第31話 再会
ジークが、立っていた……
「ミーチェ。これはどうなっているの? 是非、教えて欲しいんだけど……」
「ジーク……なぜ、テントの中に入ってるの?」
「何度も呼んだけど、返事がなくて……心配になって覗いたら……」
ん~、テントのことも言わないとって、思っていたけど……
「覗いたんだ~。ジークのエッチ!」
えっ! いや、あの……とジークがあたふたしてる間に考える……よし、一緒に寝てたことは言わないでおこう。
少しずつ、空間魔法をかけてテントを広げたことだけを話した。
「そして、念願だったお風呂が、置けるようになったのよ~」
ニコニコして言ったら、ジークは驚いたような、呆れたような顔をする。そう……、いつものジークの顔だわ。
翌日、20階のワープクリスタルを目指し、他のパーティーを避けながら進んだ。16階からは、魔物も強くなっているので時間がかかる。Bランクパーティーの推奨エリアになる。
「ふぅ~、そろそろお昼にしようか。階段でお昼にしよう」
「うん。お腹すいたね~」
18階に向かう階段に行くと、Bランクパーティー『宵の明星』が休憩を取っていた。
えっ、ここで休憩するの?ジーク、気まずいですよ……
「端、邪魔する」
ジークが右手を上げて言うと、『宵の明星』のリーダーも右手を上げて、
「あぁ。ん? 定期馬車の乗客だったパーティーか?」
「ああ、そうだ」
私は、ペコリと頭を下げた。アイーダさんは、そっぽを向いている。そりゃあ~、お互い顔も見たくないよね~。エリスさんは、ニコニコと愛想がいいです。
「ほお~。2人でここまで来るのか、凄いな」
盾を持った人が、褒めてくれる。もう1人のメンバーも頷いてる。軽く頭を下げ、私達は、階段の隅っこで簡単にお昼にする。
『宵の明星』のリーダーが、
「あまり、無茶はするなよ」
そう言って、18階へと降りて行った。その言葉に、ジークは、右手を上げる。
「ジーク、『宵の明星』さんと、ここで会うとは思わなかったね」
「あぁ、そうだね」
20階を目指して進んでいるんですが、上質肉の誘惑には勝てない……寄り道しながら進んでます。感知魔法さん、ありがとう。
今日は、19階の行き止まりの小部屋で野営です。
ジークは、私のテントに来ないで、自分のテントに行った。言えば良かったかな……一緒に寝てたって。
翌日は、午前中19階で狩りをして、お昼頃20階のワープを通して出ることにした。
「ねぇ、ジーク。上質肉とコカ肉売らなくてもいいかな?」
「うん。食料にするんでしょ? かまわないよ。ミーチェのドロップが凄いから、好きにしていいよ」
「ふふ、ありがとう。じゃぁ、他の売るアイテムを渡すね。あ! そうだ、帰還石は、どうする?」
「そうだね、2個ずつ持って、他のは売ろうか」
「ねぇ、ジーク。迷宮都市の帰還石って、ここでも使えるのかな? 試してみたいんだけど~」
「えっ、迷宮都市の帰還石を持ってるの?」
ジークも持ってるよと言い、次にダンジョン入る時に試そうと決めた。
ダンジョンを出て、ギルドに向かう。入って左側奥の専用カウンターで、ジークがVIPカードとギルドカードを出す。
「ん、初めて見る顔だな。どれぐらいある?」
スキンヘッドの筋肉ムキムキのおじさん…。迫力のあるギルド職員さんだ。
「魔石が95個分だ」
ジークは、アイテムも全部出した。
「何! すげえな……査定するから少し待ってくれ」
壁に、VIPカードの特典が、書いてあった。一定の金額以上換金するとVIPカードにポイントが付く。そして、カードを見せると、どこの宿屋でも割引が受けられると書いてある。ほお~! それは嬉しいです。
「ジーク、これ見て! 嬉しい特典だよ!」
「へ~、ほんとだね。ミーチェは、泊まりたい宿あるの? クスクス」
しばらく待っていると呼ばれた。金貨187枚と銀貨6枚でした。
「はい、これがミーチェの取り分ね」
金貨93枚と銀貨8枚貰う。3日で、結構稼いだね~、嬉しいです。
「ジーク、ありがとう。そういえば、ジークはお財布を2つ持ってること、知ってる? 前から持ってる財布と黒い小袋の財布」
「えっ? 僕2つも財布を持ってるの?」
あぁ、やっぱり気付いてなかったのね……
「うん。ジークの誕生日に私がプレゼントしたの。後で確認した方がいいよ。人前では、見せないって言ってたからね」
