第41話 ノアール

 今日も魔素狩りです。昨日、ステータスの年齢が上がらなかったので、ジークが、21階へ狩場を移そうか迷ってます。


「ねぇ、ジーク。この前、サイモンさんと行った時、魔物の数が多かったから、2人だと危なくないかな?騎士団が、間引いたかもしれないけど……」

「そうだね。ミーチェの言う通り、焦らず20階までの狩りにしておこうか」


 午前中は、20階で狩りをする。魔法陣の部屋は、立ち入り禁止になっている。まだ、調査をしているようで、騎士団が警備をしていた。


 その辺りを避けるように狩りをし、21階へ降りる階段で、お昼休憩をする。バッグから料理を取り出すと、鳴き声が聞こえた。


『ニャ~ン!』


 ジークと顔を見合わせる。2人で、クスクスと笑ってしまう。


「ミーチェの料理は、魔物の心も捕まえてしまうんだね。クスクス」


 ジークは、もう警戒していない。2人と1匹で、お昼を食べる。黒猫ちゃんは、ゴロゴロ鳴きながら食べている。器用ね~。


「黒猫ちゃん。何度も食べに来てくれるんなら、名前付けてもいいかな?」


 黒猫ちゃんを抱き上げる。


「うわぁ~、黒猫ちゃんの瞳って、魔人さんと同じ赤なのね。宝石みたい、綺麗ね~」

『ニャ~! ゴロゴロ……』

「ん~、そうね……綺麗な漆黒の毛並みだから、ノアール。どうかな?」

『ニャー! ゴロゴロ……』

「ノアール。気に入った?」

『ニャ~ン!』


 ノアールは、また何処かへと消えて行った。ジークが近寄って来て、私の黒髪にキスをする。


「ミーチェ……僕もかまって欲しいな」


 えっ! ジーク。まさか、黒猫ちゃんにヤキモチを焼いたの? ぐっ、ジークも可愛いよ……



 昼からも、2時間ほど狩りをして、ドロップ品を換金しに行くことにした。ダンジョンから出ると、入口に護衛騎士のクライブさんがいた。


「やあ、ジークとミーチェ。あれ? ミーチェ、少し育ってる?」


 はい、順調に戻ってますよ。


「ああ。ミーチェの呪いが、少し解けて来た。まだ、時間が、かかりそうだけどね」

「可愛いから、少しあのままでも良かったのに」


 クライブさん、他人事だと思ってそんなことを……


「ふふ。ありがとうございます。でも、魔力が無いのは、困りますから……」


 前は、魔法なんてない世界だったけど、今では、もう無いと困るんです。紫外線防止バリアーと浄化魔法は、無いと困るんですよ……


「確かに、魔法使いで魔力がないのは困るね」

「クライブさん、調査は終わったんですか?」


 ジークは、話を変える。これ以上呪いの話になると、私がボロを出しそうです。


「終わってないよ。あの調査の話は、あれ以上は教えられないんだよ。すまないね」

「いえ、壁に文字が書かれていたって聞いた時点で、そうなるだろうと、思ってましたから」


 クライブさんと別れて、ギルドに向かった。後から聞いた話では、クライブさんは、領主の嫡男だそうです。どうりで、テキパキと仕切るのが上手いのね。クライブさんは、<森のブラージ>のNO2なのね。偉そうじゃないのがいいね。


 専用買取りカウンターに向かうと、テッドさんがいた。いつも、テッドさんがいてるよね。


「おう! ジークに嬢ちゃん、お! 言ってた通り、また少しデカくなったようだな~。良かったな!」


 テッドさんは、笑顔で言ってくれる。


「はい。ありがとうございます」 


 にっこり微笑む。


「沢山あるんだ、換金してくれ」


 ジークは、相変わらず、素っ気なく言う。


「おう! 出してみな! うわぁ~、あれからずっと籠っていたのか? それにしても、多いな。まあ、詳しくは聞かねえが、サイモンの言う通りだな!」


 サイモンさん…個人情報を話したらダメでしょう……


 今回は、ほぼ3日分の魔石とアイテムなので、かなり多いです。金貨310枚にもなったよ。凄いね~、しばらく遊んで暮らせる金額です。


 ギルドから出ようとすると、酒場からサイモンさんの声が聞こえた。


「おーい! ジーク、偶には一緒に飲もうぜ! ミーチェもな! おお? ミーチェ、少し成長したか?」


 サイモンさんは、いつもニコニコしていて元気です。


「はい、少し戻ったみたいです」


 にっこり答える。


「そうか! 良かったな! だが、あのままでも、可愛くて良かったぞ?」


 サイモンさん、ロリコンですか? 疑惑を招く発言ですよ……


 ジークは嫌そうな顔をしながら、酒場に付き合った。護衛の時の話が聞きたかったようです。


 ジークは、エールを頼む。私は、蜂蜜入りのジュースを頼んで、2人の会話を聞いた。


「サイモンは、どこまで調査団について行ったんだ?」

「ああ。俺は、魔法陣ではじかれたが、メンバーの魔法使いが、調査団と一緒に飛んだ」


 えっ! やっぱり魔法使いは飛ばされるんだ……ジークと顔を見合わせる。


「一緒に飛んだのか……」

「ああ、ジーク。だけどな、そこで壁に何か書いてあったらしく、すぐに返されて来た。極秘扱いにするようだ。その後、護衛の任務も解かれたよ」

「2組ともか?」

「ああ、そうだ。依頼金は、はずんでくれたよ。口止め料だな」


 ええっ、私たちに言ってもいいのかな? サイモンさんは、口が軽い……


「あれは、王都に報告するだろう。調査に来るかは、わからんがな。来たら、お前ら呼び出されるぞ」

「そうだろうな……」


 うわぁ、また呼び出されるの? 逃げたい……でも、逃げたらマズイよね。


 サイモンさんとの飲み会も、早々に切り上げて、宿屋へ向かいます。最近利用しているのは、『森の箱庭』と言う名前の宿屋です。食堂で軽く夕食を取り、部屋に行く。


 お風呂に入った後、ジークに呼ばれます。膝の上に……


「ミーチェ、ステータス見せて」


 名前   ミーチェ

 年齢   14歳

 HP/MP  108/300 


 「ジーク! 上がってる。」


 これで、浄化魔法が使える! ジークは、後ろから抱き締めながら、耳元で囁く、


「あぁ、ミーチェ。僕も嬉しいよ……」


 そう言って、ジークは、首にキスをする。


「ひゃぁ~、ジ、ジーク……」

「ん? ミーチェ、なぁに?」


 14歳にもなると、普通に感じるんですが……言えない……


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