第49話 ジーク

 翌朝、ダンジョンに向かい、早速20階に飛びました。肉狩りです!強化魔法と感知魔法をかけて準備をする。


「ミーチェ、ハイオーク狙いだからね」

「了解、ジーク。1番ハイオーク、2番コカトリスです」


 感知魔法で周囲を見ながら、黙々と肉狩りです。3時間程で上質肉を5塊確保しました。お昼頃になり移動する。この辺りは他のパーティーも多いので、いつもの5階でお昼休憩です。


『ニャ~オ!』

「あら、ノアール。いらっしゃい。丁度、お昼の用意が出来た所よ。どうぞ、食べてね」


 何やら、ジークがノアールに話しかけている。


「しかし、ノアールは凄いな。ミーチェの居場所が分かるなんて……僕もその能力が欲しい」


 ジークは何をノアールに話しているんだか……可愛いなぁ。


『ニャ! ニャ~ン』

「契約すれば、分かるようになるのかい? でも、ノアール、君はミーチェと契約していないだろ?」

『ニャ~オ。ニャ~!』


 2人? は、真面目に話し合ってるみたいです。何だか、とても愛おしい……ギュッとしたくなるのを我慢する……うぐっ。


「ノアール。最後にプリンを出すから、食べて行ってね」


 にっこり微笑んで、プリンを出すと。


『ニャ~! ニャウニャウ~。ゴロゴロ……』


 尻尾でビシビシ椅子を叩きながら、食べている。忙しいね、ノアール。


「ねぇ、ミーチェ。このプリン本当に美味しいね」


 ジークも目をキラキラさせて、食べてます。2人とも可愛い、見ているだけで癒されます。ふふ。


「ありがとう。2人とも、ゆっくり食べてね」


 ノアールは食べ終わると、


『ニャア~? ニャ~ン!』


 何か、話しかけてくれてるようだけど、分かりません……


「ノアールの言葉が、分かればいいんだけどね~。ノアール元気でね」

『ニャ~ン』


 ノアールは、優雅に尻尾を振って行ってしまった。



 その後、ダンジョンを出てギルドに向かう。専用カウンターに行くと、テッドさんがいた。


「おう! ジークに嬢ちゃん、また籠ってたのか?」

「いや、半日だけ肉狩りをしていたんだ」


 ジークは、カードとドロップ品を出す。


「ん? 鹿肉は売っていいのか?」


 あぁ、鹿肉は、レアドロップだもんね。


「ああ、上質肉とコカ肉が、欲しかったんだ」

「ほお~! 上質肉が出たのか! あれは、旨いからなあ!」


 そうですよね~。例えるなら、国産の美味しいブランド豚もあるけれど、イベリコ豚みたいに脂身に甘みがあるんですよ!


 テッドさんには、毎回全部アイテムを買い取ってもらえて助かったから、お礼に1つ渡してもいいんだけど……


 ジークを見ると、私を見ていた。


「ミーチェ、お肉を渡したい? いいよ。ミーチェが、渡すといい」


 えっ! 何故分かったんだろう。


「うん。テッドさんは、詮索しないでアイテムを全部買い取ってくれて助かったしね。気楽だったから、お礼に1つ渡すね。ジーク」


 そう言って、テッドさんに上質肉を渡す。


「デッドさん、これ、どうぞ食べてください」


 にっこり笑顔で言うと、


「おお! 嬢ちゃん、上質肉をくれるのか? 太っ腹だなあ~、嬉しいぜ!」


 テッドさんが、嬉しそうに答える。


「ふふ。テッドさん、私達、移動することにしたんです。お世話になりました」

「なんだって! 急だな! 嬢ちゃんが、呪いになったからか? それとも、調査団にイジメられたか!?」


 テッドさんが、大きな声で言う。


「テッドさん、違いますよ! そうじゃないですよ。お魚が食べたいんです」


 笑顔で違いますと答える。背中を押してくれたのは、それだけど。


「急ではないんだ。ここに来る前から、次は魚を食べに行こうと決めていたんだ」


 ジークが、フォローしてくれる。


「魚か! そうか、寂しくなるなあ。また、来いよ!」


 テッドさんに挨拶をして、受付でVIPカードと異動届を出した。


 ギルドを出ようとしたら、酒場から、大きな声がする。サイモンさんだ。


「おーい! ジーク、ミーチェ、飲もうぜ!」


 ジークが、私の顔を見る。


「うん。いいよ、ジーク。サイモンさんに、挨拶した方がいいだろうしね」


 ジークに、にっこり微笑んだ。


「分かった。ミーチェは、優しいね」


 ジークと、こっちだと手を振るサイモンさんの所に向かった。


「相変わらず、サイモンはうるさいなぁ。お前いくつだよ? もう、24だろ? 少しは落ち着けよ……」


 な、なん、なんですとー! サイモンさんって24歳なの? ず~っと、30歳位だと思ってたんですけど……びっくりよ……


「ジーク! お前は~、相変わらず冷たいんだよ!」


 あれかな~、日本人が若く見えるの逆で、白人が老けて見えるのと同じなのかな~?


