第27話 義姉さん(1) 間宮さん視点


「で、でかいっ・・・」


 マリコさんの大きな二つのメロンを見て私は思った。圧倒的な圧。強い、強すぎる!

 スペシャルな日のあわあわ入浴剤はバラの香り。義姉さんは浮かない顔。この人はいずれ私のお姉さんになる人。

 そう、私が夢にまでみた家族だ。


「本当はね、ゆうちゃんやユリカちゃんを心配にさせたくなったの。だから、ごめんね」


 マリコさんはそういうと困ったように眉を下げた。


「いえ、勉強になります」


 私の言葉にマリコさんは困った顔のままで微笑むと「ごめんね」と謝った。義姉さん夫婦は憧れの夫婦だ。


「私ね、旦那にひどいこと言っちゃった。もう、仲直りできないかもしれない」


 言葉のはしばしが揺れる。マリコさんの口角は下がり涙が瞳に浮かんだ。私はそっとマリコさんの細い肩に手を伸ばす。私より少し年上の頼り甲斐のあるマリコさん。震える肩がやけに小さく感じた。


「なにがあったんですか・・・?」


「私ね、もともと商社に勤めてたの。えっと、そうねぇ。私の昔の同僚たちはみんな海外に駐在して貿易の仕事とか、そういうのしてる」


 ゆうくんから聞いた。マリコさんはゆうくんたちよりもいい大学をサクッと出て超一流企業でバリバリのキャリアウーマンだったって。


「今、少しお店の売り上げがよくなくて。私も旦那もイライラしてて。それで、気がついたら言ってた。『あなたのために大好きな仕事を辞めたのに』って。そんなこと思ってなかった。私の子供の頃の夢は、大好きな旦那と一緒にお店をやることだったのに」


 マリコさんは涙を流すように湯をすくって顔にかけた。

 結婚をして、ずっと一緒にいると思ってなくても相手を傷つけようと言葉がでてしまうのかな・・・。


「そしたらね、いつもは言い返してくるのにあの人、ごめんって」


 私は、ゆうくんと一緒にいてそんな風に思ったことはまだない。どちらかと言えば、ゆうくんが他の子に取られないか、とか私がゆうくんの好みになれているかとかそういう不安はある。

 でも、ゆうくんを傷つけようなんて思ったことがない。


「私と旦那はね。子供の頃から一緒の幼馴染だからなんでも言い合える仲だって思ってた。でも、結婚してもどんなに愛していても言っちゃダメなことってあるんだって、あの旦那の顔見てわかったの」


 大丈夫、きっと今頃ゆうくんが義兄さんと話しているはずだ。私にとっても大事な兄と姉になる人。私だって力になりたい。


——ゆうくんだったらどうやって考えるだろう?


 きっとゆうくんならまず聞くんだろう。マリコさんの希望を


「マリコさんはどう・・・なりたいですか?」


「もちろん、あやまりたい」


 マリコさんは本当に義兄さんのことが大好きなんだな。私まで胸がキュンとした。


「あの、いいこと思いつきました!」


 マリコさんは私の提案に目を丸くする。でも、嬉しいのか私の目の前の大きなメロンたちが揺れる。


 ゆうくんならきっと解決できる。

 私は、私ができる方法で二人を仲直りさせてみせるんだ!


 二人が喧嘩した原因、それはお店の売り上げが悪くってイライラしちゃったこと。お店の売り上げが良ければこうはならなかったんだ。私のSNSを使って二人のお店の美味しいご飯を紹介すれば・・・きっと。


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