きっと、いっぱい入ってるよ。
ギルドの酒場で、軽く食べながら今後の予定を話した。取りあえず、2日間お休みにする。
「ねぇ、ミーチェ。だいぶ稼いだし、宿屋を変えようか? 泊まりたい宿屋が、あるようだし」
「今のままでいいよ。勿体ないしね」
お風呂付じゃなければ、どこでも同じなので、今のままでいい。安いしね。今は、ナイフに付加魔法かける実験? 魔法が出来ればいいの。
翌日は、杖を見に行くことにした。もちろん、ジークも付いてくる。杖を探して武器屋を数件廻る。それぞれの属性に特化した杖はあるが、全属性は見つからない。ジーク曰く、
「全属性強化できる杖って、売ってないと思うよ。あっても、王都でオークションかな。店売りだと、付いていて2属性だと思う」
「そっか~、じゃぁ雷を強化できるのがいいかな。氷でもいい」
「ミーチェ、たぶんお店で売ってるのは、火風土水だけだと思う」
「えっ、そっか……教えてくれてありがとう」
ジークに、あれこれ教えて貰いながら杖を見ていたら、後ろから私を呼ぶ声がした。
「お! ミーチェじゃないか!」
振り返ると、サイモンさんがいた。
「えっ、サイモンさん? こんにちは。なぜ、<森のブラージ>にいるんですか?」
サイモンさんは、<迷宮都市>にいるはずでは?
「ミーチェ、なんでサイモンのことを知ってるの?」
ジークが私に聞きながら、サイモンさんの前に立ちはだかる
そうか、私とサイモンさんが会ったのは、記憶の無い部分だったね。
「よお! ジーク。何、寝ぼけたことを言ってるんだぁ~?」
「あ、あのサイモンさん、実は今、ジークの記憶が少し……」
ここでは、話しにくいので外に出た。そして、馬車の転落事故でジークの記憶が一部無いことを話した。
「えっ、マジか! そりゃあ大変な目に遭ったな! ミーチェのことも忘れてるのかよ……ミーチェ、不安だろ? 俺を頼っていいからな!」
ジークは、サイモンを睨む。
「サイモン! ミーチェは、僕のパーティーメンバーなんだ。粉をかけないでくれるかな……」
うわぁ~。ジーク、これは嬉しい……
「お前、覚えてないんだろう? ミーチェが、可哀そうだろ……なあ、ミーチェ」
「記憶が無くても、ジークとは仲良くやっているので、大丈夫ですよ」
ニッコリ微笑むと、ジークは、私を慈しむように微笑んだ。
「おい、仲いいな!」
サイモンさん、心配してくれてありがとうございます。
「所で、迷宮都市にいたお前が、何故ここに?」
「ああ、あっちの攻略が進まなくてなあ……冬になるし、春まで自由行動ってことになったんだ。暖かい方がいいだろ、ここ待遇いいしな!」
なるほど~、休暇中ってことなのね。
「まさか、サイモン。ミーチェを追いかけて来たんじゃないだろうな?」
ええ? それはないですよ。1回しか、会ってないし、5分も話してないから。
「ジーク、バカなことを言うな! お前、記憶なくてもその調子かあ?」
サイモンさんは、一緒にダンジョン行こうぜ! と言ってくる。相変わらずな発言です。
「なあ、ジーク。どこの宿に泊まってるんだ?」
「サイモン、どこでもいいだろ」
「一緒にダンジョン入るなら、同じ宿の方が都合いいだろ?」
一緒には、行かないと、ジークが断る。言い合ってるけど、案外仲いいのかな?
サイモンさんと別れて宿に戻り、食堂でお昼を食べた。結局、杖は買わなかった。
「ねえ、ミーチェ。やっぱり宿を替えるからね。サイモンが危ないから、高級宿の2人部屋にする。ずっと2人だし、問題ないでしょ?」
えっ! サイモンさんが、危ないって? 問題はないけど……
強引に了解を求めて来るジーク……宿代は、僕が出すからと……
「分かった。ねぇジーク、サイモンさんって危ない人なの?」
「悪い奴ではないけど、強引な所あるからね。気をつけないと……」
それは、見たままの人よね……
食後、宿を替えた。高い宿にするなら風呂付がいいと言う、私の希望を聞いてくれて、部屋風呂付の宿に泊まることになりました。宿代は、VIPカードを見せて、一泊素泊まりで金貨1枚。
久しぶりにジークとの二人部屋です。
ドキドキが、半端ないです……
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