「じゃぁ、呼ばなければいいだろ?」


 もしかして、私が今まで、これ位の年齢って思ってた人達って、みんなもっと若いのかな? クライブさんとかも……


「そういう所だ! ミーチェも、そう思うだろ? ジーク飲めよ!」


 えっ? 何ですか? ごめん、聞いてなかった……


 サイモンさん、顔が赤いですよ~。お昼から、既に酔っぱらっている……ジークはエールを、私は果実水を貰った。


「ミーチェは、お酒は飲めないのか?」

「おい、サイモン。ミーチェがお酒を飲んでも飲まなくても、可愛いからいいだろ?」


 ジーク、何を言ってるのか……まだ、飲んでないよね?


「しかし、氷のジークがそこまで惚れ込むとは……ミーチェ! お前は凄いぞ!」

「ええ? あの……」


 なんか、恥ずかしいんですけど。話を変えないと……


「お酒は、飲めるんです。でも、酒癖が悪いんです。周りに迷惑を掛けてしまうから、飲まないんです」


 ジークが、こっちを向いて聞いてくる。


「えっ! ミーチェ、お酒飲めるの? 飲むとどうなるの?」

「ほお~! 絡み酒か? 泣き上戸か?」


 サイモンさんまで……この話に絡んでくるとは思わなかった。


「知りません。一緒に飲んだ人に、お願いだから飲まないでくれと言われたんです……」


 そう、成人して友達や同僚から『外では、飲まない方がいいよ……』と、言われました。


「ねぇ。ミーチェが、どうなるのか見てみたいけど……」


 ジークが、微笑んで聞いてくる。


 あぁ、飲めるって言うんじゃなかった……


「そうだな。よし! ミーチェ、飲んで見ろ! 後は俺が面倒みてやるから! オヤジ、エール1つ!」


 ガタン!


 突然、ジークが立ち上がる。


「サイモン!! 何故お前が、面倒見るなんて言うんだ! ふざけるな! ミーチェ、行くよ!」


 えっ! ジーク、サイモンさんの言葉に過剰反応じゃない? 酔っ払い相手に……


「えっ、ジーク?」


 ジークがキレている……何故、こうなるの? ジークに手を引かれて、酒場から出る。


「ああ? ジーク、何キレてんだ?」


 ジークが立ち止まり、振り替えって大声で言う。


「ああ、そうだ。サイモン! 僕たち街を出るから。元気でな!」


 ジークが、すごく不機嫌だぁ。そんなに怒らなくても……


「ああ? ジーク、お前いつもいきなりだな!」


 あぁ、サイモンさんに挨拶しないと。


「えっと、サイモンさん、お元気で」



 ジークに手を繋がれて、北門に向かって歩いて行く。ジークが歩きながら言う。


「ミーチェ、ごめん。サイモンにキレてしまった」


 私は足を止める。立ち止まった私を、振り返って見るジークに、


「ねぇ、ジーク。誰が何を言っても、私は、ジークが好きだからね」


 ジークは、目を見開いて頬を染める……


「うん。ミーチェ、嬉しいよ……僕も好きだよ」


 あぅ、凄く恥ずかしいことを言ってしまった。段々、顔が熱くなって来たぁ~。心臓もうるさい……


「あぅ~。ジーク、お魚食べに行きましょ!!」


 あぁ、どこかに穴があったら入りたい……


 ジークは凄く嬉しそうに言う。


「ミーチェ、可愛いね。顔が真っ赤だよ。可愛いね~」

「ジーク、ありがとう。もう、分かったから……」


 恥ずかしすぎる……


 ジークの機嫌が一気に良くなった。



 北門まで行って、馬車をキャンセルした。そして、牧場に行って、昨日乗った馬を買う。相乗りして、2人でのんびり旅立つことにしました。


「ミーチェと2人だけの旅だね」


 ジークは優しく言う。私を馬に乗せ、私の後ろにジークが、私を抱えるように乗る。ふふ、何だか幸せな気分です。


「ふふ、そうね。馬車を使わない旅は初めてね。ジーク、凄く楽しみよ!」

「うん。僕も楽しみだよ」


 これからも、ずっとジークと旅をしたいな~。


「あ! そうだ、ジーク。これを渡しておくね」


 ジークに、出来上がった片手剣を渡す。


「えっ! 付加魔法の付いた剣が出来たの?」

「うん。道中なら、そんなに強い魔物は出ないだろうから、試しに使ってみてね」

「ミーチェ、ありがとう。好きだよ……」


 ジークが、私のあごをクイッと上げてキスをする。うはっ、照れるぅ……路チュウですよ! 言い方が古い? しかたないよ、だって、アラフォーだもん!


「私の方こそ、ありがとう。ジーク、大好きよ!」


 あぁ、私達ってバカップルだね。ふふ。


『ニャ~オ!』


 えっ! ノアールが、飛びついて来た!


「ノアール! どうしたの? 見送りに来てくれたの?」


『ニャー! ニャ~ン』


 見送りじゃないようね……


「ミーチェ。ノアールも一緒に行くって、言ってるんじゃないかい?」


 ジークには、そう聞こえた?


「ええ! ノアールも一緒に海に行ってくれるの?」

『ニャ~!』

「ふふ、嬉しい。ノアールありがとう」

「良かったね、ミーチェ」


 とっても可愛い仲間が、一人増えました。


 新しい仲間と私達の旅が始まる。




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