第48話 調査終了

 お昼を食べ終わって、北門の広場に来た。南の港街行の予定を見る為です。


「ミーチェ、次の馬車は3日後だね。予約しておくかい?」

「うん。ジーク、そうしよう! もう、気持ちは海だしね。うふふ」


 私、海が好きなんだよね~。部屋から海が見えるリゾートホテルのバルコニーで、ワイングラス片手にのんびりするのが、夢なんですよ……もう、叶わないけど……


 そういえば、日本のことを考えなくなったな……どうしているだろう……夫は彼女がいるからどうでもいいけど、息子は心配しているだろうな……



「ミーチェ。宝箱は、3番目なのかい?」


 はっ! いけない、黄昏ていたよ……


「そうよ。ジーク、海に旅行だからね! 海を見て観光するの。そして、お魚を食べて~、やることが無くなったら宝箱探しですよ! 3番目です。ふふ」


ジークが、ダンジョンに行こうと言い出しそうだけどね。ふふ。


 南の港街行の馬車を予約して、食料の買い出しをする。今回も、何があるか分からないので、いつもより多目に買っておく。


「ミーチェ、お肉はまだあるかい? 上質肉は、ここのダンジョンでしか手に入らないからね」

「えっ! そうなんだ……」


 バッグにはまだあるけど、他で手に入らないならもう少し欲しいかも。


「ミーチェ、明日、一日だけ狩りに行くかい?」


 ジークが、私の様子を見て提案してくれる。


 凄いねジーク。イケメンで、面倒見が良くて、気遣い出来る男なんてそうはいないよ。本当に私には勿体ないです。


「うん。ジーク、そうする」




 その日の晩、ギルドから連絡があった。明日の朝、ギルドに来るようにと……王都調査団からの話しがあるそうです。


 ジークと顔を見合わせる。


「ミーチェ、仕方ないね」

「そうね。仕方ないわね……」


 また、呼び出しだぁ。いつ終わるんだろう。気が滅入る……


 ジークが私の様子を見て、


「ねぇ、ミーチェ。早く出発しようか? 明日の話が終わったら港街まで歩いて行くかい? それとも、馬を買って行くかい?」

「えっ! 歩いて行けるの? 馬に乗って? それも、楽しそうね」


 ノアールが、晩ご飯を食べに来た。


『ニャ~!』 

「ノアール、来たのね。食べる前に、少しお話があるの」

『ニャ?』

「あのね。近いうちにね、南の港街に行くことになったの。3日後の予定だけど、早かったら、明日かな。だから、ノアールとお別れなの。元気でね、ノアール……」


『ニャ~ン!』

「さあ、ノアール食べて。ありがとね」


 ノアールが食べ終わるまで、撫でていた。食べ終わると、ノアールは、頭を摺り寄せて来た。


『ニャ~ン』

「可愛いね~、ノアール」


 ノアールは、何度も振り返って、帰って行った。


「ミーチェ、寂しい?」


 ジークが、そっと抱きしめて、頭を撫でてくれる。


「大丈夫よ。ジーク、ありがとう」


 ジークの心遣いが、嬉しい。大好きよ……




 翌日、ジークとギルドに行き、応接室に通される。


「よお! 呼び出して悪いな!」


 ギルド長が、顎髭を触りながら入って来た。


「僕達が、話を聞く必要があるんですか? どうせ僕たちに、話せないことばかりなのに……」


 ジークが、冷たく言い放つ。


「まぁ、そうなんだがな。偉いさんが、呼べと言えば、しかたないだろう?」


 それは、そうですけどね……


 クライブさんと調査団の団長イグラムさん、副団長のライルさんが入って来た。向かい側に座り、クライブさんが、


「お待たせしました。王都の調査が、一旦終わったので簡単に報告に来ました」


 団長のイグラムさんは、我慢出来ずに話し出す。


「やあ! ジーク君にミーチェ君、今回の件を報告してくれてありがとう! 私が、長年研究している案件だったよ! 私は、昔の迷い人の研究をしているんだがね。その最大の謎だった……」

「おっほん!! イグラム様! その件は、極秘事項ですよ!話す内容に、気をつけてください!」


 ライルさんの眉間にしわが寄る……クライブさんは苦笑いをしている。


「あぁ、そうだった。すまん、ライル。つい嬉しくてね。あはは!」


 団長のイグラムさんは、凄く嬉しそうです。


 そっか~、イグラムさんは迷い人の研究をしているのね。思わず、ジークの顔を見た。ジークは、こちらを見ないで手をギュッと握る……


 イグラムさんの代わりに、ライルさんが続きを話す。


「それで、壁に書いてあった文字は、その迷い人が書いた文字だと分かったよ。封印されていたモノについては、話せない。君たちも、今回の件は、他言無用にお願いするよ」


 うん。私も魔人さんを解放したことは、絶対に言わない!ジークだけよ。


 イグラムさんが、身を乗り出して言う。


「そうだ! ジーク君にミーチェ君! また、不思議な魔法陣や文字を見つけたら、教えて欲しい。私は、普段王都の宮廷魔術師の研究室にいるから、いつでも訪ねて来てくれ!」


 うぅ、イグラムさんの勢いに押される。 


「「はい…」」

「なかなか、お目当ての迷い人の痕跡は、見つけられないんだよ!それを1つでも、見つけることが出来た君達は!何かしら縁があるのだと思う!それとも、君達のスキルに何かあるのかも知れないね~。是非とも、見せて欲しいぐらいだよ!」


 うわぁ~、イグラムさん凄い熱量です! えっ、ステータスを見せろと?


「見せるような、特別なスキルは持っていません。イグラム団長、何か見つけたら、又ギルドに報告します」


 ジークは、素っ気なく言う。いえ、ハッキリと断る。


「ジーク君! ギルド経由は時間がかかるから、私に直接連絡してくれると嬉しいよ。遠方なら、手紙でもいいからね!」


 イグラムさんは、ニコニコして言った。


 ライルさんは、眉間のしわを伸ばすような仕草をしながら、


「ジークとミーチェ、今回の件はこれで終了となる。20階のあの部屋だけは封鎖になるけど、後は普通に戻るからね。遠慮なく、20階のワープを使っていいよ」


 ジークに言われた嫌味を覚えていたのね。


「あぁ、分かった」



 話が終わり、調査団はその日のうちに王都へと帰って行った。解放された私達は、お昼を食べにカフェに行く。


 ふぅ~、どっと疲れましたよ。やっと、終わったかな。


「ミーチェ、どうする? この後、ダンジョンで肉狩りする? それとも馬を見に行くかい?」

「うわぁ~。ジーク、両方興味あるんだけど」


 はぁ~、ジーク本当にイイ男だ……


「あはは。じゃぁ、僕が決めるよ」


 その後、馬を見に行き、ジークと乗馬を楽しんだ。明日は、半日ダンジョンで肉狩りをすることに決まりました。







      ※       ※       ※






『ミャ~オ!』


「なんだ?」


『ニャー! ニャ~ン』


「好きにすると良い。時間は、十分にあるのだからな。フフ」




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