第14話 休日の過ごし方

 今日から二日間お休みです。偶には一人で出かけようとすると、


「ミーチェ、危ないから一人はダメだよ」


 <迷宮都市>は、治安が悪いのかな? なので、ジークとお出かけです。


 ジークが服を買いたいと言うので、商業エリアへ行きます。お店をあちこち見ながら、服屋さん巡り。


「ミーチェ、ここ見るよ」


 と言って入ったお店は、女性用の服屋さん。え?


「あれ? ジーク、ここ女性用よ?」

「うん、ミーチェの着る服が欲しいんだ。今日みたいな、休日に着る服」


 ジークが、嬉しそうに微笑む。


「えっ、私の?」


 ぽっと、頬が染まる。……嬉しいなぁ。


「そう、ミーチェの服。どれがいいかな~」


 ジークは店の中に入っていく。あれこれ見て、何着も買おうとする。嬉しいけど、勿体ない。やっぱり、発想が主婦だよね。


「ジーク、今日の記念になるように1着でいいからね」


 それから2人で選んだ。あまり派手なのは好きじゃないので、淡いオレンジのフードが付いたチュニックワンピース。キャメル色の刺繍が入っていて、上品な感じです。


「ジーク、ありがとう」

「ミーチェ、とても似合ってる。可愛いよ……」


 ニコニコと笑顔で褒めてくれるんだけど、フードは被せられる……。そのまま着替えて、着ていた装備服はバックに入れた。


 その後、気になっていた大通りにある、カフェみたいなお店に入った。白い柱が特徴的で、中はお客さんで賑わっていた。


 奥のテーブルに通され、軽食を食べることにした。夜は、なんと『木漏れ日』で予約しているのだ! なので、お昼に食べ過ぎないようにしないとね。


「ねぇミーチェ……」


 食べていると、ジークが少し改まった様子になる。


「うん? 何ジーク」

「あのね。僕ミーチェに教えていないことがあるんだ。パーティーのことなんだけどね」


 ジークは、手を止めて私をじっと見る。


「パーティーのこと?」


 頭を傾げる。何だろう?


「今、僕とミーチェパーティー組んでるよね。男女二人のパーティーってね。特別な意味があるんだよ」

「えっ……?」


 特別な意味って、まさか……


「そう、恋人のパーティーって意味があるんだよ」


 ジークはにっこりと微笑んで言った。


「えっ!!」


 思わず大声が出そうになって、慌てて口を押さえた。


「ミーチェが冒険者になる時、誰かに絡まれて、迷い人だとバレないように初めからパーティーを組むことにしたんだ」


 と、小さめの声で言った。優しい瞳で見つめて来る。


「そうなんだ……」


 あの時は、何も分からず必死だったもんね~、私。あぁ、だから受付のレイシアさん、びっくりしてたんだ……


「落ち着いたら、言おうと思っていたんだけど。なかなか、タイミングがなくてね。で、今になったんだ」


 初めのギルド以外、誰かに絡まれることはなかった。いつも、ジークと一緒だったし、助かっていたのね。


「ジーク、このままでいいの? ダンジョンを攻略するにも、誰か入れた方がいいんじゃないの?」

「うん、このまま2人。誰もパーティーに入れるつもりないから。僕は、ミーチェと2人がいいからね。ミーチェとのんびりがいいよ」


 ジークは、2人だけがいいと言う。誰も入れないと。


「ジークがいいなら、私もこのままでいいかなぁ」

「良かった」


 ジークは、嬉しそうに言った。


 部屋に戻って、ゆっくり過ごす。ジークは武器を手入れしている。私はお風呂へ~、レモンもどきを浮かべて、いいお湯でした。浄化魔法だけでも清潔に保てるけど、やっぱりお風呂はいい!


