第24話 ジークの誕生日

 出発の朝、早めに南門へ向かう。もちろん、屋台で食べ物を買うためです。眠いですよ……


 <森のブラージ>行の乗り場に着いたら、馬車が2台あった。1つは、商人の馬車で、連隊を組んで行くそうです。


 それで、Cランクパーティーを2組も募集してたのね。1つ目は、アラサーっぽい男5人のCランクパーティー『赤い牙』。2つ目は、男3女2の、なんとBランクパーティー『宵の明星』。


 『宵の明星』の2人のお姉さん、とても色っぽいですよ。一人は前衛かな、赤毛で黒い目。露出が多くて目のやり場に困ります。もう一人は、ローブを着てるから後衛かな。金髪碧眼のキレイなお姉さん、目元のホクロが色っぽいです。


「ミーチェ、馬車に乗るよ」


 ジークに促されて、馬車に乗りました。私達が1番乗り。


「お兄さん、いい男だね~。私は、ランクBパーティー『宵の明星』のアイーダ。よろしくね」


 赤毛のアイーダさんが、ジークに声をかけた。絡み付くような目で、ジークを見ている。これは……露骨にアプローチをして来るのね……


「あぁ、ランクCのジークだ」


 素っ気ない……愛想のないジークです。良かった……


「アイーダ、振られたわね。クスクス。2人パーティーみたいだから、ダメよって言ったじゃない」

「エリス、うるさい! 挨拶しただけだよ」


 アイーダさんとエリスさんて言うのね。積極的だぁ。


 出発の合図が聞こえた。この馬車には8人が乗り、商人の馬車には5人乗ってます。御者が4人と護衛が10人。かなりの大所帯です。


「ジーク、出発するよ!」


 ワクワクしてきた。<森のブラージ>、どんな街なんだろう……


「フフ、ミーチェ落ち着いて。あ、あの魔法、僕にもしてね」


 あの魔法? エアークッションですね。任せて!


「はい、ジーク。ふふ、気に入ってもらえて光栄です。」


 明日は、ジークの誕生日です。朝から料理を頑張るよ~。




 朝、目覚めると、目の前にジークの顔があった……もう起きていたようです……


「おはよう、ジーク。お誕生日おめでとう!」


 そう言って、ジークのほっぺにキスをした。まだ、自分から唇には出来ないです……


「おはよう。ミーチェ、ありがとう」


 ジークは、嬉しそうに見つめる。うぅ、ジークが尊いです。


「ジーク、はい! プレゼント。お揃いのお財布、ジークは黒で私のは紫。アイテムバック(小)になっているからね~。沢山、お金入るよ」


 プレゼントって、お互いの瞳や髪の色を贈るんだよね~。どこかの小説に書いてたよ!


「えっ! これ……この前買った財布をアイテムバックにしたの? ミーチェ、ありがとう。お揃いなんだ、大事に使うよ」


 ジークは喜んでくれて、早速、財布にお金を入れ替えてた。分けて使うそうです。人前では、出さないんだって。貯蓄用?


 朝食を作る。ウサギ肉の具沢山スープとベーコンエッグ、ハムとトマトのサラダ、フレンチトーストそしてミルクティー。朝から、贅沢だ。喜んでくれるかな~。


 今日は、朝から美味しい料理を作るって言ってたから、ジークはテーブルに座ってソワソワしてる。ふふ、可愛い。


「今朝は、ジークの誕生日の朝食だからね~。おかわりあるから、遠慮なく食べてね」

「ミーチェ! 凄いね、料理がキラキラしてるよ……ミーチェの国の誕生日は、こんなに豪華にするのかい?」

「いいえ、朝からはしない。夜だけかな。さぁ、食べよ~」


 ジークは、目をキラキラさせて、食べ始めた。う~ん、その顔見られて、嬉しいな~。


 『宵の明星』のアイーダさんがこっちを見ている。まだ、ジークが気になるのね……当たり前かぁ、ジークはイケメンだし。


「ミーチェ。凄く、美味しい~! ありがとう。もぐもぐ……」


 にっこりと笑顔で答える。


「ジーク、どういたしまして」


 うふふ、美味しいですか? 良かった。ジークは、フレンチトーストをおかわりした。


 馬車は、街道を進む。偶に、ゴブリンが襲って来るけど、景色はず~っと、草原です。ず~っと……


 お昼は、<王都>の市場で見つけたパスタ! 大量に買い込みました。まずは定番のナポリタン。オークのハムサラダとたまごサンドを沢山。そして、クリームシチューと果実水。


