第2章 森の迷宮

第23話 王都

 <王都>までの街道は、途中の街の領主が管理している。定期的に魔物狩りや盗賊の討伐など行う。なので、割と安全に移動できる。


 今回の馬車にもランクDの冒険者パーティーが、護衛している。ジークが目立つせいか、女の冒険者がチラチラと見てくる。分かるよ~、ジークは、イケメンだもんね。


 平原の向こうに、石壁が見えてきた。<迷宮都市>ほど高い壁じゃない、だけど長い……さすが、<王都>です。


「ジーク、冒険者カード持ってて良かったよ。王都も入るの無料よ」

「そうだね。普通は、銀貨2枚いるからね」


 中央には王宮、その王宮を守るように貴族達が住むエリアがある。そして、その周りに商人や住民が住む街がある。


「ミーチェ、南門に行くよ。定期馬車の予定を見に行く」

「はい。ジーク、王都っておっきいね~。人が多い」

「そうだね。ミーチェ、よそ見してたら迷子になるよ。気を付けて」


 やっと、南門まで着きました。<森のブラージ>行の馬車は3日後、予約して、それまで王都観光です。買い物できる~!


 今日は宿屋を探して、観光は明日にします。あ、お城は避けますよ。どこのお話でも、碌なことがないから……王子様は、見てみたいけど……


 南のギルドに行って、受付の人におススメの宿を教えてもらい、資料室で<森のブラージ>までの街道に出る魔物を調べた。ジークも、<森のブラージ>に行ったことがないそうです。


「えっ! ジークも初めてなのね。見たことない魔物とか出て来るかな? 楽しみね~」


 私はどこもかしこも初めてだけど……ジークは、クスクス笑ってる。


「そうだね。ミーチェ、楽しみだよ」


 この王都には、北と南に2つも冒険者ギルドがあって、南が本店、北が支店みたいな扱いだそうです。帰り際、<森のブラージ>行の護衛依頼を見たら、ランクC以上のパーティー募集でした。しかも2組。


「見てジーク、護衛依頼はランクC以上だよ。強い魔物出るのかな」

「そうだね。森のブラージが、岩山を越えた奥にあるからね」


 紹介してもらった宿屋に行き、夜は宿の食堂で食べた。初めて食べる料理が、沢山ありました。はい、美味しかったです。


「ミーチェ、それ何の肉か分かる?」

「えっ? ……言わないでジーク。知ってしまうと食べられなくなる……」


 カエル、蛇までです。ゲテモノ系は、美味しくても食べられません……


 部屋に行き、久しぶりのお風呂です。ここは<王都>だから、宿泊代高いんだろうなぁと思う。やっぱり、テント用にお風呂を買おう!


 もうすぐ、ジークの誕生日。明日、プレゼント買わないと! 旅の間に考えたんです。お財布に空間魔法をかけるんです。


「ねぇ、ミーチェ。明日は何か買うの?」


 ジークが、お風呂から出てきた。


「私の靴が欲しいかな、あと財布と食材とお風呂」

「うん? えっ? お風呂買うの?」

「うん。テント広くなったし、良いのがあればいいんだけどね~。テントにお風呂とトイレあれば、完璧じゃない?」

「トイレも? ミーチェ、欲しいの変わってるよ。杖と絨毯は?」

「あっ、忘れてた……ゆっくり見る時間ないから、優先順位は、財布・靴・市場・杖・お風呂・絨毯・トイレです。ふふ」


 ジークが、仕方がないなぁと言って微笑む。そして、近づいて来て優しくハグする。


「ねぇ、ミーチェ……」


 ジークが、甘い声で誘う。


「えっ、ジーク……」


 急にそんな甘い声で呼ばないで、ドキッとするじゃない……


「旅の間は、そばに人がいたからね……」


 そうね、側に人がいたら、イチャイチャなんて出来ないよね……


 ジークは、優しく唇を重ね始める……




 翌日、ジークと観光しながら、財布を探した。人が多くて、ジークとはぐれそうになる。慌てて追いかけ、人とぶつかってしまった。あっ、


「すみません!」


 頭を下げると、ぶつかった人は片手を上げて離れて行く。フードを被っていて、顔は見えなかったけど、怒ってはなさそう。


「ミーチェ、大丈夫?」 


 そこから、ジークに手をつながれた……恥ずかしい……


 手触りのいい財布を見つけた。光沢のある黒色の財布。こっそりと、お揃いの色違いも買いましたよ。ジーク用の黒と、紫色の財布は自分用ね! ふふ。


「ミーチェ、いいのが見つかって良かったね。次は、靴かな?」

「うん。先に靴を見たい。市場行くと時間かかりそうだからね」

「分かった。防具屋は、ギルドの近くに集まってるよ」


 防具屋でジークに選んでもらったのは、茶色い皮のブーツです。


「ミーチェ、これどうかな? 素材は、ロックリザードの皮だから、防御力が少し付くよ。お手頃だし、丈夫だよ」

「うん。これにする」


 金貨7枚でした。冒険者のお手頃価格って分かりません……7万だよ……この辺の感覚は、主婦が抜けないです……


 お昼は、見たことない屋台料理を食べ歩き。その後、市場に行くと、時間が経つのも忘れて食材を買い込んだ。パンは大量に買い込んでおく。あっ! パスタを見つけた。買わなきゃ!


 明後日は、ジークの誕生日だから、気合を入れて美味しいものを作るよ! ちなみに、ここにも味噌はなかった……蜂蜜がありましたよ。


 もう夕暮れ、先に靴を買いにいって正解だった。ジークのオススメの食堂に行って、<王都>の観光は終わりです。


「ミーチェ、明日は出発だから寝坊しないようにね」


 ジークが、そう言って額にキスをする。


「うん、おやすみジーク……」


 ジーク、膝の上から下ろしてくれないと……


 この後、ジークの誕生日プレゼント作るのに……


 また、寝不足になるじゃない……


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