17.アミの力とその意思

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 マモルの色の無い顔を見た後、アミは悟ってしまった。反抗的な態度を取ってしまった殺られると。実際マモル自身がそう思っていた訳ではない。だがあの時アミは初めて間近で恐怖を感じた。


 自分の後ろに死があると思わされる恐怖を―――。



 ―――時間軸は少し前へと遡る。


 アミはマモルの顔を見て、自分から後方へ下がる事を決めた。だがしかし、それは最低限度である。邪魔にならない所なら最適な所は他にあった。だがここへ来た目的は邪魔をする為でもなく、邪魔になる為でもない。


 戦う為である。


 だがしかし、見ての通り右腕を根元から削ぎ落とされたアミには立つことも歩くこともやっとの状態で、体を大きくねじる動作は不可能であると自分自身がよく分かっていた。


「くそっ、血を出し過ぎた………」


 地へ腰をつけると同時にアミは自分の体に愚痴をこぼす。地面の土はやけに冷たく感じる。原因はアミの体にあった。切られたことによる発熱。それが一層アミの脳にダメージを与え、頭の回転を悪くさせる。


「光……。私は光が無ければ無能だ……。逆に光があれば戦える……。だが最初の時……、あの炎の光のエネルギーを吸取れなかったの何故だ?」


 口に出した所で誰かが答えてくる訳ではない。だが現在正常に動かない脳内でその事を反復させても負荷をかけるだけと思ったので敢えて口に出す。


「分かっている……。一度反応したのは分かっているんだ……。一度……。まずい……、目の前が……、一度……、エネルギーが……」


 独り言の音量は徐々に小さくなっていき、弱く、脳が正常に動いていない様を表していた。だがアミは一つの言葉が頭に引っかかっていた。そしてその言葉を今度は脳内で反復する。


『一度……反応した』


「―――ガッ!」


 掴めそうと思った瞬間、脳の限界が訪れる。限界が訪れてからアミの考えは確信に変わる。

 そう、分かったのだ。何故エネルギーが吸取れなかったのかを。


「フンッ―――!」


 ここで本当に気絶してしまったら、ここへ来た意味が無くなる。そう感じたのだろう。考えるより先に体が動く。


 アミは自分の頭を地面に叩きつけた。それは一回だけではなく、二回、三回と続く。そして何回か叩きつけた後、ようやくそれは止まった。

 頭からは血が数滴垂れる。頭から血が垂れてしまえば多くの者は体が怠くなり、やがて気を失う。だがアミの場合、この場合に置いては逆だった。


「はぁ! そうか! 一度だ! 一度なんだ! つまり私が狙うのはその一瞬! なんて、無茶なんだ……」


 テンションが上がったり下がったりをする。タネがわかった事に対して喜びを出すが、そのタネがあまりにアミにとって不利な物である事に絶望に似た気分になる。

 だが絶望では無い。力になる可能性がアミにも出来たからだ。


 竜人であるアミの力は二つ。


 一つは、光を浴びる事によって力が強くなるもの。これは光の大きさ、または光を構成するエネルギーの大きさに応じて変化する。つまり暗闇の中に居る現在のアミの力はただの人間以下である。

 もう一つは、光エネルギーを吸ってそのままエネルギーを自分の物にするもの。貰い受けたエネルギーは使い方さえ知っていれば、知っている効果に自由に変換させる事が出来る。


 アミが活躍出来るのはもう一度吸血鬼が自身のエネルギーを使って攻撃をする時。

 そうしてアミはその時に対応出来るように視野を広くする。


「―――! マモルが吸血鬼と互角にやりあってる……!?」


 それは吸血鬼とマモルが殴り合っている所だった。正確に言えば、


「いや、吸血鬼の攻撃をマモルが防いでいるだけだ。全然マモルから仕掛けようとしていない……。やはり、止めるしか……」



 ……………そしうして……………



「……………今私が持つ3つの力を練る。膨大な力故、少し時間が掛かるが貴様は動けんよなぁ。もし攻撃をしたら殺されると分かっているから」


 吸血鬼がマモルと距離取り、力を練る態勢に入る。


「―――取る!」


 アミも同じくエネルギーを吸い取る態勢になる。

 アミの勝利は一瞬を制した時に決まる。一瞬、ほんの一瞬のスキに全てのエネルギーを吸い取る事はアミの性格上困難な行為であった。

 だが今はやけに目が冴えている。流れる風の動きも、その風に揺られた草木も、その全ての雑音がアミの耳に入らなくなる。


 集中しろと、言葉に出さなくとも、頭の中で反復せずともそれは今成し遂げられている。今はただエネルギーを取ることのみ。

 そうして、吸血鬼の右手から闇より黒い球体が生成される。

 アミの力は光からエネルギーを取る。それが闇より黒い物だとすると………。


「違う……。光ってなくとも必ずエネルギーは存在する筈……。来い―――、来い―――、来い―――。―――! ……来た! エネルギーを変換しろ! 自分の回復に使うな。全て吸血鬼に向けて使え。自分が襤褸を出したんだ。甘えるな私!」


 その一瞬をアミは制した。一瞬を制したアミは奪ったエネルギーを一つの効果に変換する。勿論エネルギーを取られた吸血鬼も取られた事に気づく。


「力の源が吸い取られる……。―――! リュウジン! やってくれた―――ぅなッ! う、うごけ……ない……!」


 一瞬のすきにアミは力を使う。それは奇襲の為にもなったが、最もな理由はそこではない。

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