第46話 プリンを作ろう

 翌日、プリンを作る為にダンジョンに入った。いつもの5階で野営の準備をする。MPが戻ったので石壁も作るが、ノアールが入って来る隙間は開けておく。


 私は、魔法を駆使してプリンを作る! 昨日カフェの後、雑貨屋で買ったガラス容器を10個並べて、カラメルソースを入れる。そして、卵・牛乳・砂糖で作ったプリンの素となるスープを流し込む。魔法で一気に作ろう~。早いしね。


 ジークは、テーブルセットを出して座り、私の作業を興味津々に見ている。


「ジーク、出来たら味見してみる?」

「いいのかい? それ、食後のデザートなんでしょ?」

「ふふ。ジークに味見して欲しいの。好き嫌いもあるからね」


 嫌いだと言う人には、まだ会ったことないけどね。


 出来上がったプリンを、魔法で冷たくして、ちゃんと平皿にひっくり返しスプーンを付けて出す。初めて食べるプリンは、正統派スタイルで食べてもらいたいんです。


「はい、ジーク。どうぞ、召し上がれ~」


 ジークの反応が見たい!


「わぁ~! 美味しそうだね。頂きます」


 私は特等席に座る。ジークの目の前で、ジークの顔を観察します。


「ん――! 何これ、ミーチェ! 凄く美味しいんだけど。これ、プリンだっけ? 美味しいよ! もぐもぐ……」


 ジークの瞳が、キラッキラッです。イケメンが可愛いくなるなんて……眼福です。


「ふふ。ジークも好きな味なのね、良かった~。ありがとう」


 私も1つ食べる。


「あぁ~、これこれ! プリンが食べたかったのよ! バニラエッセンスがあれば、最高なんだけどね」

「バニラ? それがあれば、もっと美味しくなるの?」

「うん。香りを付ける調味料なんだけどね。無かったから、カラメルに蜂蜜を少し足してコクを出したの」


 お昼用に、ジークの好きな、たまごサンドとオーク肉のハムサンドを沢山作った。半分はバッグにストックする。


『ニャ~ン!』

「あぁ、ノアールが来たってことは、そろそろお昼なのね」

「あはは。ミーチェ、ノアールがお腹空いたって言ってるよ」 


 急いで、準備して2人と1匹でお昼を食べた。


『ニャ、ニャ~ン!』


 ノアールは、尻尾をフリフリして帰って行く。ノアールはどこに帰って行くんだろう。


「ミーチェ、折角ダンジョンにいるから、狩りに行こうか?」

「はい。ジーク了解です」


 20階で、王国の調査団に会いたくなかったので、ワープで25階に飛んだ。そして、24階へ戻って、ゆっくり安全に狩りをする。


 ジークが強くなったのが良く分かる。私が開幕に魔法を撃たなくても、ガルムやロックリザードなら、二振りで倒せそう。凄いよ。


 夕方、5階に戻って野営をする。食事のデザートにプリンを出した。ジークもノアールも、目がキラキラです。ノアールは、ゴロゴロ鳴きながら、そして尻尾で椅子を叩きながら食べてます。とても器用……


