*書籍発売記念* 3
※こちらは本文とは関係のないただ二人がイチャイチャするだけのお話
*** *** *** ***
「何ができるかなぁ〜」
ユリカちゃんはアジをさばき終えるとご機嫌な様子で手を洗っていた。俺はキッチンの引き出しをひっくり返す勢いであるものを探していた。
「ゆうくん?」
「ちょっと待ってくださいねぇ」
ユリカちゃんが可愛いエプロンで手を拭いて、俺の方に近寄ってくる。その距離はゼロ距離。ち、ちかっ。
ユリカちゃんの距離にドギマギしているとひんやりとした感覚。俺が探していたものだ。
「あった」
「……? 毛抜き……?」
ユリカちゃんはお預けをくらった犬のように首をかしげる。
「骨を抜くやつですね! まぁほぼ毛抜きです」
俺は骨抜きを手にとってユリカちゃんが綺麗にさばいたアジと手にとった。
「さっき勉強した場所にある小骨を……よっと!」
「おぉ!」
ユリカちゃんが目を輝かせる。
「こうやってユリカちゃんが困らないように手間暇をかけると……」
俺がまた骨を抜く。ユリカちゃんが胸の前で小さく拍手して喜ぶ。
「大きなお口で魚をガブってできますね」
「ゆうくん、ありがとう!」
「俺がとってる間にパプリカの下準備お願いしていい?」
ユリカちゃんは色鮮やかな赤と黄色のパプリカを手に取ると「はいっ」とにっこりした。
***
「おいひぃ〜!」
がぶっと大きな口でアジの南蛮漬けにかぶりついてユリカちゃんはほっぺがおちるんじゃないかというくらいに笑顔になる。
我ながら上出来。アジはサクサクだけど中はジューシーで、パプリカと玉ねぎはさっと素揚げしたことで彩りも鮮やかに……。
甘酸っぱい南蛮ダレが最高に白米をそそる。
「ユリカちゃん骨は? 大丈夫?」
「うんっ! ゆうくんのおかげでたくさんもぐもぐできるっ」
ちょっとお行儀は悪いが、アジと白米を一緒に口に入れるユリカちゃん。お店ではちょっとできないけど……家だとこういう食べ方最高だよな。
こんな風にちょっとお行儀が悪いところも俺の前ではしてくれるのってちょっと和むかも……。
「ゆうくん、あんまり見たら恥ずかしいよ」
ユリカちゃん、気がつけば顔を真っ赤にしてる。
「あ、ご、ごめん」
「ゆうくん、疲れてるの?」
「ちょっと肩はこったっすね」
「どうして?」
「ほら、骨抜くのに集中してたんで……」
「そっか……」
ユリカちゃんはごくんと飲み込むと何やら考え事を一瞬してにんまりと含みのある笑顔になった。
「ど、どうかした……?」
「ふふふ、ゆうくん。今度は私がゆうくんにご褒美あげる番だね!」
ユリカちゃんはパプリカをパクッと食べると綺麗に付け合わせのほうれん草まで食べ終えて手を合わせた。
「ごちそうさまでした」
俺も釣られるようにのこった白米を口に入れて、お茶で喉に無理やり流し込んだ。
俺は洗う担当でユリカちゃんは食器を拭く担当。というのもユリカちゃんは手指の皮膚がちょっと弱い。洗うのは好きだというがすぐにあかぎれになってしまうのでこの配役だ。
「ゆうくん、次はまだですか〜」
「ちょっとお待ちを」
「あっ、ゆうくんの袖」
「ん?」
と俺の脳が追いつく前にユリカちゃんは俺の後ろに立ってバッグハグをするみたいに後ろから手を回して来た。
妙に密着しているせいで背中に大きな柔らかい感触がして不覚にもドキドキしてしまう。
ユリカちゃんは胸が邪魔して動きにくいのかぎゅうぎゅうと押し付けるようにして俺の腕に手を伸ばし……
「動いたら濡れちゃうから……ゆうくんじっとしててね」
ユリカちゃんは俺の腕にそっと手を伸ばしてくるとクルクルと袖をまくっていく。こそばゆいような恥ずかしような……。
「よしっと、これで安心ね」
「あ、ありがとう」
「ゆうくんまっかっか〜!」
「んなっ」
俺はざぶんと水を出すと洗い終えた皿の泡をすすぐことに専念し、こっそり冷たい水で熱くなった体を冷ますことに専念した。
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お読みいただきありがとうございます!
書籍発売記念ストーリーは次話で最後になります!
もう少しだけお付き合いいただけると幸いです
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