20.アミの故郷
「終わったのか?」
「ああ……」
ユミの事をお姫様抱っこで抱えるマモルは、見るからに瀕死状態のアミの前に立つ。
顔立ちは若干げっそりしており、明らかに血が足りなさそうに顔を青白くさせる。
更に悪いことに―――、
「―――グハッ!」
地面に血の塊の様な物を吐く。それは生き生きとした赤では無く、体内の奥底から出てきた赤黒い何かに見えた。
「おい! 本当に大丈夫なのか!? もう喋らない方が……」
「いい! 私に構うな。これは私の責任だ。―――それよりも、その少女の事を治せれるかもしれないんだ。その人は何でも治せるからな。運が良ければだがな……」
「本当か! 何処だ? いや、その前にお前の傷の方が大事だろ。おんぶしてやるからもう喋るな」
「私の事は構うなと言っただろ! ゴホッ!」
マモルに強く当たるアミからはまた血が出る。だが今度は手でそれを受け止めた。結果アミの手は血の色で染まる。
「君は君とその少女の事だけを考えればいい。それに、今からそこへ行く。異論は無いな。早く行く事に越したことはない。また取り返しがつかなくなる前に……」
そうして左手でアミは自分の服の内側を探る。
そして取り出したのは一枚の紙切れだった。長方形のそれはチケットの様にペラペラで頼りない。
だがそこに書いてあったのはマモルの読めない文字。文字であるかすらも分からない物だった。
「私に掴まれ。飛ぶぞ」
「また飛ぶのかよ! けど今度はどこに―――」
そうアミの肩に手を伸ばし、肩に手が触れると、合図なしにアミはその地面に置いていた紙切れに手を当てる。するとそれは光出した。
「―――故郷へ」
そのアミの言葉と共に、あたりは一回暗闇へ転じ、そして再び木に囲まれた空間へと戻ってくる。
一瞬何が起きたのか確認出来なかったマモルはユミを地面に寝かせてから一度辺りを見渡す。
先程と変わらぬ光景の様に見えたが、あることが欠けていた。
それはこの場所に神社と鳥居が存在しない事。この二つの事柄がこの場所が先程とは別の場所という証拠になる。
「ここ何処だ……。―――? 人?」
辺りを見渡していたマモルは、目の前から人影が近づいてくるのを確認する。
その人影は影から徐々に人間の姿へと変わってくる。そして、はっきりとその容姿が確認出来る一歩手前まで来た時、その人影は姿を消す。
その代わり後ろから―――。
「良くもまぁぬけぬけとここに帰って来たわね。殺されに来たのかしら? 今なら私がその瀕死の体にトドメを刺して楽にしてあげても良いのよ?」
いつ後ろを取られたのか分からなかった。それの事は吸血鬼の攻撃にでも対応出来ていたマモルの五感が後ろの存在には効かないという証明になる。
まさに後ろの存在が吸血鬼と戦ったら圧勝するレベルにさえ思えた。
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