第47話 魔力の痕跡
うわ~~、マズイ。私の魔力の痕跡が残っていたってことね。
「ライルさん、ミーチェの魔力? 痕跡って?」
「ミーチェ君の魔力って、珍しく温かいオレンジ色をしているんだよ。その色が、封印の魔法陣の所に少し残っていたんだ。どうしてだろう?」
ライルさんは、探るように見て来る……
「それって、ミーチェが魔力を取られたからじゃないんですか? ミーチェは、魔物に魔力を取られて、400あったMPが、10になったんですから。呪いで、子どもにまでなったんですよ」
ジーク、賢すぎる。私では、思い浮かばない……
「そうか! そう言えば、魔力も取られたと言っていたね。ミーチェ君を襲った魔人は、封印を解く為に、ミーチェ君の魔力を奪ったのかもしれないね。反撃されないように、子どもに? 団長に報告しないと!」
ライルさんが、手帳に何か書き始める。
ジークは知らないふりをして聞いた。
「ライルさん、その封印って何ですか? 何が封印されていたんですか?」
ライルさんが手を止めて答える。
「ああ、それは言えないんだ。極秘事項になるんだよ」
「そうなんですか。じゃぁ、魔法陣は? 魔力がいくらあれば発動するんですか? 僕も魔力200はあるんですけどね」
あぁ、そこは聞いておきたい所よね。私の隠匿したステータスと合わせないといけないしね。
「MP300で起動したよ。あぁ、一人残されたって言ってたね。ミーチェ君が、心配だっただろう」
隠匿のステータスを手直しして良かった~。MP200のままで見せろって言われたら、大変だったよ。ジーク、凄いわぁ。
「はい。あんな魔法陣を作ったのは、誰かと恨みましたよ……」
本当に酷いよね~、あの魔法陣。
「あの魔法陣を作ったのは、壁に文字を残した人だと思うよ」
先輩の迷い人なのか!
「部屋に魔法陣があると、分かるようにすればいいのに……」
ジークとライルさんの攻防戦は、ジークが軍配を上げる。ジーク、凄いです。
副団長ライルさんの話によると、団長のイグラムさんは、宮廷魔術師の偉い人で、ライルさんは、その補佐をしているそうです。
今回の事案は、団長イグラムさんが、研究している事柄に関係しているかも知れないと、調査団長のポストを奪い取って来たそうです。そして、今はダンジョンに入り浸って、出てこないそうです。
ライルさんとの食事会は、2時間程で終わった。後半は、ライルさんの愚痴を聞いていただけだけど……
居酒屋を出て、『森の箱庭』へ向かう途中に、ノアールが居た。
『ニャ~!』
「あっ、ノアール! こんな所で誰かに見つかったら……猫にしか見えないかな? ジーク、どう思う? 大丈夫かな?」
「そうだね。ミーチェ、冒険者が多い場所じゃなければ、大丈夫だと思うよ。クスクス」
宿には一緒に入れないだろうから、ノアールを抱っこしてマントに隠す。
「ここで、部屋に入るまで、おとなしくしてね。お願いよ、ノアール」
『ニャ~ン』
ふふ。ノアール、凄く可愛い。蕁麻疹の出ない猫なんて、あなただけよ!
宿の部屋で、ノアールにバッグにある食事を出した。ジークまでつまんでいる。
「ジーク、まだ食べるの?」
「さっきのは、食べた気がしないよ」
「確かにね。ジークとライルさんの攻防は、凄かったよ! ジークの圧勝だったけどね」
ライルさんとの話が、無事に終わったのが嬉しくて、自然と笑顔になる。
「フフ。ミーチェに褒めてもらうのは、嬉しいよ。おいで、ミーチェ」
ええっ~! おいでって……うっ、ノアールの前でイチャつくの?
