第57話 久しぶりの宝箱

 翌朝、ボス戦へ向かう。


「ミーチェ、ボス部屋に入ったら開幕に魔法を撃ってね。後は、ノアールと僕で倒すからね」

「はい。ジーク了解です」

『ニャ~!(まかせて~!)』


 ボス部屋に入って、みんなに強化魔法を掛ける。奥でホブゴブリンが、私達に気が付き叫んでいる。


『ガアァッ!! グウオオォォ~!!!』


 ジークが奥に進み、すぐ後ろからついて行く。ホブゴブリンが見えると、ジークに声を掛けた。


「ジーク、魔法を撃つね!」

「ミーチェ、よろしく」

『ニャ~!(ミーチェ、ガンバレ~!)』


 開幕、私がホブゴブリン目がけて電撃魔法を撃つ。魔法を撃った瞬間にジークが、ホブゴブリンめがけて走り出す。


 ビリビリ! ドッーン!! ……ピクッピクッ


 よろめいたホブゴブリンにジークが一太刀あびせ、ホブゴブリンが倒れた。


 早い! あっという間のボス戦でした。そして、ホブゴブリンが消えた場所に、宝箱が現れた! 久しぶりの宝箱~!


『ニャ~ン! (僕の出番がなかったよ~!)』

「ふふ。ノアール、この後いっぱい出番があるよ」

「ミーチェ、宝箱が出たよ。ミーチェの幸運を見せて」


 うぅ、そう言われると責任重大ね。ドキドキする……


「開けるね! 良いのが出ますように~!」


 宝箱をゆっくり開ける……


 ……パカッ


 ジークが、ニコニコしながら宝箱を覗く。


「フフ、今回は何が入っているかな?」

『ニャ~?(美味しい物、入っている?)』

「ふふ。ノアール、食べ物は入っていないと思うわよ」


 この瞬間が、ドキドキする……


 ジークが、戦利品を1個ずつ取り出す。

・ホブゴブリンの魔石 ・ポーション(中)・体力の実 

・ホブゴブリンの片手剣


「ミーチェ、凄いよ! また、実が出たよ! 今度は体力の実だよ」

「やった~! ジーク、大当たりだね!」


 わ~い、実がでた! 金貨200枚だ~! やっぱり飛び跳ねてしまう!


「ミーチェ、大当たりだよ。可愛い……クスクス」

『ニャ~?(良い物~?)』

「そうよ、ノアール。ここのボスが出す宝の中で1番良い物だよ~」


 戦利品は、一先ずジークに預かってもらい先に進んだ。当たりが出たから、凄く気分が良いです。ふふ~。



「ミーチェ、11階からサハギンとクラブが出て来るけど、クラブはどうする? レアで普通のカニ身しかドロップしないけど」

「そうね……、カニ身を3つ取るまで、先に私が魔法撃つようにするね」

「分かった。ノアール、クラブ以外を好きに狩っていいよ」

『ニャ~オ(まかせて~)』


 あれは……半魚人のサハギン? 顔はヌメーっとしている魚で、手足がある。目には生気が無い……あぁ、顔はあんこうに似ている……


「ミーチェ、あれがサハギンだよ」

「ジーク、あれは……気持ち悪い……」

『ニャニャ~!(ミーチェ、まかせて~!)』


 ノアールは、速攻突っ込んで行って、ランクCのサハギンを一撃です。なんて頼りになる猫ちゃん! ノアールは、得意げに魔石をくわえて帰って来る。


「凄いね~! ノアール!」

「ノアールに負けていられないね。ミーチェ、僕も頑張るよ……」

『ニャ~ン!(僕、ほめられてる~!)』


 ジーク、ノアールに張り合わないで良いのよ。そんなジークも、可愛いけど……


「ジーク、無理はしないでね?」


 ドロップ品のカニ身、見た目はズワイガニでした。3つ出たので、後は自由に狩りながら15階へ進んだ。


 15階のワープを取ってお昼にする。朝は簡単に済ませたので、お昼はパスタにしました。オークのベーコンと牛乳と卵とチーズで、


「出来たよ~。今日はカルボナーラとサラダです」


 ノアールもいるので、小部屋でテーブルセットを出してゆっくり食べます。サラダは、超手抜きだけど美味しそうよ~。屋台で買っていたエビの香草焼きをカットして、野菜とオイルで和える。そして、レモンとオレンジもどきの果汁を少し絞って果実を添えます。


