第22話 そして王都へ

 お昼を済ませて、28階に向かう。途中で色々あって、時間がかかってしまった。


 やっと、28階に着いた。ここから、いよいよオーガが出る。感知魔法で、周辺を探すがいなかった。野営に良さそうな場所を探しつつ、左壁沿いを進む。


「ジーク、周囲を感知魔法かけてみたけど、オーガいない。28階は、少ないのかな~」

「そうだね。この階は少ないね。ミーチェ、オーガ狩りたい?」

「いえ、見たことないから、オーガを見てみたいだけよ」


 しばらく狩りをして、野営の準備をする。壁沿いに3mほどの高さの土壁を作り、テントをバッグから出す。2人だと、楽ね~。


 今日は何を作ろうかな~。オークの串焼きを焼き肉風タレで、そして、ポテトサラダ、具だくさんウサギ肉のスープとパン。


 ジークに声をかける。


「ジーク出来たよ~。この串焼きを、こっちのタレに付けて食べてね」

「おおっ! 旨そう~。ミーチェ、好きだよ。もぐもぐ……」


 ジーク、串焼き見つめて言わないで……。



 食後の日課、テントに拡張魔法かけてると、ズンッ!広がった。


「ええ! ミーチェ、今いきなりテント広がったよ? うわぁ……」

「ジーク分かった? えへへ~。かなり広がったよね」

「ミーチェ。まだ、何か置きたいの?」

「うん。まだ、秘密です。王都に着いたら教えるね。ふふ」



 翌日は、29階を目指して進みます。28階の森の中を進むと、感知魔法でオーガを見つけた。


「ジーク! オーガがいる。右側200m、1体」

「分かった。ミーチェ、開幕あの魔法。その後、僕が突っ込むから、弱体魔法か氷魔法で攻撃して」


 ジークの指示は、分かりやすくて頼りになる。


「雷撃ね。了解です!」

「ミーチェ、僕に当ててもいいからね」

「えっ? 嫌です……」


 ジークに当てるなんて、イヤです。……命中の精度をあげるよ。


 オーガのいる方向に進むと、見えた! 黒くて角が2つ、左右に生えてる。黒鬼? 大きくて2m以上あるんじゃない? あれは槍? 長い柄の先は斧みたいな武器を持っている。筋肉ムキムキな魔物……


「ジーク! 打ちます」


 魔力を込めて、雷撃を放つ。


  ビリビリ! ドッーン!! ……ピクッ、ピクッ、


『グオッ!! グガガッアアァァ――!!』


怒ったオーガに、ジークが突っ込む。オーガの武器を弾き、一太刀あびせる。私は、オーガに命中しろ! と念じて氷魔法を打つ。


  ヒュッ――ズババッッ!!


 ジークは、オーガの攻撃をかわして、剣を振り下ろした。オーガは倒れ、溶けるように黒い霧になって消えた……


「ふぅ~。ミーチェ、お疲れ」

「ジーク、怪我はない?」


 駆け寄って、ヒールをかける。


「大丈夫だよ。ドロップ、良いのが出たね」


 ジークはドロップ品を見て、さすが幸運の女神だと茶化す。オーガは、魔石=金貨5・角=金貨3・帰還石=金貨10・武器=ゴミを落とした。


「おお~、1体金貨18枚にもなるんだ!凄いね」

「いや、ミーチェだからだよ。フフッ」


 29階に降りると、このエリアも森だった。1時間ほど狩りをして、お昼にした。食後、30階を目指して進みます。


 オーガが出て来るようになったので、30階への階段まで時間がかかった。私が、オーガを探してたからね~。7体狩れたよ。だって、幸運のお陰でドロップが美味しいんだもん。探すでしょ。