「ノアール。先に言っておくけど、プリンのおかわりはないからね」


 ピンッと立っていたノアールの耳が、横に垂れました。完全に私が言ってることを理解しているのね。


『ニャ~ン!』

「ノアールまたね。おやすみ~」


 ノアールは、尻尾をフリフリしながら、帰って行きました。


 ソファーでくつろぎながら、ジークと他愛もないおしゃべりをする。こういうのが、良いなぁと思う。


「ねね、ジークは凄く強くなったんじゃない? ガルムなんて二振りで倒せそう」

「フフ、そうかな。ミーチェもステータスが、上がってると思うよ」

「上がってるかな~、見てみよう」


 いくら格上の魔物でも、3時間で上がるのかな? と思いながら、ステータスを開いてみた。


 名前   ミーチェ

 年齢   16歳

 HP/MP 118/950

 攻撃力   73

 防御力   68

 速度   100

 知力   166

 幸運    96

 スキル

 ・鑑定S ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法S

 ・火魔法A ・土魔法A ・風魔法A ・水魔法A

 ・光魔法S ・闇魔法A ・無属性魔法S 

 ・雷魔法A ・氷魔法A ・聖属性魔法S 

 ・短剣D ・回復魔法A ・時空間魔法S


「結構、上がってるよ。これって、今日だけの効果じゃないよね?」 

「きっと、年齢が回復しないと上がらなかったんだよ。ほら、前に鑑定が、『魔素が足りないから、獲得出来ない。』とか、言ってたしね」

「なるほど~。じゃぁ、これからは格上の魔物倒せば、ステータス値上がって行くのね」

「ミーチェ、明日も24階で、頑張ってみる?」

「うん」


 私はもう充分なんだけど、一緒に狩りをすれば、ジークのステータスも上がるしね。



 翌日も、24階で狩りをした。昨日より、楽に狩が出来ている気がするのは、昨晩、ステータスを見たからかな。


「ミーチェ、戻ろうか」

「はい、ジーク」


 帰還石を使って戻り、ダンジョンから出た。ギルドで買取りカウンターに行くと、デッドさんが、


「おお! ジーク、帰還石ないか? あったら、売ってくれ!」


 テッドさんからの注文なんて珍しい。


「最近、帰還石は良く使うんだがな。調査団は20階だから、使わないだろうに……」


 確かに、最近は帰還石を良く使っている。


「いや、サイモンがうるさいんだ」


 サイモンさんかぁ。


「アイツは、放って置け。うるさいのは、いつものことだ」


 ドロップ品と帰還石を2つ出して、白金貨2枚と金貨119枚でした。


 帰還石を出すなんて、ジークは優しいね。買いたい相手はサイモンさんなのにね。ふふ。



 ギルドを出て『森の箱庭』へ向かう途中で、声をかけられた。


「あ! ジーク君とミーチェ君」


 振り向くと、王都調査団の副団長のライルさんだ。


「こんにちは、ライルさん」


 ジークは挨拶しないだろうから、私がしたよ。


「丁度良かった。話があるんだけど。領主の所に呼び出されるのは、嫌だろう?」

「ああ」


 ジーク、即答! 素直すぎ。


「アハハ! じゃあさ、どこかで食事でもどうかな? 食べながらの方が気が楽で良いだろう?」


 いや~、貴方と食事する時点で、気楽にはなれませんが……


「分かった。今からか?」

「そうだね、いいお店知ってるかい?」


 偉い方のお口に合うお店は知りません。あぁ、私すっごく嫌がってます。絶対、碌な話じゃないし……


「知らないな。いつも、屋台か宿の食堂だからね」


 ジーク、いつも以上に愛想がないですよ……


「そんなに、構えないでいいよ。まだ、誰にも言ってない話なんだ。先に君たちに聞いて欲しくてね」


 それって、やっぱり嫌な話じゃないの? ライルさん、それ脅してるのと変わらないですよ、構えるなってムリでしょ……あぁ、心の声が、止まらない……


「僕が知ってる店は、『森の箱庭』の食堂か、その手前にある居酒屋ぐらいです」

「エールが飲みたいから、居酒屋にしよう。いいかな?」


 副団長さんが言ったら断れませんよ。その居酒屋、クライブさんに声かけられて、テンション下がった店ね……鬼門かもしれない……


「ああ」


 ジークを見ると、氷のジークが降臨している……ジーク、この話が終わったら海に行こうね……


 居酒屋に入って、個室に通された。きっと、領主さんからの通達があったんでしょう。黒マントを見たら、最高級の待遇をするようにと……ここの領主さんは、出来る人だからね。


「座って、料理は適当に頼むからね。食べたいのがあれば頼んでいいよ。エール3つでいいかな?」

「いや、1つ果汁水にしてくれ」


 ジーク! ありがとう。ジークに、にっこり微笑んでしまう。


 ライルさんはお店の人に、おススメ料理を5~6皿出すように言った。


「君たち、今日は何階で狩りをしてたんだい?」

「24階です」


 ジークは、素っ気なく答える。


「ええ! 2人でかい?」

「20階が、一部立ち入り禁止で、警備がウロウロしているので。25階から入ったんです」


 ジーク、ちょっと嫌味が入ってるよ。


「なるほど~。彼女の魔法も強くないと、そこでは、狩りが出来ないよね」


 食事が来たけど、食べられません。ライルさんとジークの攻防が……ドキドキします。


「僕たちに、話って何ですか?」


 ジークが、ストレートに聞く。


「う~ん。調査して疑問に思ったことがあってね」


 すっごく嫌な予感がします。私、何か変なことした?封印は解いたけど……


「僕たちに?」

「これは、極秘事項なんだけどね」

「言わなくていいですよ」


 ジーク、素晴らしいツッコミです!


「アハハ。そう言わずに、聞いてよ。魔法陣で飛んだ先に、壁に文字が書いてあったのは、聞いたよね?」

「それは、クライブさんから聞きました」


 はい。それは聞きました。私も頷く。


「そこから、洞窟を進むと、結界の残骸。何かが封印されていた痕跡があったんだ」


 ライルさんは、封印の間を調査しているのね。


「痕跡?」

「そう。その封印の痕跡にね、ミーチェ君の魔力の跡があったんだ」


 うわ~~。この人、魔力の色が見えるんだった。私の魔力が残っていたのかな? オレンジ色? が見えたのかな? うわぁ~、マズイ。




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