「ミーチェ、すっごく美味しいよ!もぐもぐ……」

『ニャ~! ニャ~オ。ゴロゴロ……(ミーチェ! 美味しいよ~。ゴロゴロ……)』

「ふふ、ありがとう。2人とも、よく噛んで食べてね」


 食後は20階を目指して進み、夕方にはワープクリスタルに着きました。ボス戦は、明日の午後から挑みます。何故なら……


「ノアール、2日も外泊したら魔人さんが心配するよ? ノアールが来るまで、ボス戦をしないでジークと待っているから、1回戻った方がいいよ」

「そうだね。ミーチェと明日の朝、一度ダンジョンを出てギルドで換金してくるよ。シーダンの様子も見たいしね」

『ニャオ~ン!(分かった~! ボス戦は待っていてね~)』


 20階のボス戦は、マーマンが数匹出るそうなので、ノアールが一緒の方が助かるんです。


 19階で野営して、夕食はハンバーグを作った。そして、魔人さんのお土産に、たまごサンドとハンバーガーを籠に入れてノアールに持たせる。ノアールを外泊させたお詫びにね。


「ノアール、魔人さんによろしく伝えてね」

『ニャ~! ニャ~ン!(わかった! また明日ね~!)』 


 ノアールが籠をくわえて帰った後、ボス戦の戦利品をどうするか決めました。ポーション(中)だけ売らないで、魔石と体力の実は売ることになりました。


「ねぇ、ミーチェ。僕にはミーチェの祝福があるから、体力の実は売るからね」

「うん、ジークにお任せします……」


 ドキッ、俯いて返事をする。そうね、祝福はキスでも増えるから……恥ずかしいけど、毎日のように増えているはず。確かに、ジークに実は必要ないね……


 その後、私はドロップしたサハギンの爪を魔法で削って編針を作った。そう、ミサンガを作る為です。ここのダンジョンには、ジャイアントスパイダーが出るので、その糸を手に入れたらジークに作ろうと思うの、リボンの代わりに。



 翌朝、ダンジョンから出て街に向かった。先に牧場に行きシーダンの様子を見た。シーダンは私達に気が付いて駆けて来る。


「シーダン! 元気にしていた~?」

「ブルルッ、ヒヒ――ン!」


 私はシーダンの好きな野菜を与え、ジークはブラッシングしながらシーダンに話しかける。


「シーダン、様子を見に来たよ。この後、またダンジョンに入るから、ここでゆっくりしていてくれ」

「シーダン、いい子にしていてね」

「ブルルッ!」


 シーダンの首を撫でながら、結んでいる淡いオレンジのリボンに魔力を込める。


 牧場の人に、追加のお金を余分に渡して牧場を後にした。



 ギルドに行き、依頼書をチェックする。レアアイテムの亀の甲羅の依頼書があったので、その依頼書を取って受付に行き、買取りカウンターに向かう。この流れも久しぶりです。


 買取りカウンターで、ジークは依頼書とギルドカードを出す。そして、素っ気なく言う。


「買取りを頼む。魔石の数が多いがここでいいか?」

「はい、こちらでいいですよ」


 買取りカウンターの職員さんにしては、若くて話し方が丁寧な男の人です。ジークと同じ位かな……


 ジークはジャラジャラと魔石とアイテムを出す。そして、最後に体力の実を出した。


「えっ!?」

「大きな声は出さないでくれるかな。そうだよ、ボス戦で出たんだ。時間の掛かるオークションには出さないから、即決の金貨200で換金してくれるかな」


 クールなジーク。カッコいい……


「いいんですか? ギルドカードに入金することも出来ますよ?」


 へぇ~、カードに入金出来るのね。ジークは少し考えて、私を見る。


「そうだった、もう隠れなくても良かったね。悪い、やっぱりオークションに出してくれ、そして、売上金はカードに入れてもらえるかな」

「その方がいいですよ。体力の実は人気がありますからね。金貨400枚以上の値が付くと思いますよ! 売上金は、ギルドカードに入金するように手続きをしますね」


 金貨400枚って……そっか、ギルドとしても10%の手数料が入るから、オークションに出す方が良いのよね。もしかして、オークションに出すとギルドの貢献度が上がるのかな?





  ※   ※   ※




『ミャ~オ! ニャ~ン!(主~! おみやげだよ~!』


「ん? なんだ?」


『ニャ~、ミャオ~ン(ミーチェがね、主に食べてもらってだって~)』


「ミーチェが作ったのか? どれ、美味いな。モグモグ……」


『ニャ~ン、ニャ~。(ミーチェが、よろしくだって~)』


「うむ。モグモグ……」


『ニャオ~ン(明日もミーチェと遊ぶんだよ~)』


「モグモグ……」


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