「ジークは、パスタって食べたことある?」 

「う~ん、この細いの? ないよ」

「ジークこれはね、フォークでクルクル巻き付けて食べてね」


 ナポリタンは、少し辛みを付けてアラビアータ風です。ジークが、ピリ辛が好きそうだったからね、大正解でしたよ。輝くばかりの瞳で、訴えてくれる。ふふ、可愛いなぁ。ジークの嬉しそうな様子を見ながら、食べていたら、


「すっごく、いい匂いがするんだけど……」


 アイーダさんが、近寄って来た。目は机の上のナポリタンを、ガン見してる。あっ、ニンニクを使っているから、匂いがしちゃうね。話しかけるきっかけも、欲しかったんだろうな。


「護衛が、乗客に絡んだらダメだろ?」


 ジークが冷たく言う。


「うぅ……それ、お金払うから少し分けて欲しいんだけど……」


 アイーダさんて、食いしん坊?


「ダメだよ。売らないよ。君に売って、他の人も買うと言われても困る。僕の為の料理が、無くなってしまう。ダメだ」


 あぁ、ジークの方が、食いしん坊だね。ジークの誕生日にと、作った料理なので、私は何も言わない。


 アイーダさんは、ジークを睨んで言う。


「そんなに、冷たく言わなくてもいいだろ……」


 アイーダさんは、しょんぼりして離れて行った。2人パーティーに声をかけるんだから、相当自信があったんだろうな……でも、可哀そうとは、思わないよ……


 ジークが、次から食事はテントで食べようと言う。お昼からテント出すの? すぐ出せるけど……目立つよ?


「ジーク、夕食はいつもより時間かかるから、待っててね。テントの中で食べるからね」


 ジークのテントと私のテントを、並べて中で行き来が出来るようにした。布地に魔法を込めて、2つのテントの山の部分にそれぞれ掛ける。もちろん、使えるのは2人だけ。最近、色んなことが出来るようになった。


「ミーチェ、これがチートってヤツなんだね……」

「これだと、怪しまれないでしょ? 別々のテントだけど、中で行き来が出来るの。入口が2つになったのよ。もちろん、使えるのは2人だけ、使用制限をかけているからね」


 我ながら、いいアイデアです。


 夕食は、<王都>で仕入れた食材を使って、魔法を使いまくる。時短です。コカトリスの唐揚げタルタルソース添え、オークステーキのにんにく醬油がけ、色とりどりの果物を乗せたサラダ、ウサギ肉の具沢山のトマトシチュー。


 そして! ホットケーキを薄く焼いて重ねる。牛乳から作った生クリームに砂糖を混ぜ、間に挟む。ホールケーキのようにコーティングして、果物と蜂蜜をかける。


 私の渾身の料理だよ!


 邪魔されないように、テントの中でお祝いした。ケーキに光魔法でロウソクのように火をともす。


「ジーク! お誕生日おめでとう! このケーキの光を吹き消して」 


 感謝を込めて…、お誕生日おめでとう。ジークが、ケーキの光に息を吹きかける。


「ミーチェ、ありがとう! こんな誕生日は初めてだよ……」


 ジークが、嬉しそうに言う。目が輝いてます……ケーキが気になる? あれは最後に食べるんですよ? 普通はね。


「ねえ、ミーチェ。このケーキって、何かな?」

「あぁ。ジークは、甘い物好き? 私の国では、お誕生日にみんなでケーキを食べて、お祝いするのよ。甘いから、最後に食べた方がいいよ?」


 ジークは、大丈夫だと言うので、大きく取り分けて渡した。その笑顔が、嬉しい。


「ジーク。好きなのから、好きなだけ食べていいからね。全部、ジークのだからね。私も少し食べるけど……」


 食事の後、ジークのステータスを見せてもらった。前に、誕生日に上がると言ってたから。


 名前    ジーク

 年齢    22歳

 HP/MP  580/223  

 攻撃力   118(+5)

 防御力   122(+4)

 速度    108(+3)

 知力     61(+2)

 幸運     72

 スキル

 ・鑑定A  ・身体強化A ・生活魔法  

 ・片手剣A ・盾A ・両手剣B ・短剣B  

 ・無属性魔法B


「ジーク、凄い! ステータスが、一気に上がってるね。鑑定もAになってるよ」

「良かったよ。これで、僕のステータスが、見られる心配が減った。(+)のステータスは見せられないからね」


 同じスキルレベルだと、名前と年齢位までしか見えないそうです。


「ミーチェの祝福も上がってるよ。ありがとう」


 ジークはそう言って、私の頬にキスをする。腕を回して、唇にも触れようとしたので……


「ジーク、今は旅の途中だからね……」

「ミーチェ、キスだけだよ」


 拒めない……


「うん……」




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