第28話 森のブラージ到着
<森のブラージ>が見えてきた。その姿は、<迷宮都市>に似ている。高い石壁と物見櫓がある。
北の門から入ると、街中の作りは、他と少し違っている。大通りは1本、真っ直ぐ南門まで突き抜けていた。門は、北と南の2つ。
大通りの東側に高級店街、そして、南北を繋ぐ高い石壁が見える。その石壁の奥には、領主の館と貴族、騎士団のエリアとなっている。
そして、大通りの西側が、商人と住人のエリアになっている。
一番他の街と違うのは、尻尾がある人が歩いていたりする……! 目が釘付けになる……ええっー!
「ねえ……ジーク! 獣人っているの?」
「ああ、初めて見るのか?」
初めて見ましたよ~! ちゃんと獣耳なんだ、尻尾が揺れてるし……ネコがいたら、ついて行ちゃいそう……そう、私は猫派! アレルギー持ちの触れないネコ好きです。悲しい……うん? 猫の獣人さんにもアレルギー反応出るのかな?
ジーク曰く、ここ<森のブラージ>から更に南に行くと、獣人が住む王国があるそうです。それで、獣人の冒険者が来るのか~。
大通りを真っ直ぐに進むと、南門の手前、西側にギルドがあった。
ここのギルドも大きく、2階建てになっている。1階は、入って右半分が酒場、左側に買取りカウンターと受付がある。ここの買取りカウンターは広く取ってあり、左手奥には更に、VIP専用買取りカウンターと解体部屋がある。
「ジーク、先に異動届を出すの?」
「そうだね、届を出して、周りの様子を聞いてみようか」
珍しく、異動届を出して、ギルドの酒場でお昼にした。ジークの言動が、いつもと違うので戸惑ってしまう……
「へ~、ギルドの酒場って意外に美味しいんだ……」
「あれ? ミーチェは、ギルドの酒場は初めて?」
ジークは意外そうに言う。
「うん。ジークが、ギルドを敬遠していたからね~」
いつもは、使わないらしいけど、知らない土地で情報が欲しい時は、利用するんだって。なるほどね~。
「ジークの体調のこともあるし、2~3日はゆっくりする?」
「そうだね、一度、医者に診てもらうよ」
ついて行こうか? と尋ねたら、大丈夫だと言われた。じゃぁ、私は欲しい物があるから、散策がてら買い物に行くねと言った。1人で出かけるのは、久しぶりです。
ギルドおススメの宿屋に向かう。ジークは、ランクCなので一人部屋無料なんだって。私は、1泊素泊まりで銀貨3枚払う。宿屋は、前払いが通常なんだって。そう言えば、いつもジークは先払いしていた気がする。
「並び部屋で頼む」
ジークが、宿の従業員にそう言った。
そこは、前と同じなのね……部屋に行き、出かける準備をした。
薄いオレンジのワンピースに着替え、ジークの部屋をノックする。そして、買い物に行ってくると伝えると、
「僕も行くよ……」
「え? ジーク、病院に行くんじゃないの?」
ジークもこの街を知らないからと、結局、ジークも一緒に出掛けることになった。そして、なぜか、
「フード付きのマントを、着ないの?」
と言われた。折角、気分転換にと着替えたのに……何故いつも、フード付きのマントを着せられるのか……
夜は屋台で食べて、部屋の前で別れた。ジークは、明日は病院に行くそうです。ミーチェは? と聞かれたから、
「市場と高級店を見に行くかな」
「じゃぁ、僕もついて行く」
えっ? 記憶戻ってないはずなのに……過保護な行動が同じとは……
「えっ? ジーク……私一人でも大丈夫よ?」
「いや、ついて行くよ……」
じゃぁ、明日の朝一番に、病院に行くからと答えた。
翌朝、一緒に病院に行った。お医者さんが言うには、異常は無いそうで、記憶は、いつ戻るかは分からない。焦らず……気長に……ふとしたキッカケで……日本ドラマのセリフと同じでした。
高級店街にお風呂を見に行った。ジークが、びっくりした顔で、
「お風呂なんて買ってどうするの? どこに置くの?」
あぁ~、説明しないといけないのね……ダンジョン入った時でいいかな。
「ジーク、私もアイテムバック持ってるから、いつでもお風呂に入れるように入れておくのよ」
「えっ、君もバッグ持ってるんだね……」
そうよ、旅の間バッグが良く育って……テントもだけど……今ではアイテムバック(大)位あるのよ。
高級店街に見に行くと、貴族用のお風呂を見つけた。いわゆる猫足。お店にディスプレイされていて、タイル床と壁が半分あった……あと半分、作ればいいだけだよ!
「すみません。これ全部でいくらになりますか?」
「はぁ? 全部とは?」
お店の人とジークが、ビックリしてました。でも欲しいのですよ……猫足風呂だけで金貨30枚。床、壁は売れないと断られました。残念です。代わりにタイル屋さんを紹介してもらいました。
猫足風呂をバッグに入れて、タイル屋さんに行く前に、軽く食事。
「ミーチェは、買い方が凄いね」
「迷宮都市にいる時から欲しかったのよ。我慢した方だと思う。ふふ」
やっと、お風呂を手に入れました! 私の野望が、叶うのも……あと少し。タイルを多めに買い込んだ。仕切り用のカーテンと服を置く籠。石鹸とかタオルとか、備品も買っちゃう。
「ジーク疲れたでしょ。ごめんね~、連れまわして」
「かまわないよ、僕がついて行くって、言ったからね。それに、ついて行って良かったよ。君のことが、少し分かったからね」
少し分かった。いい意味だといいんだけど……
夜は、宿の食堂で食べました。一皿400~800エーツ位。食べながら、ジークと明日からの話をした。
「ミーチェ、そろそろ森の迷宮に入ってみようと思うんだけど。どうかな?」
「もう入るの? ジーク、体調は大丈夫なの?」
「うん、もう頭が痛むこともないし。身体を動かす方がいいから」
「分かった。でも、その前に、ダンジョンに出る魔物の資料を、読んでおきたいんだけど」
「じゃぁ、明日ギルドに行こう」
部屋の前でジークと別れる。
「ジーク、おやすみ」
「おやすみ」
ジークは、時々私のことを「君」って言う……ジークと私には、確実にキョリがある。記憶がないから仕方ないけど、寂しいよ……
翌朝、ギルドに行き、資料室でダンジョンの魔物について調べる。確かに、<迷宮都市>より強めだ……<迷宮都市>ダンジョンの10階からスタートする感じです。30階までの地図を買っておく。これで、迷わないはず。
ダンジョンで1泊することにしたので、市場に向かった。バッグには、まだ食材が沢山あるので、調味料や果物を買う。ここには、パイナップルもどきがあったよ!
翌朝、南門に向かう。南門から、<森の迷宮>まで無料の馬車が出ている。それに乗ると、<森の迷宮>まで20分で着く。宿泊代だけじゃなくて、馬車まで無料とは……領主さん凄いね。
<森の迷宮>は、入場税はない。警備の騎士は2人いるが、記録はしない。冒険者カードのチェックだけしている。
1年に1度の頻度で、魔物が溢れて来るらしい。その前兆を、逸早く判断して知らせる為に、騎士団が警備している。魔物を間引くのに、騎士団まで定期的にダンジョンに入るそうです。
「ジーク、送迎の馬車まであるよ。凄いね」
「そうだね。ここまでするぐらい、ダンジョンが脅威なんだね」
馬車に乗って20分ほどで、ダンジョンの入り口に着く。
ダンジョンの入り口が、岩場にぽっかりと口を開いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます