第43話 あざ
「ミーチェ、こんな所にあざが出来てる……」
ジークは、私の背中に触れる。左肩甲骨の下の辺りを……
「最近、ぶつけた覚えはないけど……あっ、」
そこは、ダンジョンに落ちてぶつけた辺りだ……
「どうしたの? ミーチェ」
「うん。そこって、ダンジョンに落ちた時、何かにぶつかった辺りだなと思って……」
そこに、コアがぶつかったのね。あざが出来た?
「そうなんだ。前は無かったのにね。ミーチェ……」
ジークは、そのあざのある所に優しくキスをする。そして、耳元で囁くように言う……
「これは、明日考えよう。ミーチェ、ベッドに行くよ……」
ジークは優しく抱きしめて、耳朶を甘噛みし始める。
うぐぅぅ、ジーク、今あざのことを真剣に考えていたのに……降参ですよ……
お姫様抱っこされて、ベッドに連れて行かれる。負けっぱなしなのはイヤだな……
ジークの首に腕を回して、耳元で、小さな声で囁き返す。
「………」
そして、耳朶を甘噛みした。お返しだよ~! ふふん!
ジークは、頬を染める……キラキラした、熱い眼差しで見つめて来る。しまった! これは煽ってしまった……
「おはよう。ミーチェ」
ジークが、にっこり微笑む。朝から、ジークの笑顔が眩しいです。
「ジーク、おはよう……」
ジークが、私の様子に気が付いたようで、
「ミーチェ、大丈夫?」
「うん……」
ウソです。大丈夫じゃないです、起き上がれそうにない……
「ミーチェ、ポーション飲む?」
ジークが、ポーションを差し出してくる……
「……」
又、ポーションを勧める……ジーク、それ効果あるの? 試してみるべき?
「ジーク、後で飲んでみる……」
「ミーチェ、朝食を食べに行くから、今飲んだらいいよ」
ジークに、ポーションを渡されて、イヤイヤ飲みました。だって、これ美味しくないんです。
「どう? ミーチェ、効いてる?」
「冗談かと思ってたけど、効果があるのね……」
ビックリよ! 身体のだるさが消えたし、起き上がれそう。
ジークが、良かったとニコニコしている。もう一本出そうとするから、もう十分ですとお断りした……
食堂で、朝食を食べて部屋に戻る。そして、結界石を置き、昨日見つけた、あざの話をした。
「私の国ではね、話の中だけど、ダンジョンの最深部にダンジョンコアがあると、思われているの。ジーク、この世界は?」
「ああ、あるらしいよ。僕は見たことないけど、ダンジョンを最深部まで制覇した冒険者は、みんなダンジョンコアを潰すんだ。そうすれば、魔物が溢れることもなくなり、ダンジョンの活動が止まって、消滅するらしい」
「そうなんだ……」
日本での物語やゲームと似たような感じね。
「ミーチェが、ダンジョンコアとぶつかったとして、背中に無かったあざが出来てる。ミーチェの鑑定は、始めから普通と違う……何か関係があるんだろうね……」
「そうね、ジーク。私も鑑定さんは、ちょっと普通と違うなぁって、思っていたの……」
「うん、そうだね。聞いたことを教えてくれる鑑定って、初めて聞いたよ。ミーチェの鑑定が、特別って考えた方がいいね」
ジークはいつも鋭い、的確なことを言うね。
「そうね……ねぇ、ジーク。ダンジョンコアを壊した冒険者に、何か特別な効果とかスキルが増えたとか、聞いたことある?」
「う~ん、聞いたことないね。隠してるかもしれないけどね」
なるほど、ステータスは見せないのが普通だから、もし獲得しても秘密にするわね。
「私は、ダンジョンコアを壊していないと思うの。壊していたら、こっちに来ていないと思う。あっちのダンジョンの底で、倒れていると思うのよ」
「なるほど。こっちでも、ダンジョンコアを壊して、誰かが消えたって話は聞いたことないね。ミーチェの言う通りだとして、今のミーチェは……」
「私の中にコアがいる? 融合しているか、共存しているのか……分からないけど」
