第13話 2回目のダンジョン・ボス戦

 昨晩はジークとショウが、焚火の番をしてくれたので私はぐっすり眠れた。


 朝は、残りのスープに牛乳と小麦粉でトロミをつけて、クリームシチューにした。パンは、カットしてチーズを乗せて焼く。こちらのチーズは、酸味があってちょと堅いんです。足りない人は普通のパンもどうぞ~。


 2人が食べている間に、お昼のお弁当をつくる。大き目の深皿に昨日のウサギ肉のバーガーと、オークベーコンエッグのバーガーをのせる。これを、3皿作る。卵は浄化魔法かけて半熟にしてます。料理してると、私って主婦だなぁ~、って思う。


 お昼まで、10階で3人で狩り。みんなに強化魔法かけまくって、回復魔法も飛ばします。


 お昼は、ボス部屋近くの小部屋で、みんな手早く準備する。2人は、背筋を伸ばして座ってます。うふ、……可愛いなぁ。


「お昼は、2種類のハンバーガーよ」


 2人とも、目が輝いてます。キラッキラッよ。


「ショウ!」

「おー! ジーク!」

「心、通じてるのね……」


 食事が終わって、いよいよボス戦です。


「ショウ、僕とミーチェ2人でボス戦行くつもりだけど、ショウはどうする?」

「俺は参加できないの?」 

「参加してもいいけど、ショウのボス戦の権利が消えるよ。それに、ドロップアイテムの権利は上げられないよ? 僕たち2人で倒せるから。分配金を、少し渡す程度。それでもいい?」

「アイテムの権利はいらない。俺、もう10階のボス戦できないの?」

「ボス戦を1度もやったことない冒険者と一緒なら、出来るよ。今日の僕みたいにね。どうする?」


 ショウは、少し考えている。


「ジーク、一緒に行く。戦い方を見たい」

「分かった。連れて行くよ。取りあえず、ボス部屋前まで行ってから説明するね」


 初めてのボス戦です……ドキドキする~。本当、ゲームみたい。ボスは、ホブゴブリン。ランダムでゴブリンメイジが湧くそうです。


 作戦は、3人で入ってジークと私で戦う。ショウは端っこで待機。メイジが湧いていたら、私とショウで戦う。私は両方必ず、攻撃すること。


「はい! ジーク、了解!」

「分かった。俺はメイジが出なければ、そのまま待機だね」

「大丈夫だよ。ミーチェは僕が守るから」


 ジーク、すごく頼もしい。


 ボス部屋に入ってすぐ、全員に強化魔法をかける。奥に、ホブゴブリンが見える。怒ってるよ……メイジはいない。ドキドキしてきた~! 自分の心臓の音が聞こえるよぉ……


 ジークが奥に進み、すぐ後ろからついて行く。ホブゴブリンが叫び声を上げて、こっちに近寄ってきた。


『ガアァッ!! グウオオォォ~!!!』


 開幕、私がホブゴブリンの顔めがけて風魔法を放つ。魔法が、当たった瞬間にジークが、ホブゴブリンめがけて走り出す。


 続けて弱体魔法を放つ間に、ジークがホブゴブリンに一太刀あびせ、挑発して横を向かせる。


 次に雷魔法を撃った瞬間、ジークは動きを止める。ホブゴブリンが倒れるのが見えた。


 えっ! もう終わり? ……早くない?


 あっという間のボス戦でした。10分もかかってないよ。流石、ランクC冒険者のジーク。強いの一言です! 私、いらないよね……


 ホブゴブリンが消えて、そこに宝箱が出現した。


「宝箱は、ミーチェが開けて」


 ジークが言うには、宝箱開けるのにもステータスの幸運が関係するそうです。なるほど~、じゃぁ、私いるね!


「じゃぁ、開けますよ~」


 なんか宝箱開けるのうれしい~。誕生日プレゼント開けるみたい。顔が自然と笑顔になる。


「どれどれ、おお! いいのが入ってるよ。さすが、ミーチェ。ホント凄いね~。可愛いね~」


 ジークが、ニコニコして言う。最後のへんだよ……


「俺も見たい!」


 ショウも寄ってきた。うんうん、お宝は見たいよね~。


 3人で宝箱の中を覗いた。戦利品を1個ずつ取り出す。

・ホブゴブリンの魔石 ・ポーション(中) ・力の実 

・ホブゴブリンの片手剣


 これらが、いくらになるのかと言うと、


・魔石=銀貨2 ・ポーション(中)=金貨10枚

・力の実=金貨200枚のギルド売りか、

     金貨200枚からの商業ギルドでオークション

・片手剣=ゴミ


 おぉ~! 凄いね。


 力の実のギルド売りは、買取り希望を出してる冒険者に売るそうです。オークションは商業ギルドが行い、誰でも参加できる。ただ、手元にお金が入るまで、一カ月以上かかるんだって。


