第42話 ようやく

 翌朝、ダンジョンに向かう。ここ数日で、17~20階辺りは、狩りつくしたので、21階に行って見ることにした。


「ミーチェ、感知魔法と強化魔法を切らさないようにね」 

「ジーク、了解」


 強化魔法をかけ、感知魔法もチェックする。近くには、まだ反応はない。


「じゃぁ、ゆっくり進むね」


 ジークに付いて行く。左前から、2匹のガルムの反応がする。


「ジーク、左前からガルム2匹来る。50m先、来るよ!」

「分かった、僕は右から」

「私は、左ね」


 出会い頭に雷撃魔法を放ち、左のガルムに氷魔法を撃つ。ジークは、私が雷撃魔法を放った後、突っ込んで右に一撃、左に一撃、最後は、右に止めを刺す。無駄のない動き。ジーク、また、強くなってるんじゃないの?


 仕留めた後、感知魔法で辺りを見てから、ドロップ品を収納する。安全第一です。そうやって、午前中はゆっくり狩りをした。


 <迷宮ダンジョン>の帰還石を、試していないことを思い出し、帰還石を使って1階に飛ぶ。おぉ、使えましたよ! そして、5階にワープしてお昼にする。


「ジーク、迷宮の帰還石使えたね~」

「そうだね。使えるとは思わなかったよ」


 いつもの小部屋でお昼の準備をしていたら、なんと黒猫ちゃんが来た!


『ニャ~~』


 入口で一鳴きして、尻尾を優雅に振って部屋に入ってくる。


「えっ? ノアールここ5階よ? あれ? ノアールに、魔除け石は効かないの?」


 5階なので魔除け石を置いたのだが、ノアールには効かないようです。


『ニャ!』

「当たり前だって言いたいのかな? もしかして、ノアールは強いの? ふふ」

「ミーチェのご飯が食べられるなら、5階にだって来るよ。そのうち、外にも出て来るんじゃないかな? クスクス」

「えっ! ノアール。私、外では料理を作らないからね。外は危ないから出てこない方がいいよ」

『ニャ~ン!』


 分かったって言ってるのかな? ノアールと、会話が出来ているようで嬉しい。ノアールが、行ってしまう前に撫でておこう。


「ねぇ、ミーチェ。そこらの冒険者より、ノアールの方が強いと思うけど……魔除け石を素通り出来るんだよ?」


 魔除け石の効果は、ランクCまでの魔物を寄せ付けないんです。


「そうなの? でも、ノアールは、可愛すぎて強そうには見えないよ」 

「そう。ミーチェと一緒だね。可愛すぎて年上には、絶対見えないよ」


 ぐっはっ、ジーク、降参です……でも、可愛いは嬉しいな。ふふ。


 昼からも21階で狩りをしたが、ステータスの年齢は上がらなかった。


「ねぇ、ミーチェ。ステータスの年齢が15歳になったら、1回ダンジョンを出るから教えてね」

「はい、了解です」


 ジークは、15歳にこだわるなぁ~。別に14歳でも触れていいのに……お酒を飲めば私からでも……う~ん、人格変わるからダメね。


 それから、2日後の昼過ぎに、ようやく15歳になりました。


「ジーク、ステータスの年齢が、やっと15歳になったよ」


 ジーク、お待たせしました。


「ミーチェ、頑張ったね。ダンジョン出て、ゆっくりしようか」


 ジークは、頭を傾げながら優しく微笑む。


「うん。ジーク、ありがとう」


 その仕草の笑顔は、心臓に悪いです……キュンってなるよ。


 緊張するエリアだったので、疲れた……。ジークも疲れただろうと思う。これで、装備を元に戻せるよ。ノアールが食べに来るから、食料も買い足したい。


 ギルドで換金です。21階でほぼ4日、籠って狩りをしていたので、凄い金額になった。今回は、白金貨と端数は金貨で貰いました。テッドさんが、呆れた顔で言う。


「お前ら……ハア~、2人で21階に籠るとか、ありえないぞ!」

「ミーチェの呪いを解くためだ。ありえるよ」


 テッドさん、頑張ったのよ~、バカップルを見るような目で、見ないで欲しいです。ギルドを後にして、宿屋に向かう。


「ミーチェ、少し早いけど夕食を食べて行こうか?」

「うん、ジークそうしよう」


 少し早めの夕食は、宿の近くの居酒屋に行きました。


 ジークはエールを頼んで、私は果実水。コカ肉の煮込みと、数品ジークが頼みました。


「ミーチェ、お疲れ。頑張ったね」


 ジークが、優しい笑顔で労ってくれる。


「ジーク! お疲れ様です。カンパーイ!」


 ホントに頑張ったよ。思ってたより早く年齢が戻って良かった~。


 座って、料理が出て来るのは楽でいい! 料理をするのは好きだけど、外食も良いな。初めての味に出会うのも楽しい。ふふ。


「おや、ジークとミーチェじゃないか。丁度よかった」


 クライブさんが、声をかけて来た。騎士団の仲間と飲みに来ていたようです。


「こんばんは、クライブさん」

「やぁ、ミーチェ。もう、元に戻ったのかな?」

「まだですよ。ミーチェが、完全に戻るには、まだ時間がかかります」


 ジークが答え、私は頷く。


「そうか、実は近く、王都から調査団が来ることになった」

「「!」」


 えっ! 王都から、ここまで来るんだ……報告書とかで終わらせると思ったけど……


「二人には、また話をしてもらうことになると思う。そのつもりで頼むよ」

「分かりました」


 ジークは、素っ気なく答える。私も横で頷く。うわぁ、面倒事にならなければいいけど……テンションが、一気に下がってしまった……



 ジークと宿屋『森の箱庭』に行く。部屋に行って、先にお風呂に浸かると、クライブさんの話を思い出してしまう……そうだ! 良いことを思いついた! また、旅をすればいいんだ! 他の街に行けばいいのよね。ふふ。


「ジーク、良いこと思いついたよ~」

「うん。ミーチェ、おいで」


 うぐっ。ジークに、おいでと言われるのが、くすぐったいけど嬉しいんだな~。そして、膝に乗せられる……


「ねぇ、ジーク。私もう10歳じゃないから、重いよ?」


 10歳になってから、ずっと膝に座ってるけど……


「まさか! ミーチェは、ぜんぜん重くないよ。可愛いよ」


 ジーク、前後の言葉がおかしいよ? それと、ここで脱がそうとしないで……せめて、灯りを消して欲しいんだけど……




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