*書籍発売記念* 1 

 ※こちらは本文とは関係のないただ二人がイチャイチャするだけのお話


*** *** *** ***


 お腹いっぱい食べた、風呂も入った。あとは晩酌でもして寝ようかな?と思ってた時のこと。ぺちゃぺちゃと顔に何かを塗っていた化粧水だろうか。


「ゆうくん! 大変です!」

 敬語の時はかなり焦っている時だ。

 ちなみに甘えている時はお姉さんぶってくる。

 

「ど、どうしたっすか?」

 俺はまだゆっくりしたい腰を上げてユリカちゃんの隣に座る。三面鏡に映る綺麗な顔。しかし、ユリカちゃんは困り眉のまんまである。

「みてみて……」

 ユリカちゃんが俺の方に振り向くと顔を近づけてくる。

「あっ、でもやっぱり見ちゃダメっ!」

 と理不尽に俺は突き放される。いったい、どうしたってんだ。

「ど、どうしたの……?」

「だってだって……」

 ユリカちゃんは俯くと小さな声で言った。

「出来ちゃった」

———俺はその言葉を聞いてピンと背筋が伸びた。え? まさか?な?


 ユリカちゃんは下唇を噛んだままぐっと眉間にしわを寄せると、ふわっふわのパジャマの裾をぎゅっと握る。

(へ?)

 俺は予想している言葉と真逆のユリカちゃんのリアクションに困惑する。

「これが……」

 ずずっとユリカちゃんがにじり寄ってくる。俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

「ニキビが……」

 めちゃめちゃ小さい声で思わず聞き変えてしてしまった。

「だからっ……ニキビですぅぅ!ニキビができたんですぅ!」


 俺は拍子抜けして後ろにすっ転びそうになった。

 俺の覚悟返して……。

「だってだって! ゆうくんと一緒に美味しいご飯ばっかり食べてたらほら!」

 ユリカちゃんは前髪をばっとあげる。綺麗で形のいいおでこには大きな真っ赤なニキビ。

 痛そう。

 俺も思春期のころにいくつかできたことがあるが痛いんだよなぁ、あれ。

「わ、痛そうっすね」

「いたいの〜」

 え〜ん、とジェスチャーをしてそっとニキビに触れて「いたたっ」とベッドに仰向けになる。

「しばらくはさっぱり系にしましょうねぇ」

 俺の言葉に目を潤ませるユリカちゃん。

「お魚の天ぷらは?」

「だめっすね」

「じゃあ串カツは?」

「だめ」

「ええ〜! じゃあ唐揚げは!」

「だめ」

「何を食べたらいいのよぉ〜、ゆうくんのいじわるっ」

 俺の胸をぽかぽか殴りながらユリカちゃんは涙ぐむ。こう考えるとユリカちゃん、意外と男子中学生みたいながっつり飯が好きなんだよなぁ。昨日も重めのラーメン食べたっけ。

「さっぱりって? どんなの?」

「う〜ん、和食とかっすかね? ユリカちゃんが好きなのなら和風ハンバーグとか」

「好き〜!」

 途端に目を輝かせて俺に抱きつくユリカちゃん……。ちょろすぎる。

「塩サバとか」

「えっ……でもアレは……」

 ユリカちゃんがむぅと口を膨らませた。



——数ヶ月前——


「わぁ! 今日はサバ味噌だっ」

「脂がのってて最高だって魚屋のおっちゃんにいわれてつい」

「ゆうくん主婦さんですね!」

「せめて夫のほうで……」

「夫になってくれるの?」

 俺は思わずドキっとする。

「あはは〜、ほらそういうのはまだ先っすよ」

「私はいつだってゆうくんのお嫁さんになりたいんだよ?」

「ほら、冷めちゃうっすよ!」

 ユリカちゃんは口を尖らせて「お嫁さん」と言いつつも箸で大胆にサバ味噌を掴むと

——パクっ!

 まるで唐揚げでも食べるみたいにかなり大きな一口で、サバ味噌の半分がユリカちゃんのお口の中に入った。

「ん〜〜〜おいひいぃ〜」

 なんて言いながらアッツアツの白米を口に放り込んでごくん。幸せな表情でユリカちゃんはワカメの味噌汁を持ち上げた。

 俺はユリカちゃんの美味しそうに食べる顔が可愛くて自分の箸が止まっているのにも気がついていなかったと思う。

 しかし、ユリカちゃんの顔がどんどん青くなる

「ゆう……くん」

「ユリカちゃん?」

「のど……いたい」

「へっ? 詰まった? ほらお水」

「ちがっ……喉にホネ」

「はぁ??」

「いっ、いたいっ!」

「救急車呼びます!」

「ううう〜〜死んじゃう〜〜!」


 それからは救急車に乗って病院へ行き、女医さんから

「あら、さっき実は5歳の子も骨取りしたのよ〜」

 なんて言われて流石のユリカちゃんも真っ赤になったのだった。


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