広報ダンスリレーチャレンジ!
第1話 広報ダンスリレーチャレンジ?!
※ 時系列として 同棲前、まだ悠介が本社に詰めている時のお話
間宮さんは真剣な顔でスマホを見ている。俺としても正直隣の席でサボられるとムズムズする。最近の間宮さんは結構な割合でスマホを眺めているし、まぁそれもきっと広報の仕事なんだろうけど……ほら、営業の奴らからすれば遊んでんなぁとか思うんじゃないか?
とか、気にならないのか。
「ダンスリレーチャレンジ?」
間宮さんが俺に送ってきたのは#広報ダンスリレーチャレンジという企画だった。何でもこのハッシュタグの投稿が集まった分、大学進学を金銭的理由で諦める学生のための奨学金にするとかいうチャリティー企画だそうだ。
音源はフリーのものでハッシュタグをつけて動画をカメグラに投稿する。へぇ……会社のPRにはいい企画かもしれないな。
「いくつかダンスのパターンを考えたので見てもらえませんか?」
「いいっすけど、会議室とります?」
「はーい」
間宮さんは元気よく返事をするとパソコンをカタカタと叩いた。
「1時間後ですねっ。よろしくです」
間宮さんに言われた通り俺はいくつかハッシュタグのつけられたダンスを見てみる。可愛いお姉さんたちがショートムービー特化のSNS「トックトック」で流行っている可愛いダンスをしている。バストアップの画角で撮影しているのがほとんどで、ダンスと言ってもステップなんてのはほぼない。
可愛らしく手を顔の周りで動かしたり、歌詞に合わせて手を動かすようなものだ。顔面最強の間宮さんがやったら可愛いだろうなぁ。と想像する。
「そうだ、社長のOK出てるんすか」
「もちです!」
まぁ、うちの社長はすぐにOKだすからな。今回の企画は特にうちに何か起きるようなもんでもないし。なんならチャリティーに参加できるとかいう好感度アップ企画だし。
そもそもこのハッシュタグの企画はどこが……って慈善団体か。
「間宮さん、間宮さん」
「どうしたんですか?」
「これ、実際の大学生にちょっと動画出てもらうのとかってどうです? 大学生になりたくてもなれない子供達のための奨学金なんで……生の大学生の意見を入れつつ、楽しく働くインターンをアピールして会社のPRもできそうですし」
間宮さんは「それいいですね!」と社長にそのままを伝える。すぐにOKが出。
三島部長が「若いねぇ」とお茶をすすると、俺も若い頃はダンスとかできたんだけどなぁ。と冗談めいた発言をする。
俺が「マジっすか?」と聞き返すとおかしな腕の動きを見せて「コンテンポラリーをね」と笑っている。
「でもどうしてエンジニアの道に?」
「俺が若かった頃はエンジニアって響きがカッコよかったもんで無我夢中で勉強したもんさ。大学時代は中間管理職になるなんて思ってなかったよ」
苦笑いをすると「妻とはダンスで出会ったのさ」とこれまた冗談めいた発言をしたが……確か、三島部長の奥さんってすげー美人だって噂だ。
「どうっすか、実際」
「うーん、藤城くんみたいな部下がいてよかったよ。ほら、営業の方なんて色々大変みたいだしさ。あぁ〜、一服どうだ。月初終わって今はゆったりしてるだろう?」
俺はポケットのタバコを確認して立ち上がる。間宮さんは少し不安げに俺たちを見ていたが「タバコです」と言うと少し不満げに「承知です」と答えてくれる。会議は一時間後だし、それに今はあまり仕事もたまっていないし。
俺としても広報の手伝いと同じくらい開発部の仕事も大事にしたい。社内エンジニアってのは意外と大事なポジションだったりするし。
「行こうか」
三島部長と俺は喫煙室へと向かった。
***
「じゃあー振り付けは覚えたっすかね?」
間宮さんが集めてきたのは社内でもそこそこのフォロワー数を持つインターン女子。採用アシスタントの子と営業部でアシスタントをしている子だ。名前はよく知らない。ただ、間宮さんに負けず劣らず二人とも美人でキラキラしている。
眩しい。すいません、こんなんキモ陰キャが撮影なんかして……。
「じゃあ、動画の構成を簡単に説明しますね」
まずは間宮さんのドアップから始まって、曲に突入。ワンフレーズを間宮さん、次に採用アシスタントちゃんと営業アシスタントちゃんを交互に。最後は三人で楽しそうに踊っているカットで終了。
「ご褒美は、藤城さんがバナナジュースおごってくれますよ〜」
聞いてませんけど???
インターン二人はキャピキャピと喜ぶ。いやいや、まぁでも……可愛いからいいか。財布ならいくらでも差し出します。
俺はそんな社畜根性全開で首を縦に降ると撮影を開始した。
ドアップになるように間宮さんに極力近づいて……間宮さんはライトに照らされて破壊力抜群である。可愛い。
「きゃー間宮さん可愛い!」
「やばっ、カメグラにアップしていいですか?」
インターンたちはそれぞれ間宮さんを撮影する。わかる、気持ちはわかるぞ。まじで芸能人の中でもトップの可愛さだよなぁ……? ってかインターンの子たち俺に近くないか?!
俺は少しの時間、ちょっとしたハーレムを楽しんだ。
完成した動画を編集する暇もなく、俺はバナナジュース専門店に連れていかれる。財布だけ渡すよと言ったのに割と強引な女子たちである。なんでもバナナジュースといえど、様々なフルーツを選んでいろんな味にできたり、牛乳を豆乳にできたりバリエーションが死ぬほどある。
「藤城さんはどれにします? カメグラ映えするやつにしてくださいよ〜」
キウイ、さつまいも、パッションフルーツ……
「ココアにしようかな……」
「え〜、藤城さんかわいい〜!」
あぁ……早くオフィスに戻りたい。
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