「えっ! ジーク、ノアールが見ているから、恥ずかしいよ……」
ノアールは、私達の会話を理解しているんだよ……
「ねぇ、ミーチェ。ご褒美くれないの?」
ジークが、悲しそうに頭を傾げる。うぅぅ……そんな顔しないで……
結局、ジークの膝の上に乗せられた。ノアールは食べ終わると、いつも通り、窓で振り返って一鳴きする。
『ニャ~ン!』
「ノアール、おやすみ」
ジークが、ギュッと抱きしめて、優しく囁く。
「僕達も寝るから、ミーチェ、お風呂に入っておいで?」
ドキッ! うぐぅ……
翌朝は、ジークと今後の話をした。
「ねぇ、ジーク。海に行くとしたら、ここからどうやって行くの?」
「そうだね~。大きな港街は、2つあるんだよ。どっちに行こうか?」
ここ東の王国には、北の帝国と貿易をしている東の港街と、南の獣王国と貿易をしている南の港街があるそうです。
東の港街に行くには、1度王都に戻って、そこから定期馬車が出ているそうです。
「今、冬だから北の帝国の港が凍っていて、貿易船は動いてないはず。だから、東の港街は静かだと思う」
南の港街へは、ここ<森のブラージ>から、商業ギルドの馬車が出ているそうです。
「南の港街は、獣王国と貿易していて、年中賑やかだよ。少し離れているけど、海岸沿いにダンジョンもあるらしい。ミーチェの好きな宝箱も出るそうだよ。フフ」
「何ですって! ジーク、決まりね。近くて、賑わってる方が楽しいよね。それに、ダンジョンには宝箱がないとね!」
ここでも、かなり稼がせてもらったけど、宝箱を開けるドキドキ感がないのよね~。ダンジョンに入るなら、宝箱よね!
「あはは。じゃぁ、次の旅は、南の港街に決まりだね」
ジークが、記憶を失くした場所を通るのはイヤなのよね……もう近寄りたくない。
「うん。ジーク、次は南の港街ね! お魚食べに行こう~」
こっちに来てから、お魚食べたのって、ここに来る前の街で、1回だけなのよね~。お醤油があるから、きっとお刺身とかお寿司があるはず!
お昼を食べに出かけた。ラベンダー色のワンピースを着て、ジークと腕を組んで歩いていたら声をかけられた。
「まあ! ミーチェちゃん! 大人になってしまったのね……お姉さん、悲しいわぁ~」
『宵の明星』のエリスさんだ。もう声で分かってしまいます。
ジークが、じっと様子を窺っている。
「エリスさん、こんにちは。元に戻ったんですよ」
私は、にっこりと答えた。
「そう……ミーチェちゃん……悲しいわ……」
エリスさん、悲しいって……
「おい、エリス。呪いが解けたんだ。良かっただろう!」
アイーダさんが、私の方をチラッと見た。
「アイーダ、分かってるわよ! 小さかったミーチェちゃんが、余りにも可愛かったから~。ごめんね、ミーチェちゃん」
いえいえと愛想笑いをしておく。他のメンバーは、呆れた顔をしていますよ。
「ミーチェ、行くよ」
ジークに言われて、『宵の明星』と別れた。別れ際に、アイーダさんが近寄って来て私に言う。
「おい! 相棒にちょっかい掛けて、悪かったな……」
えっ! アイーダさんが、謝ってきた。顔はそっぽを向いているけど。
「あっ、はい……」
こういう時は、何て答えればいいの~? スキルが無いわ……
ジークが、少し険しい顔をしている。
「ねぇ、ミーチェ。ミーチェの感知魔法って、ダンジョンじゃなくても使えるよね?」
「えっ! ダンジョン以外で使うって、考えたこともなかった。あれ? 魔物じゃなくて、人に使うってこと?」
「そう。ミーチェ、使ってみて。変なのが近寄ってきたら分かるようにね。ずっと感知魔法をかけておくといいよ」
ジーク、変なのって基準は何かな?
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