第11話 ジークの視点 1(回想シーン)
◆ ◆ ◆
ジークは、<魔の森>の中を歩いていた。
ここ数日、魔物の姿が少ない。川沿いをいつもより奥に入る。川辺にある岩山に、黒い霧が渦を巻いていた……
「何だ!?」
息を飲む。黒い渦の中から、何かが出てきた……
「……魔物? ……人か?」
渦から産まれるように出てきたそれは、そのまま地面に横たわり動かない……
近寄ってみると、意識のない女性だった。見たことない服装をしている。鑑定してみるが、何も見えない……
「どうなってるんだ……」
そのまま放置することが出来ず、川辺で寝かせて様子を見る。気が付いたようだ、黒髪の黒い瞳のほっそりした年上の女性。
「気が付いた?」
戸惑っているようだが、助けた礼を言われた。丁寧な話し方、貴族みたいに偉そうじゃない。街の女の子みたいに、キャッキャしてない。ミチヨと言うらしい。言い難いな……
彼女の話を聞くと、どうやら迷い人のようだ。だから、鑑定出来なかったのか……
再び鑑定する。今度は、ステータスが見えたけど、おかしいな? 0歳って、ありえないだろう? それに、愛称でつけた呼び名が名前になってるし……
彼女の慌てようが、可愛い。そりゃあ困るよね、この状態は……若返って赤ちゃんになるのは僕でも困る。
街まで連れて行くことになった。ステータスのせいか、スライムにすら悪戦苦闘してる。一生懸命なのがいいね。微笑ましいよ。
お世話になってるお礼にと、夕食を作ってくれたけど、これはびっくりした!すごく美味しい。普通じゃないよ……
うん、決めた! 独り立ちするまで僕が面倒みよう。この世界に一人っきり、僕と同じだ……僕が守ってあげないとね。悪いからと、断られそうなので育成クエストの為と言おう。しかし、料理が美味しすぎる。
<始まりの街>に着く前にステータスをチェックした。6歳になってるけど、スキルが色々と増えてる。まずいね。見た目も若くなってきているし、綺麗になった……
う~ん、どうしようかな。2人パーティー組んでおこうか。
僕と変わらない息子がいるって? 冗談言って、そうは見えないよ。あれ? ミーチェはエルフじゃないよね?
マントを着せて、フードを被らせる。僕にしかステータスを見せないとか、かわいいことを言う。
ギルドに登録してもらって、上手くパーティーを組めた。受付のレイシアさんは、怪訝な顔してたけど。
変なのに絡まれて、迷い人だってバレたら困るだろうし。ミーチェは、男女2人パーティーの意味を知らないからね。そのうち、教えるよ。フフ。
ミーチェが、ランクEになった。彼女の見た目が、更に若くなってきた……そろそろ、街を移動した方がいんだけど……
「ミーチェ、早く15になって……」
高レベルの鑑定持ちにステータスを見られると困る。と、思っていたが、先にケビンに気付かれそうだ……
「お嬢ちゃん、何か最近、若く? 可愛くなってないかあ?」
これは不味い。ミーチェのステータスを確認する。14歳だった。見た目16ぐらいだと言ったら、ミーチェも慌てていた。
そして、ミーチェは思ってもいなかったことを言う。
「ジークの昇級クエストが終わったら……私、冒険者を辞めて目立たない路地とかで屋台でもやろうかな~って」
な! 何を……話を聞いてられなくて、思わず止めた。
「待って、ミーチェ!」
嫌だ……何が?
ミーチェが、どこかに行きそう……なんだ……
止めなきゃ……何故?
……
ミーチェが、好き……なのか……?
……
ミーチェが、僕から離れていくのがいやなんだ……
急いで、街を出る。ミーチェが、変なことを考えないうちに。
ミーチェが変な魔法を覚える、というか作ってる……そして、僕が言ってた隠匿魔法を覚えたと報告してくる。宿題が終わったから、他の魔法も練習するんだって。宿題って何? 可愛いなぁ……
ミーチェのステータスを鑑定してみたけど、何も出ない。あぁ~、そうだ、鑑定はミーチェの方が、レベルが上だった。どういう風に隠したのか、凄く気になるんだけど……。
あの時から、ミーチェが気になって仕方がない。向こうの世界に家族がいると言ってたけど、僕の気持ちは僕のものだよね。
ミーチェは、甘やかすと真っ赤になって、更に可愛くなる。視線がさまよう、これは……癖になる。
<迷宮都市>に着くと、ミーチェが相談があると言う。ダンジョンに入ると、転移するかもしれないと。えっ、嫌だ……
「ミーチェ……」
言葉を失って、思わず抱きしめてしまった。
ミーチェは、何もないかも知れないが、もし消えてしまったらごめんね、と言う。
愛しい……
思わず、額にキスをしてしまった。
そういえばダンジョンに落ちて、こっちに来たと言っていたね。よく考えてみないと……
部屋に戻って話の続きをした。ダンジョンに入っても、転移しないと結論が出た。頭では分かっていても少し不安だよ。
このままダンジョンに入らず、ダンジョンの無い街に行ってもいいんだけど……。
「ジーク、大丈夫よ。私、消えたりしないから」
あぁ、笑顔で癒される。
……約束だよ。……帰らないで。
「おやすみ、ミーチェ」
願いを込めて、額にキスをする。
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