第31話 彼氏の特権?(1)


 とある休日、ベッドに寝転がったままのユリカちゃんが言った。


「ゆうくん〜、お助け〜」


 俺はキッチンに行って75度くらいのお湯を湯たんぽに詰めた。ふわふわの袋に湯たんぽを入れて、ユリカちゃんの好きな香りのハーブティーを淹れる。


「ううう」


 こっちまで聞こえてくる唸り声に俺はゾワっとする。ユリカちゃんは仕事があれば無理して働くしスーツも着る。でもアレは男の俺からすると正直働くことなんて絶対にできないと思う。


「ユリカちゃん、飲めますか」


 湯たんぽをお腹に抱き込むように受け取ったユリカちゃんは「ありがとう」と弱々しく言った。


「男の俺にはわかんないんで…なんでも言ってくださいね」

「なんでもぉ?」

 クマのできたユリカちゃんが悪い顔になる。

(あ、まずい)


「じゃあ、まずはぎゅうしてください」

「へ?」

「ぎゅうですよ、ぎゅう」

 可愛いピンクのパジャマ姿のユリカちゃんは小さくてを広げる。俺はハーブティーをサイドテーブルに置くとベッドに腰掛けてユリカちゃんの背中に手を回した。

 って……いうか俺が抱きしめるんじゃなくてユリカちゃんが俺を抱きしめていた。

「ゆ、ユリカちゃん?」

「なぁに?」

 ユリカちゃんは俺の頭を豊満な胸に抱き込み、するすると俺の頭を撫でる。

——普通逆!!!

 女子の日で苦しんでいる彼女を暖かく包み込むのが俺の役目じゃないのか……

「よしよしですよ〜」

 やばい……これは酔ってる時のユリカちゃんよりくるってる。


「ゆうくん、次のお願いきいてくれますか?」

「へえ?」

 ユリカちゃんの胸に抱かれてた俺は突如として起き上がらされた。ユリカちゃんは具合が悪そうなのにいらずらっぽく笑っている。

「ユリカちゃん、ゆっくりしていたほうが……」

「えぇ、ゆうくん。お願い聞いてくれないの?」

「いや、はい。聞きます」


「次は〜、ちゅうです」

「ユリカちゃ……んぐっ?!」

 きゅっとおしつけられた柔らかい唇。ツンとしたハーブティーの香り。

「ゆうくんは甘えたさんですね」

「それはユリカちゃんじゃないっすか」

 必殺、上目遣い。

 この人すっぴんだろうが寝起きだろうが顔がいい……、理不尽!


「でも、今日は映画館いけなくてごめんね?」

 そう、今日は映画デートの予定だったんだ、すっかり忘れてた。

「映画はいつでもいけますから大丈夫、体は平気っすか?」

「うん、だって」

「だって…?」

 ユリカちゃんは弱々しくほほえむと俺の手をぎゅっと掴んだ。


「赤ちゃんを迎えるための練習ですから」


 ぽすっと俺の胸に頭を寄せてきたかと思うとユリカちゃんは俺の胸元に頬ずりをして

「少し寝ます」とつぶやいた。


 中学生、女子っていうものに絶望していた俺が今の俺を見たらびっくりするだろうなぁ。超絶美人の可愛い彼女が俺だけの前ではすっぴんでこんなにも弱い部分を晒して……おまけにちょっと重くてわがままで……


「えへへ、ゆうくんより先に食べちゃうもん」


 むにゃむにゃ、

(ユリカちゃん夢の中でもなんか食ってるよ……)



*** ***


更新が止まってしまい申し訳ないです!

時間ができたら少しでも更新するようにいたします・・・!

引き続きお楽しみいただけると嬉しいです

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