 夕食は、この宿で食べます。一人3,000エーツのお料理です。ジークが、奮発してくれました。ありがと~。


「美味しい~。ジーク、これ見たことない食材が使ってあるよ」

「うん、美味しいね。ミーチェの作る料理の方が美味しいけどね」


 にっこりするジーク。ジークめ、嬉しいことを言ってくれる。褒められると、また頑張ろうって思う。私ってチョロかったのね。


「そうだ! ジーク、思ってたんだけど、ジークのステータスを見てみたいんだけど~、ダメかな?」

「うん、いいよ。僕のステータスが気になる?嬉しいな」


 ジークがニコニコと嬉しそうに言う。


「だって、ボス戦あっという間に終わったんだもん。ジークの強さが気になる」

「ミーチェのも見せてね。隠匿魔法を使ったって前に言ってたけど、どこに使ったのかも知りたいしね」


 食事が終わって部屋に戻り、ステータスを見せ合った。


 まず、ジークのステータス。


 名前    ジーク

 年齢    21歳

 HP/MP  530/213  

 攻撃力   108

 防御力   112

 速度     98

 知力     56

 幸運     72

 スキル

   ・鑑定B  ・身体強化A ・生活魔法  

   ・片手剣A ・盾A ・両手剣B ・短剣B  

   ・無属性魔法C


 おおぉ! ジークのステータス凄いね。3桁が4つもある。一般男性のステータスは、40~60位の数値だそうです。知力・幸運は、10~60位だって。ふり幅が……


「お~! ジークHP500台とか凄いね、私100も無いのに。攻撃も防御も凄いね~。ジーク、前衛なのにMP213って……もしかして、魔法も覚えられるんじゃない?」

「ミーチェ。魔法はね、簡単に覚えたり、派生したりしないんだよ。師匠について教わったり、魔法のスクロールで覚えたりするんだ。ミーチェが、特別なんだよ?」


 あ~、私は<迷い人>仕様、チートなんですね。


「そうなんだ。ジーク、ありがとう見せてくれて」

「うん。ねえミーチェ。僕、訳があって隠してる箇所があるんだよ。それは、今は見せられないんだ。ごめんね」

「謝らないで、ジークにとって必要なことなんでしょ? 隠してること、言わなくてもよかったのに、ありがとう」

「ミーチェは、全部見せてくれるから。見せられないけど、伝えておきたくて……」


 あぁ……私に対して、誠実でありたいのね……ありがとう。


「ありがとう。次は私の、ステータスオープン。これが、隠匿したステータスよ」


 名前   ミーチェ

 年齢   15歳

 HP/MP  65/350  

 攻撃力   33  

 防御力   29 

 速度   

 知力   

 幸運    

 スキル

   ・生活魔法 

   ・短剣E


「えっ? いや、ミーチェ……これは、ちょっと……」


 ジークの反応が、思ってたのと違う……


「うん? 隠したよ? 見られて困りそうなのは」

「うん、そうだね……ミーチェ、これは……隠しすぎだよ? かえって、不審に思われる。MPが多いし、怪しいって思うよ。数字を低めにした方がいいよ」


 数字をいじることが出来るんだ。分からなかったよ……隠匿って面倒ね~、<迷い人>ってバレたくないし、仕方ない。


「う~ん、後で書き直します。ジーク、本当のステータスはこれ」


 名前   ミーチェ

 年齢   15歳

 HP/MP  65/350  

 攻撃力   33

 防御力   29

 速度    50

 知力   100

 幸運    94

 スキル

   ・鑑定A ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法B

   ・火魔法B ・風魔法B ・土魔法A ・水魔法B 

   ・光魔法B ・闇魔法B ・無属性魔法B 

   ・雷魔法C ・氷魔法C ・聖属性魔法C 

   ・短剣D  ・回復魔法D ・時空間魔法D


「おぉ! 15歳になったね。ミーチェ、成人おめでとう! ステータスも順調に上がってるし。良かったね」

「あっ、ありがとう。見た目が、これ以上幼くならないのは嬉しいね」


 成人って言われても、ピンと来ないんですけど……


「ふふ。ミーチェの可愛さは、15歳でも16歳でも変わらないよ」

「えっ……」


 ぐっ、また可愛い言うし。いえ、変わるんですよサイズが、困るんだけど……あれ?


 おかしい……最近、サイズアップしてるんですが……? 魔素を吸って、こっちの身体に作り直すと育つのかな? 嬉しいけど。


「ミーチェは、本当に可愛いんだよ……」 

「あっ。」


 ジークが、頬にキスをした。


「おやすみ、ミーチェ。明日は買い出しに行くよ」

「はい。ジーク、おやすみ……」


 残された私は、ステータスの隠匿を手直ししてます。はぁ~、やばいなぁ。額じゃなく頬だった……。


 作業が進まない……バッグの拡張もしたいのに……。


 名前   ミーチェ

 年齢   15歳

 HP/MP  65/200  

 攻撃力   33  

 防御力   29  

 速度    50    

 知力    50   

 幸運    50    

 スキル

   ・生活魔法 

   ・風魔法C

   ・水魔法C

   ・短剣E


 やっと、出来た。明日、ジークに見せよう。






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