第33話 久々のランチデート!(1)
「藤城さんっ、行きましょう! あっ、三木くんはお留守番ですよ〜、邪魔しないでくださいね〜」
「えぇ! 俺も藤城部長とランチ行きたいっす!」
イケメンと美女の攻防。
いや、普通間宮さんを取り合って俺と三木くんが攻防するのでは……なんで俺が取り合われているんだ。
俺は脳内で「俺のために喧嘩をしないで!」とバカな演技をする自分を想像して吹き出しそうになった。
「今日はSNS投稿の日なんですから藤城さんと一緒なんです!」
「えぇっ、俺は広報みならいなんだし一緒に行くっす!」
「まぁまぁ……」
「ゆうく……藤城部長が決めてください〜!」
ユリカちゃんが可愛く眉間にしわを寄せる。
「お、俺……絶対に藤城さんの役にたちますからっ!」
三木くんがキラキラした瞳で俺を見る。眩しい、イケメンだ。
「アリス、おなかっへたぁ〜」
片言の日本語に助けられて、俺は三木くんを見てにっこり。
「三木くん、アリスくんの世話よろしくな。今日、木内さんが外出で1日いないからさ」
「ふぇぇ〜、ひどいよ〜」
三木くんは眉を下げる。なんだこの綺麗な顔は……。
「さっ、藤城さんっ。いきましょ!」
ユリカちゃんはなぜか勝ち誇った顔で俺の前をずんずんと歩いていく。普段は俺とのランチ戦争に相馬さんも加わっているがあの電話以降あまり積極的には絡んでこなくなった。
う〜ん、まあ仕事がちゃんと回って入ればいいのか。うん。
***
予約席に通された俺たちは目の前にある小さいBBQセットに心を踊らせていた。しかも、テーブルの端っこには……ソーセージメーカー!
夜は焼肉店ということもあって席は半個室でプライベート感もたっぷり。こういう人の目を気にせずかぶりつける空間って社会人的には重宝したりする。
ありがたい。
「わくわくするね、ゆうくん!」
「ユリカちゃん、写真写真」
今日は会社用のSNSにあげるので偽物さん用の写真は取らない。代わりに俺がカメラマンになってユリカちゃんと一緒に写真をいくつかとった。
「ゆうくんはさすが……ハーブたっぷりのヘルシーラムソーセージ」
俺の手元にあるひき肉にはたくさんの香草が練りこまれていてすでにいい香りを放っている。
「ユリカちゃんは……カレー粉たっぷりスパイシーソーセージか」
「えへへ〜、今すぐ食べちゃいたいですねぇ……」
ユリカちゃんの目がハートになったみたいに潤んだ。ユリカちゃんはこういうおつまみ的なもので辛いものが大好物である。
「にんにく控えめなのは社会人に優しいランチだよねぇ」
ユリカちゃんはソーセージメーカーにお肉を詰めながらぽやぽやと語る。完全に浮ついてやがる。
「ユリカちゃん、俺がやりますよ」
「え〜、半分こがいいっ。私がお肉をぐるぐるするからゆうくんはねじねじして!」
おぉ、半分以上擬音だ。まぁ言わんとしていることはわかる。
「じゃあ、ユリカちゃんがぐるぐるね」
「は〜い、行きますよ!」
ユリカちゃんがぐるぐるとソーセージメーカーのハンドルを回す。うにっと押し出されたひき肉は本格的な羊の腸が受け止め、俺が加減を調整する。
「ユリカちゃん、長さは?」
「長め」
「了解っ」
フランクフルトより少し短いくらいのソーセージが合計で6本。
「こういうの、共同作業っぽくてデートには最適だねぇ」
ユリカちゃんは網の上に転がったソーセージたちを見てにんまりする。少しだけBBQセットのせいで熱いからかユリカちゃんの首元に汗が滲んでいた。
「ユリカちゃん、一応これは仕事っすよ」
「むぅ……でも休憩中だから……ちょっとくらいラブラブしてもいいじゃんっ」
と、向かいに座っていたユリカちゃんが隣に座ってくる。近い。
「えぇ……ほら、もうすぐやけますよ〜」
俺がアピールを無視したからか、ユリカちゃんはぎゅっと胸を押し当てるように俺の腕に抱きついてくる。
人の目がないとはいえ、今は真昼間で近くにはたくさんの人がいる。
「ゆ、ユリカちゃんっ」
「離してほしくば、あ〜ん! をしてくれると約束するべしっ、べしべしっ」
わがままユリカちゃんの登場である。可愛い猫みたいにちょっとつり目になっているところももはやアニメである。
「わ、わかったから、ほ、ほら焼けないから離れてっ、なっ?」
「約束ですよ! あぁ〜〜焼けるの楽しみだなぁ〜〜」
ジリジリ……ソーセージの焼ける音、付き合っているはずのなのに俺は死ぬほどドキドキしてる。
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