第20話 超美人とお家デート?!

 駅とは反対方向、住宅街に向かって歩いて行くとちょっと高級なスーパーがある。俺も給料日後にしか使用しないが、ここは意識高い系の食材やおしゃれな海外輸入品が置いてあってスパイスなんかを買うときにとても便利だ。


「わぁ〜、このチョコ食べたかったんです」


 間宮さんはお菓子コーナーでチョコレートとにらめっこしている。彼女は可愛いティーカップセットを持って来たから紅茶に合うお菓子も一緒に探したいんだとか。

 まぁお菓子に関しては取り寄せで映えるものを探すのがいいとは思うけど……でもオレンジピールの奴は俺も好き。


「どれがいいと思いますかねぇ」


「間宮さんが食べたいのでいいと思いますよ」


「えぇ〜、悩む」


「じゃあ、俺は料理に必要なもの探して来るんで悩んでてください」


 間宮さんは「承知です」と敬礼ポーズをするとチョコレートを手にとって悩み始めた。

 

【キヌアとアボカドのシーフードサラダ】


 うん、文字列だけでも絶対に美味い。アボカドとシーフードだからワサビを混ぜたバルサミコソースでドレッシングを作って……キヌアはうちの炊飯器でふっくら炊いて……。

 俺は熟れたアボカドを探しながら他の野菜にも目を通す。パプリカは火を通すと甘くなるんだよな。いいかも。


「藤城さんっ、チョコレート決まりました。次は……シーフード選びましょうか」


 間宮さんは2つ、チョコレートの箱をカゴに入れると俺の前を歩く。あぁ、もしも彼女や奥さんができたらこんな感じなのかな? なんて妄想しながら勝手に幸せになる。あぁリア充爆発しろ。


「アボカドがあるんでエビは絶対ですよね。藤城さん、何かありますか?」


 間宮さんの言う通り、俺が見つけたレシピじゃエビとイカだったか。うーん、映えるのはタコとサーモンだな。


「イカ、タコ、サーモンあたりっすかね。食べれます?」


「私お魚はなんでも大好きです」


 間宮さんはすでにサーモンを手にとってカゴに入れようとしていたところだった。間宮さんはこんなに細いのに結構食いしん坊だ。

 ダイエットとかしてんのかな、してるよな。


「じゃあ、写真写りを考えてタコとイカ、あとはサーモンにしましょう。サーモンはスモークがいいかな?」


 間宮さんは「承知です」とうなずいた。


「ここ、外にパン屋があってそこで小さいパンでも買いましょ。低糖質のライ麦パンとか、おしゃれっぽくないっすか」


***


 会計はぴったり割り勘……ではなく残った野菜や調味料は俺の家に置くことになったから俺が少し多めに払うことになった。こんな機会がないけどバルサミコ酢なんて買わないし、お徳用キヌアもちょっと嬉しい。

 

「この辺って緑が多くていいですね。朝の散歩とか気持ち良さそう」


 間宮さんは俺の隣を歩きながらあたりを見回している。


「さっきのスーパーの先にいい感じのカフェがあって、余裕があるときはそこでコーヒー買うんすよ」


「へぇ〜、私の家は駅近だから騒がしくて……」


 女の子は駅から歩いてすぐのところで、できればセキュリティーがよさげの方がいいと俺は思う。ここら辺は静かだけど駅からは遠いし、駅前の人通りも少ない。特に間宮さんみたいな子は狙われるかもしれないし。


「お料理楽しみですぅ」


 間宮さんは部屋に戻ると大きなバッグから可愛いエプロンを取り出すと身につけた。ちょっと幼稚園の先生っぽい……? と言うか可愛い子は何しても似合うからすごいな。

 と言いつつも俺も腰巻のエプロンをつける。腕まくりして、手を洗って。


「なんかデートみたいですねぇ」


 間宮さんは俺の指示で野菜を丁寧に切りながら言った。


「えっと、あははは〜」


 恥ずかしくて俺は変な愛想笑いが出てしまう。意識しちゃうんでやめてください、お願いだから……。

 間宮さんは「いいなぁ、こうやって一緒にお料理できたらきっと楽しいですね」と満面の笑顔で、俺はなんて答えたらいいかわからない。


「あっ、アボカドはよろしくお願いします」


「えっと……はい。じゃあ、間宮さんはお皿の準備とかお願いできますか?」


 キヌアの粗熱をとって、それからシーフードの下ごしらえをする。ドレッシングは間宮さんでもできるだろう。

 パプリカに湯通しをして……あぁ、うまそう。

 アボカドは皮をいかに綺麗に剥くのかが重要だ。タネに当たるまで包丁を入れたあとぐるりと包丁で実を切って、捻るようにすると綺麗に半分に切れる。大きなタネを取り出した後、できるだけギザギザにならないように皮を剥く。


「よし、いい感じっすね」


 完成したサラダをテーブルに乗せて上から撮影する。アボカドがよく映えるパターン、フォークでサラダを分けているインサートっぽい写真、パンと白ワインを写り込ませた写真。

 間宮さんが持って来た木のカトラリーがとてもいい雰囲気を出している。


「よしっと、投稿文はあとで一緒に考えてくださいね」


 ——いただきます!


 バルサミコ酢とワサビのソースがシーフードとアボカドによく合って非常に美味しい。本日の主役であるキヌアはかさ増しもできるスーパーフード。プチプチとした食感がサラダにいいアクセントを加えている。

 スーパーフードってのはこう栄養のあるもんを食ってる感がいいんだよなぁ。


「おいしぃ〜、藤城さんっ。また作りましょう! 次はお肉料理がいいなぁ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る