第3章 港街オース
第50話 新しい仲間
<森のブラージ>から南の<港街オース>への旅が始まって5日目、今日もアイアンゴーレムが現れた。
ジークは、馬から飛び降りてアイアンゴーレムに飛び込んで行く。私は馬のシーダンに乗ったまま、みんなに強化魔法をかける。ジークとノアールで、瞬殺でした。私の出番はありません。
黒猫ノアールが一緒に来てくれたのが嬉しい。<森のダンジョン>で出会った魔物の黒猫ちゃん。猫アレルギーの私が、唯一触ることが出来る猫なんです! 可愛いよ~。
「ノアールは強いね~。ジークの言う通り、強い魔物だったんだね」
『ニャ、ニャ~ン(僕、あんまり戦ったことないんだよ~)』
ノアールは、初めから強いのね。魔物だからかな? それともノアールの主が強いからかな?
「ミーチェ、ノアールはランクA以上だと思うよ」
「ええ! 可愛いのに凄く強いのね、ノアール」
『ニャ~!(僕、ほめられてる~!)』
ふふふ。そうなんですよ! ノアールの言葉が解るようになったんです。もちろん、チートな鑑定さんのお陰です! 可愛いノアールを抱きしめながら、鑑定さんにお願いしました。
「鑑定さん! ノアールの言葉が、私とジークに解るようにする魔法をかけたいの!」
【ノアールは、ランクが上がれば自ずと話せるようになる。直ぐに解るようになりたければ、ミーチェの魔力をノアールに流し続けると良い】
「ありがとう。鑑定さん、よろしくお願いします!」
何だか、お告げのようだと思いながら、ノアールに魔力を送り込む。こうして、ノアールの言葉が解るようになったんです。ふふ。
夜は、木の側で魔除け石を置き、焚き木をして、アイテムバックからテントを出すだけの簡単な野営です。
<森のブラージ>で買った馬は、綺麗な漆黒の雄馬でシーダンと名付けました。
「ミーチェ、シーダンを休ませるから結界魔法を張ってくれるかい?」
「はい、ジーク。シーダン、今日も乗せてくれてありがとね。結界から出たら危ないから、テントの近くにいてね」
魔物が侵入しないように更に結界を張り、馬のシーダンを野営周りで自由にさせる。
そして、ジークが人参とか果物を食べさせて、ブラッシングしている間に、私は魔法を駆使して料理を作る。今夜はコカ肉の唐揚げとオーク肉の具沢山トマトシチューとパンです。
「ノアール、熱いから気を付けてね」
『ニャ~オ(うん、ミーチェいただきます)』
「ミーチェの作る料理は美味しいね~。唐揚げは最高だよ!」
毎回必ず、ジークは美味しいと褒めてくれる。キラキラ目を輝かせて食べる姿を見ると、頑張って料理を作ろうと思うのよ!
もちろん! 元主婦だった私は、手を抜けるように一度に沢山作って、半分は時間停止が付いているアイテムバックに入れるんですけどね。これ、私のショルダーバッグに魔法を掛けて作ったの。すっごく便利で、手放せない!
