4 間宮さんと倦怠期??
第25話 襲来(1)
今日のサテライトオフィスはすごくいい匂いがする。なんだろう、女性陣がきらびやかな気がするのは俺の思い違いだろうか?
いつもはシンプルなスタイルの木内さんも華やかな色使いのスーツスタイルだし、相馬さんも珍しく巻き髪でいつも以上にキラキラしたメイクだ。
そんでもってデスクで足をぶらぶらさせている留学生アリスはなんと職場でロリポップ的な飴をぺろぺろ。甘い匂いが漂っている。
「ねえボス、アリスのお仕事は?」
お前にお仕事は渡せないんだよなぁ〜〜。14歳だし?? いや、先方もなんでこんなやっかいな感じになっちゃったんだろ??
と思いつつも俺たちには全く身近ではないがアメリカでは「飛び級」ってのは普通に存在するものらしい。そして、14歳から働くことが許されるらしい……。さすが自由の国!
「えっと、じゃあアリスちゃんはどんなことができるのは教えてくれるかな」
アリスちゃんはお人形のような綺麗な顔で
「アリスはエンジニアよ?」
と言った。
いや、エンジニアかい。マーケティングとかそっち系だと思ったら全くそうじゃなかったらしい。
「そ、そうなの?」
「ええ、日本は素晴らしいエンジニアがたくさんいるって聞いたわ」
——そうなの? アメリカの方がすごくないか?
「ボスも優秀なエンジニアだって聞いたし……それに私、カメグラも好きだしいいインターンだと思ったの」
そこはティーンエイジャーなのね。
「それにそれに、日本の可愛いアニメとかキャラクターが大好きなの」
アリスちゃんの子供らしい一面にユリカちゃんも笑顔になる。留学は半年ちょっと。たくさんこの国で楽しんでほしいと思う。
「じゃあ、アリスちゃんにはこのインターンの間に何か制作物を作ってもらおうか」
俺の言葉がうまく伝わらなかったらしくアリスちゃんは木内さんの方を見る。木内さんは流暢な英語で通訳してくれて、アリスちゃんは笑顔になる。
「なんでもいい?」
「いいよ、ゲームでもウェブサイトでもそれこそカメグラみたいなSNSでも。そうだなぁ、まずは企画からやってみよう」
アリスちゃんは「任せて」と微笑むとPCを立ち上げる。
「木内さん」
俺が木内さんを呼ぶと、木内さんはいつもとは違って目を泳がせる。どうしたんだろう。具合でも悪いのかな。
「業務の合間で大丈夫だから日本式の企画書の作り方アリスちゃんに教えてあげてくれるかな」
「わ、わかった」
木内さんがあまりにも顔を赤くするから俺もアリスちゃんも心配そうに彼女の方を向く。
「ミコ?」
「あ、アリスちゃん。会議室でやろっか」
「うん、いいけど……ミコ顔が真っ赤よ?」
「木内さん、具合が悪いなら……」
「大丈夫です!」
おおお、大丈夫なのね。ならいいけども……。
「藤城さん、ご相談が!」
と元気よく手を挙げたのは三木くんだ。今日も元気、イケメン、爽やか。そして、三木くんが手をあげると……
「上司として私も同席しないとですねぇ」
とユリカちゃん。
ユリカちゃんはイケメンにも対抗するのか……三木くんと俺が懇意になるとでも思っているんだろうか。いや、普通嫉妬するの俺の方なんだよなぁ……?
「えっ、間宮さんはもうSNSやってるじゃないっすか」
「でも、私も上司として聞いておかないと」
「男同士の話ってのがあるんすよ」
「だめです」
「はいはい」
三木くんは「はぁ〜」と残念そうにため息をつくと俺のデスクの方へ寄ってきて
「男性広報でも渡り合えるSNSをやりたいんす。けど、あんまり思い浮かばなくて……そんで藤城さんに相談したいなって」
俺はユリカちゃんの方を見る。ユリカちゃんは三木くんの相談を聞いて「確かに」と頷いた。会社の広報と言うと若くて綺麗な女性が表に立って、男性やベテランの女性広報は社内教育やブレーン側、経営企画なんかに回ることが多い。ぶっちゃけ、俺はSNSの知識はあってもそういう会社経営的なところはよくわからないし、そもそもどんな人が広報をやってもいいと思う。
「確かに、女性広報って多いからなぁ。三木くんの良さをアピールできるSNS運営ができたらいいと思うけど……」
と俺が言ったところ、三木くんはまるで王子様にときめいたプリンセスみたいに顔を真っ赤にして、ユリカちゃんはそれを恨めしそうに見ている。
えっと……俺なんかいいました??
「俺の……良さ」
「そう、間宮さんの時もそうだったけども、やっぱりSNSってのは自分の良さをアピールできる手段だからね」
ユリカちゃんがうんうんと首を縦にふる。
「でいうと、筋トレとか好きですね!」
「筋トレ……に絡めた企画とか考えたらいんじゃないか?」
やってみます! と元気にデスクに戻った三木くん。今日はいろんな企画書を見る羽目になりそうだ。
「ゆうくんの筋トレ……筋トレ……ふっきん……うでのけっかん」
ちょっと緩んだ顔のユリカちゃんなのだった。
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