*書籍発売記念* 4


※こちらは本文とは関係のないただ二人がイチャイチャするだけのお話


*** *** *** ***


 洗い物が終わると、ユリカちゃんはソファーに座って俺に手招きをする。なんだろう?

「ゆうくんごほうびの時間ですよ〜」

 ユリカちゃんは俺をソファーに座るように促すと、自分の膝をぽんぽんと叩いた。

「膝枕でゆっくり食休みしてね」

 俺はなされるがまま、体を横にする。ユリカちゃんの膝に頭を乗せて横向きに寝転がる。ユリカちゃんの少し甘い匂いがしてとても心地がいい。

「どう?」

 と感想を聞かれるとちょっと困る。

 本音を言えばふわふわで暖かくて最高に気持ちがいい。けど、ふわふわだなんて言ったら太っているとかそういう風に思うだろうか?

「うぅ、いや?」

「そ、そんなことないっすよ」

「じゃあ、気持ちいい?」

「は、ハイ」

 ユリカちゃんは俺の答えに満足したのか俺の髪を優しく撫でる。なんか、日向ぼっこしている猫になった気分だ。絶妙な力加減がとても心地いい。

 眠ってしまいそうだ。

「今日一緒につくったお料理美味しかったね〜」

 ユリカちゃんは穏やかな声で言った。確かにアジの南蛮漬けめっちゃうまかった。さっぱりで甘酸っぱいのに白米に合う。しかも栄養もたっぷりでカロリーも低い。

「一緒に作ると百倍美味しいね、ゆうくん」

「そうっすねぇ」

「次は何を一緒に作ってくれる?」

 さっき食い終わったのに次の話をするあたりユリカちゃんらしいな。食い意地が最高に張っていやがる。

「カロリー低いやつ?」

「そ、そうだった。私ダイエットしたいんだった」

 恥ずかしかったのかパシパシと俺の肩あたりを叩いてキャッキャッと一人で盛り上がるユリカちゃん。

「ダイエットなら一緒にお散歩とかどうです?」

「おさんぽ?」

「はい、食事制限と適度な運動していればそんな太らないと思いますし⋯⋯、それに」

 ユリカちゃんが「?」と喉を鳴らす。

「俺はちょっとぽっちゃりくらいが好きだったりします」

 自分で言ってみたものの、恥ずかしくなって俺は脱ひざまくらして起き上がる。いや、ちょ、女性に向かって俺は何言ってんだ⋯⋯!

「いや、その⋯⋯ユリカちゃんがぽっちゃりとかそんな風にいってるんじゃなくって!」

 ユリカちゃんは全然ぽっちゃりじゃない。胸が大きいせいでそう見えるがかなりの痩せ型だ。女性からみても男性から見ても「憧れに近いスタイル」だと思う。

 正直、俺としてはなぜユリカちゃんがダイエットしているのか理解にかけるほどにだ。

「ゆうくん、私の体型は⋯⋯好みじゃない⋯⋯?」

 ユリカちゃん、ちょっと涙目になって俺に言った。

「いや、ユリカちゃんが好みです」

 即答する俺、ユリカちゃんはちょっと不満げに頰を膨らませる。

「それって、私のことぽっちゃりって言ってる?」

 まずい、詰みである。

 こ、これはなんて答えるのが正解なんだ⋯⋯、クソッ俺が女慣れした陽キャだったらここをどうやって切り抜ける⋯⋯?

「ゆ、ユリカちゃんはぽっちゃりではないけど、ユリカちゃんが好きです」

「ふ〜ん」

 ユリカちゃんはジト目で俺のことを見ながら口を尖らせる。わかってます⋯⋯、矛盾してます。でもホンネです。ハイ。

「嘘つきのゆうくんにはお仕置きだからね」

 ユリカちゃんは眉をくいっとあげるとニマニマする。これは悪いことを考えているときのユリカちゃんだ。

「えっ?」

「30秒抵抗禁止だよ」

「ええ?」

 ユリカちゃんはソファーの上に膝立ちになると両手を立ち上がるレッサーパンダのようにあげてニヤリと笑う。

「こしょこしょの刑!」

 というとユリカちゃんは一気に俺を押し倒して脇腹や横腹をくすぐってくる。ユリカちゃんの細くて長い指が絶妙に⋯⋯くすぐったい。

「やっ、ユリカちゃんたんまっ」

「だめ〜! こしょこしょ〜!」

 身をよじる俺を見て満足げなユリカちゃんは攻撃を続ける。俺はしばらくユリカちゃんにされるがまま。

 30秒の我慢だ、頑張れ藤城!

「ゆうくんはいけない子〜、ほれほれ〜」

「わっ、ユリカちゃん首はっちょっ、あははっ」



 こしょこしょの刑が終了し、ユリカちゃんは寝転がった俺の胸を枕にするように上にのしかかると「ふぅ」とため息をついた。

「重い?」

 ちょっとずっしりします。と言いたかったがここの正解はわかる。

「重くないです」

「ふふっ、じゃあこのままゆうくんの心臓の音聞きながら寝ちゃおうかな」

 全体重プレスで数時間はひょろひょろ系もやし男子にはきつい。

「どうぞ」

 それでも見栄を張って俺はユリカちゃんに答える。

「じゃあ、ちょっとお昼寝」

「お昼寝の時間じゃないっすよ」

「いいの」

 ユリカちゃんは本当に俺の胸に耳を当てて、そのまま目を閉じた。すごく綺麗な寝顔が目の前にあって俺はドギマギする。

「すぅ、すぅ」

 ユリカちゃん、遊び疲れた子供のように秒で眠ってしまう。

(あぁ、俺もちょっと眠くなってきたかも)


 俺の体がバッキバキになって起き上がれなくなるまで数時間、少しだけ幸せな時間をすごした。




***


書籍発売記念 全4話 お読みいただきありがとうございます!

この度 続刊が決定し2巻の発売が夏頃になります!

(ちなみに2巻は木内さん回になる予定ですのでウェブ版も木内さんIFルートSS等 掲載を考えております!)


引き続き「ぽんこつかわいい間宮さん」をお楽しみいただけますと幸いです!

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