3 キラキラした料理を乗せるべし!
第19話 超美人とお家デート?!
金曜日の夜、俺は仕事帰りに掃除グッズだのカラーボックスだのを手当たり次第に購入して、女の子を呼べるような部屋づくりのためにほとんど徹夜をする羽目になった。
まぁ、ダイニングテーブル周りは元々カメグラ用にランチョンマットやら色々あったし、キッチンもそこそこ綺麗にしているからよかったものの、生活スペース……特にベッド周りやゲーム機周りが絶望的だ。
1LDK、空き部屋は家族がたまーに来るからそれ用にしてるが、今は間宮さんに見せられないものを詰め込んで隠すために使う。
よし、トイレも綺麗にしたし……小物もそこそこおしゃれなのに取り替えた。
「はぁ……童貞高校生かよ、俺」
もう朝日が昇り始めた頃、部屋に匂いがつかないように換気扇の下でタバコを加えた。夕飯はテキトーに作った豚キムチ。ワインは飲めなかったけど今度料理に使えばいいか。
「あとは……間宮さんからの連絡待ち……だな」
***
間宮さんから連絡が来たのは朝の9時だった。
【最寄りの改札についたら電話しますっ】
俺は急いで駅に向かう。改札前で待っていた間宮さんは仕事用のオフィスカジュアルではなくて、なんというか……
——死ぬほどかわいい……
間宮さんは綺麗に巻かれたポニーテールを揺らしながら俺に近づいて来る。もこもこのアウターの下はボーイズライクなジーンズでヒールは俺に合わせてくれているのか低めのもこもこブーツ。いつもとは違って大きめのトートバッグを持っている。
私服は意外とカジュアルで動きやすい格好なんだな。このまま夢の国のカチューシャとかつけてほしい。絶対可愛い。
「持ちましょうか?」
とても重そうなトートバッグの中には女の子らしい皿やらカップやら色々入っていた。
「いいですか? すみません」
「一旦、うちで戦略会議してから料理の材料買いに行きましょうか」
「そうですね」
間宮さんのバッグを持って、俺は家に向かって歩き出した。間宮さんは仕事の時とは違ってかなりラフな感じだ。
俺はやっぱりキモいな〜とか思われているのかな? いや、思われているだろうな。
「おぉ、すごいうちよりセキュリティー良さそうですね」
うちのマンションはそこそこのマンション。駅から少し暗い道を通らなきゃならないので女の子にはオススメしないが、静かだし各駅停車しか止まらない駅なので家賃も相場より安い。
男の一人暮らしには贅沢だが、まぁ……彼女もいないし自炊する俺の金の使い道は家賃くらいだ。
オートロックを開けてエレベーターに乗る。俺の部屋は4階の角部屋。扉を開いて、間宮さんを招き入れた。
「おじゃましまーす」
「いらっしゃいませっす」
「スリッパ可愛いですね」
昨日急いで買いました。普段は裸足で歩き回ってます。なんて言えるはずもなく俺は「あざっす」と軽く言った。間宮さんは可愛い猫のスリッパでリビングへと向かうとバッグを置く。
「簡単に案内しますね。こっちが洗面所で、ここがお手洗いっす」
俺と間宮さんは手を洗ってそれからリビングにあるテーブルに座ることにした。間宮さんはミーアキャットみたいにキョロキョロと部屋を見回していてとても可愛い。
残念なのは「男の部屋にきた緊張感」がまるでないことだ。
「お水と烏龍茶、あったかいお茶のどれがいいですか?」
「あっ、あったかいお茶がいいです」
「了解っす」
間宮さんはひょっこりキッチンに入って来るとあれやこれや見回して「いいなぁこんなに広いキッチン」と呟いた。
間宮さんは駅近に住んでいるらしくキッチンは廊下にあるタイプですごく狭いらしい。
「藤城さんって彼女さんいそうなのになんでいないんですかね?」
それは俺の方が知りたいっすよぉ。まぁ、原因は性格だと思ってるし見た目にだって自信がないし、そもそもモテないなんてのは学生時代にまざまざと見せつけられたので理解している。
「どうぞ」
「いただきます」
間宮さんは一口お茶を飲むと「どんな料理がいいですかね?」と話を切り出した。確かに、それが本題だよな。
俺は邪な感情を消して頭をフル回転させる。キラキラ女子が手作りしそうな料理だよな……うーん。
「このカメグラマーさんはよく手料理で和食を作ってますね〜。でも男ウケって感じです。私はやっぱり女の子をターゲットにしたいので洋食系がいいかなって」
確かに、間宮さんの考察はあながち間違いではないと思った。
そもそも、間宮さんが「美人広報」としてバズっている以上彼女の顔だけで男性フォロワーはだいぶ獲得できている。
つまり、あとは女性のフォロワーが欲しいところなんだろう。
「だとするとがっつり洋食っていうよりは、女の子が盛り上がりそうなサラダ系とか意識高い系のスーパーフードを使った料理とかが良いですね」
「スーパーフード!」
間宮さんは今日イチのテンションで身を乗り出した。
「ひと昔前だとアサイーとか流行りましたよね。最近だとキヌアとかチアシードとかっすかね? サラダに入ってたりスムージーにいれて食感を楽しんだり……彩りを考えるならシーフードとかもいいっすね」
間宮さんと手料理系カメグラマーの写真を一緒に見ながらこれでもないあれでもないと俺たちは意見を交わした。
なんだろう、こんな風に緊張感なく女の子と話すのは初めてで心から楽しいと思えたのも初めてかもしれない。
なんて考えていたら間宮さんと近距離で目があう。彼女は色素薄い系の瞳でじっと俺を見つめている。
「えっと……買い物行きますか?」
「あっ、えっ……あっ、はい」
——あれ?
間宮さん赤くなってないか?
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