 30階のクリスタルまで来た。ジークを見たら、微笑んでいる。


「ミーチェ、頑張ったね。1階に戻ろうか」

「うん。ジークありがと」


 30階のワープが通った。やった~! 達成感、そして疲れたぁ……


 ワープで1階に飛び、ダンジョンを出る。先に、南門に行き、<王都>行の定期馬車の予定を確認する。明日の馬車に空きがあったので、予約した。


 ギルドに向かい、買取りカウンターに行くとトーマスさんがいた。


「おう、ジーク! 又、籠ってたのか?」

「あぁ。数が多いが換金してくれ」


 帰還石の一部と、オーク肉は売らないで取っておく。残りのアイテムを全て出した。


「毎度のことだが、今回は又、凄い量だな~。何日籠ったら、こんなに出るんだ。おっ、帰還石10個もあるのか! ありがたいな」


 トーマスさんが目を見開き、職員を呼んで手伝わせる。


 しばらくして呼ばれた。全部で、金貨280枚と銀貨9枚でした。おおぉ~! 凄い金額! 嬉しい。次は、異動届を、出しに行く。マイルちゃんがいた。


「ジークさん! この前はすみませんでした」

「もういいよ、怒ってないから。今日は、異動届を出しに来た。処理をしてくれ」


 ジークは、カウンターにある異動届に記入して渡した。


「はい! え? 移動されるんですか? どちらへ行かれるんです?」

「特に決めてない。じゃぁ」


 愛想のないジークは、振り返って微笑む。


「ミーチェ、行くよ」


 私にだけ微笑んでくれるのは、嬉しいな。 ジークについて出て行こうとしたら、大声が聞こえた。


「お、いたいた。おい、ジーク! お前だろ、帰還石まわしたのは! 助かるぜ」


 あ、サイモンさんだ。大声で叫ぶなんて……らしいけど。


「あぁ、サイモン。元気そうだな。またな!」


 一気に、機嫌悪くなったジーク……素早くギルドを出て行こうとした。


「ちょっ、待てよ! 相変わらず、愛想ねえな! なぁ~、ジーク」


 ジークは、サイモンさんの話の途中で答える。


「行かないよ」

「まだ何も言ってねえだろ! ミーチェ、コイツに困ったら何時でも言ってこいよ」


 サイモンさんが、優しい目で話かけて来る。


「は、はい……」


 ジークが、私を隠すように立って冷たい声で言う。


「彼女に、かまうなと言っただろ……」

「怒るなよ。ジーク、気が向いたら声かけてくれよ!」

「……」


 ジークは、返事をせず手を上げる。そして、私を連れてギルドを出る。



 大通りの宿屋『迷宮のヤドリギ』に行く。夕食は食堂で食べる。今日は豪華に、1番高い料理を頼む。稼いだからね! コカトリスの香草焼き1,800エーツ! 美味しそうだぁ~。


 食事の途中、お金の配分についてジークが、


「ねぇ、ミーチェ。報奨金の配分なんだけどね」

「うん。何?」

「女神の祝福の件もあるから、あれってステータスの実と同じだよね。僕が貰ってるから、今回の配分から半分ずつにするからね」


「え? 女神の祝福って……私は知らないよ……今のままでいいよ」

「ミーチェ。僕の為に、ランクEのままだしね。半分だからね」


 そう言って、今回から半分ずつになった。今のままでいいのに……


 部屋に行って、お風呂に入る。次は、いつ入れるか分からないしね~。ジークが、お風呂に入ってる間に、ステータスを確認した。


 名前   ミーチェ

 年齢   16歳

 HP/MP  96/710  

 攻撃力   61

 防御力   57

 速度    84

 知力   131

 幸運    96

 スキル

 ・鑑定A ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法A

 ・火魔法A ・土魔法A ・風魔法A ・水魔法A

 ・光魔法A ・闇魔法A ・無属性魔法A  

 ・雷魔法A ・氷魔法A ・聖属性魔法A 

 ・短剣D  ・回復魔法A ・時空間魔法A


 おぉ! 年齢そのままで、ステータスは上がってる。スキルも、短剣以外オールAになった。


 短剣ねぇ……解体もしないから、上がる要素ないよね。


「ジーク! ステータス上がってる。見て~」


 ジークが、お風呂から上がって来たので、ステータスを見てもらった。


「ミーチェ。スキルの短剣Dが、目立つね~。フフ、僕のも見ようか」


 そう言って、ジークは頭を寄せてステータスを開く。


 名前    ジーク            

 年齢    21歳

 HP/MP  530/213  

 攻撃力   108(+2)

 防御力   112(+2)

 速度     98(+1)

 知力     56(+1)

 幸運     72

 スキル

 ・鑑定B  ・身体強化A ・生活魔法  

 ・片手剣A ・盾A ・両手剣B ・短剣B  

 ・無属性魔法B


「ねぇ。ミーチェの祝福が、増えてるよ……」


 ジークが、甘く囁いて来る……


「えっと、そうね……私は、知らないから……」


 ジークが、頬にキスをして、唇に軽く触れる……


「うん。ミーチェ、好きだよ」


 ジークに抱きかかえられる。あぁ……言わなきゃ、自分の気持ち……


「あっ、うん……ねぇ、ジーク。伝えておきたいことがあるの……」

「なに? ミーチェ」

「ジーク。私もね、ジークが好きよ……」


 あなたと、この世界で生きて行く……


「!!」 


 ジークは、いつもより優しくて、いつもより激しかった……




 翌朝、ジークに起こされた。馬車に乗り遅れるからと……私が、眠そうな顔をしているのか、


「ミーチェ、抱っこしようか?」


 と聞いてくる。そんな恥ずかしいこと、出来るわけがない。なんとなく、自分にヒールとキュアをかける。効果ないのに……ポーションは効果あるのかな?


「ジーク、大丈夫よ」

「ミーチェ、バッグにすぐ食べられる物、何か入ってる?」

「うん、あるよ」


 時間に余裕がないみたいで、そのまま南門に向かう。


「遅れてすまない。予約しているジークだ」

「遅れてないが、あんた達が最後だ。さぁ乗って」


 急いで、馬車に乗り込む。定期馬車には、もう8人ほど乗っていて、私達が最後だった。


 私達が乗り込むと、御者が声を掛け出発の合図をする。護衛が両側に就く。


 馬がゆっくり歩きだした。


 南門を抜けて<王都>へと向かう。


 さぁ、ジークと私の旅が始まる。



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