間宮さんとダイエットする話
第1話 ぽにぽにのお腹を見てくださいっ!
珍しく早く帰宅できたと言うのに、間宮さんはリビングでふくれっ面をしている。というのも、夕食のメニューを俺たちは決めあぐねていた。
管理職とはいえ、あまりに残業をしすぎると労務のお姉さまのカミナリが落ちるので早く帰って来たのはいいものの、2人で美味しいものでも食べようか。と俺が言ったら間宮さんはなぜか怒りだしたのだ。
「えっと、ユリカちゃん?」
「悠介くんのせいです」
「えっ?」
まじで心当たりがなさすぎる。
俺が悩んでいると間宮さんは徐ろに立ち上がると部屋着のパーカーをめくってお腹を出した。可愛いおへそが見えていて、白い腹が俺の目の前に。
「悠介くんのせいで太りました!! こんなにお腹ぽにぽに……になっちゃったんです! 毎日毎日、悠介くんが美味しいもの食べさせるから」
——わがまますぎる!!!
でも、彼女の言う通りだ。俺も、太った。よく、彼女ができると太るなんて言うが本当である。作っているのはほぼ俺だし、俺がメニューを考えてるんだからほぼ自業自得だが……、やっぱり誰かと一緒にご飯を食べると楽しくてたくさん食べてしまうし、もっと美味しいものを食べさせてあげたくて自然とカロリーが高くなる。
「いや、その……」
「どう責任とってくれるんですかっ」
間宮さん、チラチラとベッドの方を見る。これ、そういうことですか……? いやいや、まだ夕方だし早いって!!
「えっと、ダイエットメニューを考えますか……?」
「むぅ」
やっぱり! 間宮さんってば変なこと考えてやがった。まじで仕事に間宮さんとの情事に……で俺の体が持ちそうにないので俺ははぐらかす。このままいくと本当に俺がお嫁さんコースすぎません?
ダイエット、ダイエットかぁ……。玄米ご飯にするのはマストだよな。間宮さんの場合、運動をするわけじゃないからそもそものカロリーを減らしてあげて野菜中心にするのがいいだろう。
「なんか食いたいものあります?」
「うーん、さっぱり系ですかねぇ〜。太っちゃったら嫌われちゃう」
間宮さん必殺涙目の上目遣い。あざとい、あざとすぎる。
俺としてはちょっと太ったくらいで急に嫌いになるとかわけがわからない。俺が間宮さんの容姿にあれこれ言えるような容姿でもねぇし。
「ダイエットするには、カロリーが低くてバランスの良い食事と運動がマストですね」
俺の言葉に間宮さんは考え込むように顎に指を置いた。確かに、間宮さんちょっとぽっちゃりしたかもしれない。
間宮さんはスーツを着ることも多いし、女性だからこういう小さな体型変化も気になるんだな。
美味しい美味しいと食べてくれる彼女だが俺の配慮が少し足りなかったかもしれない。
「俺も少し太ったんで一緒にダイエットしますか!」
間宮さんは「楽しそう!」と言わんばかりに目を輝かせるとうなずいた。
***
俺たちが決めたのは週4回の朝の散歩だ。一応フレックス勤務になっているから早起きさえすれば散歩する時間くらいは取れる。うちの近くは閑静な住宅街で朝から空いているカフェもあるのでコーヒーを買いに行ったり、公園まで散歩して景色を楽しむこともできる。
運動はこの散歩でどうにかするとして、問題は食生活である。俺はカメグラの投稿もあるし……。
「お昼のカロリーを抑えるにはお弁当がいいですねっ」
確かに、最近じゃ忙しくてファストフードを宅配してもらってオフィスで食べることが多いからそれも大きな原因になっているかもしれない。間宮さんも本社で同じように宅配に頼っているとか。
——似た者同士かもしれない
「夜ご飯は玄米ご飯で和食中心にしてみるのはどうです?」
「お惣菜でもですか?」
確かにな。と俺は思った。夜遅くてなかなか日付が変わる前に帰れない日もあるし、俺に至っては会食に出るときもある。となると、間宮さんは近くのスーパーで惣菜を買うのだ。
俺としては買っていてくれるとすごくありがたい。
「そうっすね、揚げ物は避けて煮物とかお魚系がいいと思います」
間宮さんはスマホにメモを取る。真面目!
「あとは朝ごはんにカサ増しで腹持ちのいいものを食べて間食をなくすことっすね」
間食と言った途端間宮さんが「ギクリ」と効果音がなりそうなほど肩をビクつかせる。そうだ、本社には「お菓子配りお姉さん」たちが数多く存在する。特に総務や労務、経理なんかのコーポレート職のお姉さまたちは主婦さんが多い。
俺たち20代社員のことは子供だと思っていて、顔を見るたびにチョコやらくっきーやらをくれる。
「は、はーい」
本社にいるとお菓子、食べちゃうよなぁ……。多分、お姉さんたちは間宮さんのリアクションが可愛くてあげまくっているんだろう。気持ちはわかる。
「腹持ちのいいものって何かありますかね?」
「俺のオススメは……押し麦を使ったスープっす!」
押し麦? と聞きなれない言葉を聞いた間宮さんは首をかしげる。間宮さんの仕草の中でも可愛いトップ3、首をかしげる。効果はばつぐんだ。
「はい、ちょうど……あると思うんで作ってみます?」
「はいっ!」
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