23.諦めない男

「アミ……、悪いな」


「分かっている。謝らなくとも分かっている。だから私の事は気にするな。そして忘れろ」


 マモルはアミに謝罪をし、そしてアミもそれを了承する。

 そしてマモルは一度ユミをおろしてから、龍神の前まで行った。


「決まったか?」


「ああ、決まった」


「一瞬にして決めるとは、端から決まっていた様だな」


「…………」


「さぁ言え! 貴様の選択を私に聞かせろ! どちらかを捨て、どちらかを救う選択を!」


 端からそれを楽しみにしていたと言わんばかりの発言であったが、助けてもらう立場であるマモルはただその選択を口にするだけだった。


「―――アミを助けてくれ」


 その空間は一瞬にして静寂に包まれる。後ろに居るアミも、目の前にいる龍神も、マモルも。


「二度は無い。貴様の願いはそれでいいのだな?」


「―――いいわけあるかぁぁぁぁ!! おいマモル! ふざけるなよ! なんの為に―――ぐッハッ!」


「それであってる。それでいい。だから早くしてくれ」


「……分かった。つまらん選択だったな……」


 そうして龍神は力を使う。その力は覚醒したてのマモルでさえ感知する事ができるほどの膨大な物だった。

 最初から言って、マモルのそれとも、吸血鬼の始祖のそれとも、アミのそれとも、別格の力。―――力の中の力であった。


 それが今、回復に使われていると知っててもなお、恐怖を与える物であった。


 回復は一瞬にして終わる。


「おい……」


 ゆっくりと、その体を持ち上げるアミには、腕がついていた。そしてその一歩で、完治しているとマモルにも分かった。

 そしてアミはマモルの一歩手前までくる。そしてそのまま―――。


 ―――ゴンッ!


 胸ぐらを掴まれ、頭突きを喰らわされた。


「おい……。なあ……。なんで! なんでだ!」


 そこには、幼少マモルと同じように、目から水が零れていた。


「言え! 言え! なんで私を救った! なんでだ! 私を救ってなんの特がある! 君の目的はそこの彼女を救う事じゃ無かったのか? 私なんて君にとってはどうでもいい存在だろ!」


「ああ、お前なんてどうでもいい。くたばろうが、くたばろうが、どうでもいい」


「なら―――」


「前ならそう思ってただろうな。だが分かったんだよ。今日の戦いで―――。俺には心がある。だから、仲間であるお前を助けた」


 しばらくしてから、アミは手を離した。そして、アミは膝から崩れ落ちる。その地面には数滴涙が落ちていた。


「本当に、いいのだな……? 私の事を仲間と呼んで?」


「ああ」


「同仕様もないクズかもしれんぞ、私は」


「命をかけてまで俺の事を助けてくれたんだ。それを仲間と呼ばないのは俺の心が許さない」


「君はもう取り返しのつかない事をしてるのかもしれないんだぞ。そこの彼女の事も」


「それに関しても、大丈夫だ」


「なんでだ! なんで大丈夫と言い切れる!」



 なんで? それをわからす為には、一つの言葉で事足りる。



 何故ならマモルは―――、



 心鬼 守という男は―――、




「俺は、世界一諦めが悪い男だからだ!」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仇を打つ少年の『心』 檸檬 @Remon_need

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