「力の実って、すっごく高いのね。金貨200でも高額なのに、オークションに出せば、もっと高く売れるってことでしょ?」

「うん、高く売れるよ。だって、その実を食べれば必ずステータスの攻撃力が、1~3ランダムに上がるんだ。冒険者や騎士なら、誰でも欲しいアイテムだよ」

「すっげー!!」

「ええ~! 必ず上がるの! それなら、大金出しても欲しい人いるね」


 ステータス全ての実があるそうで、どれも金貨200枚~するんだそうです。


「必ず上がるんなら、ジークが使えばいいんじゃない?」


 剣持ちなら、みんな強くなりたいだろうしね。そう言うと、


「えっ、ありがとう。でも今はいいかな、僕わりと強いから。ミーチェの気持ちだけで、とても嬉しい」

「力の実、使わなくていいの? やっぱり、ジーク強いんだ~」

「ジーク、かっこいいな!」 


 ショウが、キラキラした目で言う。


 そう言えば、ジークは、ランクBの昇級クエスト中だったね。ランクBの強さがあるんだ。


 ボス戦終わって少し早いけど、ダンジョンを出ることにした。今回は、1泊してるのでいい稼ぎになってるはず。3人で、ギルドに向かう。換金額いくらになるか、楽しみ。


 ギルドに入って、アイテムの依頼があるかチェックする。ウサギの皮と狼の皮の依頼があったので、受付に持っていく。


 受付の女の子が、チラチラとジークを見てる。


「依頼書とギルドカード預ります。ジークさん、これからダンジョンですか?」


 ジークのギルドカードを確認して、ニコニコと話しかける。


「いや、今、出てきてた。アイテム依頼があれば、ギルドの信用度を上げておこうと思ってね」

「なるほど~、ついでに依頼達成されるんですね」 


 やたらと愛想を振りまく、赤毛の金色の目をした18歳ぐらいのお嬢さん。ジークが、お気に召したのね……イケメンだもんね~。


「こちら、依頼書とギルドカードです。ジークさん、こちらで依頼受けるの初めてですよね~。私、受付のマイルと言います。今後、よろしくお願いしますね!」

「ああ」  


 ジークさん愛想のないお返事です。受付のお嬢さん、渾身の笑顔なのに……マイルちゃんと言うのね。ジークは人見知りだから……たぶん、みんなにそういう感じだからね。


 依頼書をもって、端っこの買取りカウンターへ行きアイテムを出す。魔石だけで100個以上あり、その量に、買取り担当の男性職員が驚く。


「何日、籠ってたんだ……」


 ドロップ率がいいからね~、とは言えない。私が90%で、ジークも70%あるからね~、そりゃぁ出ますよ。


 ボス戦の戦利品も、ポーション(中)以外売る。ポーション(中)は買うと高いので、手元に置いておくことにした。


 力の実を見て、担当のギルド職員さんが、更に驚く。


「ええっ! 出たのかっ! 売るのか!?」

「ああ。今、懐が心もとないからね」


 ジークは、素っ気なく答える。


「オークションには、出さないのか?」

「ああ。どうせなら、冒険者に使ってほしい」


 そのジークの言葉に、職員さん何やら感激しているようです。


 魔石とアイテムの換金額、依頼の報奨金を合わせて、金貨10枚、銀貨8枚と銅貨2枚。ボス戦の換金額は金貨200枚と銀貨2枚でした。


 合計で、金貨210、銀貨10、銅貨2枚。白金貨は使い勝手が悪いので、そのまま金貨で貰った。


 おおぉ~! 一気にお金持ちだぁ~。


「先に言っておくよ。分配金もらっても、余り喜ばないように!変な奴が、絡んでくるからね。気をつけるように」


 ジークが、私とショウに、釘を刺す。2人とも素直にうなずく。


 ジークは、ショウに金貨2枚と銀貨3枚渡した。これは、ボス戦以外の換金額の20%ほどの分配金と、ポーター代の銀貨2枚分。ショウは嬉しくてぷるぷるしている。


「ショウ、無駄遣いするなよ」


 と、ジークが微笑んでる。次は私だ~。


「はい、ミーチェの取り分。ドロップ率考えると、50%でいいんだけどね」


 金貨84枚と銀貨4枚貰った! わぁ~~、すっごい! 日本円にして、約84万円だよ! 受け取った手が、震える。


「ひやぁ~! ジーク、今のままで十分満足してるよ~。ありがとう!」


 ジークが微笑んだ。ギルドを出て、中央広場でショウと別れた。


「ショウ、またね~」

「ジーク! ミーチェ、ありがと!」


 ジークと宿屋に向かう。そう『木漏れ日』へ~! 明日から、2日間休む予定です。頑張ったしね~。


 お風呂にレモンもどきを浮かべて、ゆっくり入ろう~。






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