋を買いに行かないと!


「クスクス。そんなに美味しいなら、専門店があるかもね」

「そうね、あるなら高級店街だと思う。レアドロップみたいだから高そうだけどね。私なら売らないで食べるよ!」


 その後、お鍋の道具を買いに行った。流石にカニフォークは売って無かったので、小さいフォークを買った。


 宿屋に戻り、今日も個室を借りる。ノアールも来て3人でゆっくり食事を食べる。


「ノアール、明日からダンジョンに行くからね~。カニを狩りに行くよ」

『ニャ~ン(ミーチェ、分かった~)』

「フフ。ノアール、ミーチェが美味しいカニ料理を作ってくれるって。楽しみだね」


 ジークは、にっこりと笑顔でノアールに説明する。


『ニャ~! ニャ~オ(なんだって~! 僕がんばるよ~)』

「ノアール、私と一緒に頑張ろうね! カニ鍋の為に~!」

「クスクス。ミーチェ、僕も頑張るよ」


 食事が終わり部屋でゆっくりしていると、感知魔法が知らせてくれる。シャーロットさんだ……


「ねぇ、ジーク……」

「うん? ミーチェどうしたの?」

「感知魔法が反応しているの。この部屋に向かって来ているみたい……」


 後を付けて来たら宿屋は分かるだろうけど、部屋までは分からないよね~。チップ渡して宿の人に聞いた?ありそう……


「えっと……人だよね?」

「うん、シャーロットさん。セバスさんはいない、一人よ」

「……」


 もしかして、ジークが部屋に1人だと思って訪ねて来ている? これは既成事実を狙っているのかな? シャーロットさん、恐るべし……


「迷惑だと言ったのに……シャーロット嬢は、困った人だね……」


 ジークがいつも素っ気ないのは、生い立ちだけじゃなくて、肉食女子に狙われることが多かったのかもね……一度でも、こんなことがあれば女性に警戒するようになるよね。


「ジーク、どうする?」

「どうもしないよ。ミーチェ、悪いけど部屋に結界魔法かけてくれるかな。顔も見たくないから、そのまま放置するよ」


 ジークらしいです……部屋いっぱいに結界魔法を掛けて寝ました。


 翌朝、宿の人に夜中に騒いでいた人は知り合いかと尋ねられ、ジークは寝ていて騒ぎにも気が付かなかったし、この街には知り合いはいないと答えた。


 騒いでいた人は、どうなったのかな……どんな勝負服(下着)だったのかも知りたかったなぁ……



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