*書籍発売記念* 2 

 ※こちらは本文とは関係のないただ二人がイチャイチャするだけのお話


*** *** *** ***


「骨……確かにあれは大変でしたねえ」


「ううっ、恥ずかしい」


 ユリカちゃんは顔を真っ赤にして俯いた。俺は大体どの魚がどんなところに骨があるのかを料理をする上で知ってるから食べる時も苦労しないが……。


「ゆうくん、お魚食べるの上手だったよね?」

「上手ってか、魚はすきっすねぇ」

「じゃ、じゃあさ! お魚修行! してほしい!」

 ぎらっぎらに目を輝かせるユリカちゃん。

 さっきまでのしょんぼりはどこへやら、ユリカちゃんのこういうクソポジティブなところは本当に尊敬する。

「ダイエットと……それから」

 ユリカちゃんはもじもじと人差し指を突き合わせて真っ赤になる。


「いつか、私がお母さんになったときに……教えてあげたいなって」


 必殺上目遣い。

 ユリカちゃんと暮らすことになってかなり時間が経ったけど、いまでも俺を瞬殺するこの必殺技。


「厳しい道になりますよ」

「ふえっ……?」


 俺の言葉にユリカちゃんは首をひねった。


「おいしい、おさかな……じゃないの?」

「おいしいお魚ですよ」

「じゃあなんで厳しい……?」


 俺はスマホをタップしてある画面を見せる。


「魚を上手に食べるのにまず必要なのは……これっす!」

「わぁっ!」

 

 ユリカちゃんはスマホの画面を見て目をつぶった、


「ち、ちがぁ!」

「そうです、まずは魚を3枚に下ろしてどこにどんな骨があるかってのを理解しましょう!」

「えぇ……お魚さん……」

 ユリカちゃんはぎゅっと近くにあったクッションを抱きしめた。


「ゆうくんのいじわる……」


***



 最初、生の魚をさばくと言った時、可愛く困惑していたユリカちゃんだったが実際にキッチンに立ってみると勇敢である。

 

「こ、ここですか?」

「はい、ここからここまでを切ってみて」

 ユリカちゃんの後ろに俺が立つ形で見守る。といってもユリカちゃんの胸でほとんどまな板が見えない。

「で、内臓を取って洗いましょう」

「内臓は食べられないの?」

「そうっすねぇ」

 ユリカちゃんはキモいとか触りたくないとかそういう反応はせずざっと手際よく魚の内臓を洗う。

 なんか……ギャップ萌えってやつを感じた気がするな。


「なんとか3枚になったっすね」

 綺麗に3枚になったアジを見てユリカちゃんは目を輝かせる。さっきレシピでみたやつだ!とエプロン姿のまま飛び跳ねた。

 可愛いけど出刃包丁もったままなので危なっかしい。

「ゆうくん、私、才能あるかな」

「あると思います」

「ゆうくん、ゆうくん」

 ユリカちゃんはぐっと子犬のように頭をこちらに寄せてくる。

「ん?」

「褒めて欲しいです!」


 ちょっとジト目の上目遣いでユリカちゃんは言った。

 包丁もったままなのは気になるが……


「す、すごいっす!」

 ユリカちゃんはぷくっと頬を膨らませる。フグみたいだ。いやいや、そうじゃなくて……。

「え、えっと……」

 困惑する俺にユリカちゃんは迫ってくる。包丁持ってるからちょっと怖い。な、なんだっ。

「た、たまにはヨシヨシしてほしいです」

 ユリカちゃんはめっちゃ小さい声でこういうと俺の手のひらをじっと見つめた。

「3ヨシヨシっ」

———????


 俺はそっとユリカちゃんの頭を撫でる。

「3?」

「3枚に下ろしたので3ヨシヨシです」

(3ヨシヨシとは……?)

 と困惑しながら俺は3度ユリカちゃんの頭を撫でる。

「ふふふ〜、もう一匹を3枚にしたらもう3ヨシヨシ〜」


 ユリカちゃんはルンルンでもう一匹のアジを手に取るとまな板に寝かせた。




*** *** *** ***


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る