第10話 初ダンジョン
今日は、いよいよダンジョンです。
朝食を食べてダンジョンエリアに向かう。途中の屋台で買い物し、ギルド前を通り過ぎる。
ギルドを北に進み、北門手前を左に入る。ダンジョンへの道は1本だけ。道の両側には、武器屋や地図屋、ポーションなどを扱った薬屋などが並んでいる。
そこを抜けると、開けた広場になっていて高い壁に囲まれている。壁の中央に開閉式の門があって、そこからダンジョンに入る。
門手前の右側には警備兵が数人いて、ダンジョンに入る人をチェックしている。壁を見ると、紙に注意事項が書かれていた。
・入場税は、一人銀貨1枚。
・15歳以上のギルド登録者のみ。
・1パーティー5人まで。(ポーター1人追加可)
・ポーターは、一人だけ無料。(10階まで)
ダンジョンに入る時、入り口で記録されるそうです。パーティー人数・メンバーの名前・入場時間・退出時間。
ダンジョン入口の左側には、10代前半の男の子が数人いた。
「ねぇミーチェ。ポーター1人連れて行くけどいいかな?」
「うん、いいよ。ジークにお任せ。あ、地図が売っている、買ってもいい?」
「浅い階層は、前のを持っているからいらないよ。多分、覚えているし。後で、地図を渡すね」
ジークは、左側にいる男の子達の所に行った。
「この中で、5階のワープ通していないヤツいる?」
一番小さい男の子が、手を挙げた。
「俺、通してない」
青色の髪で黒い瞳、まだ幼さが残る顔立ち。ほっそりしていて、背の高さは私と変わらない。
「じゃぁ、君を連れて行く。報酬は、銀貨1枚ギルドで払う。いいかな? 僕はジーク、ランクC。君は?」
「うん。俺はショウ、12歳だ」
普通ギルドは12歳から登録できるけど、<迷宮都市>のダンジョンは15歳にならないと入れない。なので緩和処置として、ポーターとしてパーティーに付いて入ることが出来るんだって。
「ショウ、よろしく。彼女は僕のパーティーメンバーのミーチェ」
「ミーチェです。よろしくね。あ、ランクEです」
「俺はショウ、よろしく」
入り口で銀貨2枚を払い、記録してもらう。ポーターの説明を受けてダンジョンに向かった。
ダンジョン前で、ジークを止めた。
「ジーク、ちょっと待って。これ、帰るまで預かっていて欲しいの。ね、お願い」
そう言って、笑顔でバッグからお金の入った袋を取り出し、ジークに渡した。念の為……ちょっとだけ、不安なんですよ……
ジークは、渡された袋の中身が分かったようで、
「ミーチェ……これ、ダンジョン出たら返すからね。あ、ミーチェ。ダンジョン初めてだから、怖いでしょ」
と言って、手を繋いできた。嬉しい……ショウは、『何やってんだ?』って顔して見ている。
大丈夫だと思っていても、ドキドキするよ。覚悟を決めて、ジークと一緒にダンジョンに入った。
中は、石で出来た迷路になっている。
少し進んで立ち止まる。
何も起こらない……
2人、顔を見合わせて喜ぶ。ほら、大丈夫だったと……
ショウは、訳が分からないと私達を見ている。ごめんね、ショウ。訳アリなのよ、ふふ。
そこからは、ジークが先頭で一気に5階まで行って、先にワープを通すことにした。ジークから離れないように私とショウは、ドロップアイテムを拾いながら、ついて行った。
ジークは最短距離で進んだので、5階まで3時間もかからなかった。ワープの出来るクリスタルは、5階に降りて右側に鎮座していた。
クリスタルに、手を触れる。すると、クリスタルから魔力が伝わってくるのが分かる。飛びたい階層の数字を思い浮かべると、ワープ出来る仕組みになっているそうです。
試しに3人とも1階にワープして、再び5階にワープして戻る。ちなみに、ジークは以前のパーティーで30階までワープを通しているそうです。
「ショウ、ゴブリンとウサギ倒したことあるかい?」
ジーク、ポーターのショウにも狩りをさせるのかな?
「ウサギはある。ゴブリンはない」
「分かった。僕とミーチェが狩るから、その様子をよく見ておいて。それと、ドロップしたアイテムは、このリュックに入れて」
そう言って、ショウにダミーのリュックを渡した。
4階に戻ってゴブリンとウサギを昼頃まで狩った。魔獣を倒すと、数秒で消える。そして、魔石とか肉の塊とかアイテムが転がる。
ホントに解体しないでいいんだ。凄くいい!
「ジーク!解体しなくてアイテム出るよ。凄いね! 嬉しいな~。ダンジョンいいね!」
「あはは。良かった、喜んでもらって」
5階に降りる階段そばの小部屋に、魔除け石を置いて昼食にした。
さっき屋台で買ったのとバッグに入っている料理を出して、3人で食べた。2人とも目がキラキラです。
「美味しい!!」
口数の少ないショウが、目を見開いて食べています。
「そうだろ~。ショウ、この美味しい食事のことは秘密だよ」
ジークがそう言うと、
「ポーターは、参加パーティーのことは、何も言わないんだ。それが決まりなんだ」
「そうだった。ショウ、もう1つ食べていいよ。この美味しさは、世界で2人しか知らないんだからな」
ショウはキラキラした目で、分かったと言った。ジークったら大げさですよ。しかし、2人とも呆れるほど食べているよ……
「2人ともそんなに食べたら、お昼から動けなくなるよ?」
食後は、私とショウのペアで狩る。私が魔法を放って、ショウが止めを刺す。始めは、息が合わなかったけど、段々慣れてきた。
ワープで1階に戻りダンジョンを出た。ギルドでアイテムを換金してもらう。全部で14,400エーツになった。銀貨14と銅貨4枚でした。
ポーターの相場は銀貨1枚。ジークは、ショウに銀貨2枚渡した。ショウは大喜びだった。
ショウと別れて、別の宿屋に向かう。
今日は、風呂なしの普通の宿に泊まる。朝食付きで銀貨3枚もする。もっと安い宿もあるらしいけど、治安が良くないそうです。
夜は屋台巡りの続き、次回のダンジョンの話をしながら宿に戻る。部屋に行くと2人部屋でした……1人部屋なかったのかな?
今日の私の取り分、銀貨5枚を手渡され、預けていた袋も返された。
ジークが優しく微笑んで、
「ねえ、ミーチェ。ダンジョンの稼ぎが、もう少し良くなったらまた、『木漏れ日』に泊まろうね?」
「えっ! ジーク、すっごく魅力的な提案ね。私ガンバリマス!」
「フフ、ミーチェ可愛い」
ジーク、私の扱い慣れてきたわね……
もじもじする……この年で可愛いは、嬉しいんですよ。
「……!」
ん?
夜中、ジークがうなされている……
「……帰らないで……」
ハッとした。
何とも言えない気持ちになり、その後、なかなか寝られなかった。
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