「他にも、おかしなことがあるんだよ。ミーチェって、色々魔法を使えるようになったのに、ステータスのスキルに表示されていないよね? 感知魔法とか、強化魔法とかね」
「そう言われれば、スキル欄にないね。聞いてみようか、ステータスオープン」
名前 ミーチェ
年齢 15歳
HP/MP 108/450
攻撃力 67
防御力 63
速度 90
知力 155
幸運 96
スキル
・鑑定S ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法S
・火魔法A ・土魔法A ・風魔法A ・水魔法A
・光魔法S ・闇魔法A ・無属性魔法S
・雷魔法A ・氷魔法A ・聖属性魔法S
・短剣D ・回復魔法A ・時空間魔法S
スキルの部分に、触れるようにして聞いてみる。
「鑑定さん、教えて。何故、スキル欄に感知魔法や強化魔法が、表記されていないの? 使えるのに?」
【以前、ミーチェが増えたスキルを見て、『覚えきれない』と伝えて来たので、それ以後、覚えたスキルは表記されていない。表記されていないが、使用出来る】
「ええっ! そういえば、言ったかも……鑑定さん、ありがとう……」
私が言ったから、鑑定さんが配慮してくれたのね。ジークを見ると、納得した顔をしている。
「あぁ、なるほど。ミーチェ、よく分かったよ。ミーチェが望んだんだね。隠匿しなくて済んで、良かったことにしよう……」
ジーク……そうね、ポジティブに考えましょう。
ジークのステータスも見せてもらった。
名前 ジーク
年齢 22歳
HP/MP 625/228
攻撃力 129(+10)
防御力 134(+7)
速度 119(+5)
知力 66(+3)
幸運 72
スキル
・鑑定A ・身体強化A ・生活魔法
・片手剣A ・盾A ・両手剣B ・短剣B
・無属性魔法B
「ジーク、誕生日でもないのに、凄くステータスが上がってるね」
「あぁ、ホントだね。ランクBの魔物を沢山狩ったからだよ。同等から格上の魔物を倒すと、上がりやすくなるんだよ」
「なるほど~、16階から出て来る魔物は、ランクB以上だもんね」
ジークが強くなるのは、嬉しい。私は、足を引っ張らなければ、それでいいよ。
「ねぇ、ミーチェ。直接、鑑定がダンジョンコアなのか、聞いてみたら?」
「なるほど~。鑑定さんに、聞いてみる」
分からないことがあれば、鑑定さんに聞けばいいのね。答えてくれるから、何でも解決しそうね。
ステータスの名前の部分に触れて、単刀直入に聞いてみる。
「鑑定さん、私ってダンジョンコアと融合してる? 鑑定さんが、ダンジョンコアですか?」
【ミーチェとダンジョンコアは、共存している。ダンジョンコアは、ミーチェの中で寝ている。<鑑定>は、生まれたてのダンジョンコアの一部であったが、今は切り離された状態である。ミーチェの魔素・知力により、ランクアップした。ダンジョンコアではない】
「ジーク、生まれたてのダンジョンコアって……転移して来た時、私のステータスが0歳だったのは、コアのせいだったのね……」
難しいことを考えすぎて疲れた~、もうギブです。
「そうだったんだね。ミーチェの中に、生まれたてのダンジョンコアはいるけど、鑑定は別物になり、進化したのかな……」
「ダンジョンコアは、寝ているのね。まぁ、悪さしなければいいかな……私、ややこしいのはパス。ジークは、納得した?」
「はぁ~、ミーチェは可愛いね」
ジークが、ハグしてきた。
お返しに、甘えるように笑顔で言う。
「ねぇ~、ジーク。考えすぎて、疲れたよ~。甘い物でも食べに行こう。ね!」
「そうだね。ミーチェ、出かけよう」
ジークが、優しく微笑む。私は、ラベンダーのワンピースに着替えて、ジークと出かけた。
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