ノアールは、毎晩夕食を食べた後に何処かへ行き、翌日のお昼には戻って来る。きっと、主の魔人さんの所に帰っているんだと思う。なので、夕食後は拡張したテントの中(私の部屋)で、ジークと2人ゆっくり過ごしています。
ジークは、サラサラした銀髪でアメジストの瞳、背が高くて、綺麗なイケメン22歳。今は私と2人パーティー(恋人パーティー)を組んでいます。私には、勿体ない程のイイ男。あだ名は、『氷のジーク』『幸運のジーク』と呼ばれている。一人にだけどね……
「ねぇ、ジーク。片手剣の使い心地はどうかな?」
「うん、ミーチェ。アイアンゴーレムを普通に切れるなんて凄いよ!僕の剣より切れ味が良いぐらい。ミーチェの魔法は凄いね~」
「ふふ、良かった~」
普通の物理攻撃が効かないゴーレムやアイアンゴーレムを、倒せるように作ったジークの為の剣なんです。試作品を含めて、作るのに時間が掛かったから喜んで貰えて嬉しい。ふふ。
ジークは、面倒見が良くて凄く優しいけど、なぜだか周りには淡々としていて愛想がない……素っ気ない言動で『氷のジーク』のあだながピッタリだったりする。
「ねぇ、ミーチェ。先にお風呂に入っておいで。僕は後から入るから」
「うん。じゃぁ、先に入るね」
「ミーチェ、お風呂で寝たらダメだよ。助けに入られないから。ねぇミーチェ、あのお風呂場の結界石は、取ってもいいんじゃないかな?」
「ジーク、私、もう子どもじゃないからお風呂では寝ないよ。それに結界石は、何かあった時の為の最後の砦になるから……あのままにしておきたいの」
突然、テントに誰か入って来たりするかもしれないしね。この前のジークみたいに……ねぇジーク、そろそろ膝から下ろして欲しいんだけど……
<森のブラージ>を出て10日目、ようやく街が見えて来た。南の獣王国と貿易をしている<港街オース>です。街に出入りする門は、北と西にあるそうです。
「ミーチェ、港街オースが見えて来たよ」
「わぁ~! ジーク、大きい街ね! お昼は屋台の食べ歩きにしましょ~!」
<森のブラージ>より大きい、どんな街なんだろう~。シーダンに乗りながら、伸びあがって街を見渡す。すると、ジークに優しく抱きしめられ、戻される。
「ミーチェ落ちついて、シーダンから落ちてしまうよ。了解ミーチェ、お昼は屋台の食べ歩きだね。クスクス」
「うぅ、ジーク大丈夫よ……」
シーダンは賢いから、私を落とさないように歩いてくれるのに……。
西門から街に入り、冒険者ギルドに向かう。ギルドはどこも似た作りになっていて、<迷宮都市>の小型版です。ギルドで異動届を出し、おススメの厩舎のある宿屋を紹介してもらう。浄化魔法を使えるから、今回は部屋風呂付宿屋より、厩舎のある宿屋を優先にした。
街の商業エリアにある厩舎付きの宿に向かい、早速シーダンを預けて街の散策に出かける。街中は、とても活気があり屋台や出店が沢山並んでいる。まるで、お祭りのようです。
「ジーク! イカのタレ焼きがあるよ! ジーク! これを食べたい! これは塩でも美味しいのよね~」
「クスクス。ミーチェ、屋台は逃げないから慌てなくて大丈夫だよ」
ジーク、並んだ屋台を見るとテンションが上がるの! 私の日本人の血が騒ぐのよ~。
「うぅ、ジークごめん。落ち着きます……」
「ミーチェは、いつも可愛いね~」
うっ、ジーク嬉しいけど、あっちの屋台の貝も食べたい……
2人で仲良く屋台の料理に舌鼓を打っていたら、誰かが大声を上げている。
「ジークハルト様! ジークハルト様ではないですか!?」
とても綺麗な貴族の令嬢さん? 腰から剣を下げて、騎士のような格好をしている。ポニーテールの金髪で琥色の瞳をした人。おっきな目を見開いて、ジークに向かって走って来る。その後ろから、初老の執事のような出で立ちの紳士もやって来た。
あぁ、あれはきっと厄介事を持って来たんだよ……
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・あとがき・
この時点で、ジークは、ランクを上げたくないランクC冒険者(実質はランクB。ミーチェから祝福を貰っているので、ステータスだけを見たらランクA)。
ミーチェは、どさくさに紛れて上がったランクDの冒険者(ステータスだけなら、ランクA)。ギルドへの貢献度は、ランクE程度。
★冒険者ギルドの基準のステータス値★
・ランクF、E ・ランクD、C ・ランクB ・ランクA
HP 45~60 60~360 500~ 700~
MP 10~100 20~330 500~ 700~
攻撃力 40~50 50~90 100~ 150~
防御力 40~50 50~90 100~ 150~
速度 30~60 60~90 100~ 150~
知力 10~60 20~90 100~ 150~
幸運 10~70
※ランクA・Bに昇級するには、①ランクステータスを2つ以上クリアー②ギルドへの貢献度が必要。
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