第13話 美人広報と朝活!
「うっま」
あまりにも美味しいコーヒーと朝食。朝は家で作る派だった俺もこんなに美味しくて安い朝ごはんが食べられるなら朝早く起きてもいいと思った。
バリスタの黒澤さんは他のお客さんの相手もしながらカップを拭いたり、手入れをしたりしてとても忙しそうだった。
隣の客が頼んだソーセージがめちゃくちゃ美味しそうで次来たら頼もうと心に決めた。
「朝コーヒー飲むと頭がスッキリしますよね」
「俺も朝家で作るときは必ずコーヒーですね、インスタントですけど」
「お料理されるんですか?」
間宮さんはにっこりと微笑んでいるが目の奥がなんだかギラギラしてる。ちょっと待てよ。俺、ちょっとやばい地雷踏んだんじゃ……。
俺は間宮さんから目をそらしコーヒーをすすった。
「まぁ、ちょっとくらいは」
「もしかして……」
間宮さんはフォークを置くとスマホに触り、俺のカメグラを開くと写真をタップした。
「これってご自身で? 私、てっきり彼女さんが作っているのかと」
「あぁ、自分っすね。彼女なんていないですよ」
悲しい告白をした俺はふうとため息をついて残りの料理を食べ終える。やばいなー、こんなに腹に食べ物いれたら会社で眠くなる。
間宮さんはいくつか俺のカメグラの写真を見ているようだったが、何を考えているんだろう?
やっぱり料理を1人で作って、家で1人で写真とってるなんて陰キャだなぁ、キモイなぁと思われてるのか? それとも俺だからキモいなって思われてるとか?
悲しいかな、一人暮らしを彼女なしで始めるとだんだん料理が上手くなる。まぁ、兄貴が料理人ってこともあって多少知識があるからかもしれないが、俺自身家で過ごす時間が多いとできるだけ美味しいものを食べたいと思うし。
友達も少ないからそんなことしかできない。あぁ、寂しい。
「黒澤さんっ、テイクアウト用のコーヒーを二つおねがいします」
間宮さんは会計を別で済ませると昨日と同じようにドヤ顔で俺の方を見ていた。俺も自分の分の会計を済ませた。黒澤さんはそのタイミングでテイクアウト用のコーヒーを渡してくれる。
「またお願いしますね。一応、ランチとディナーもあるので」
「またお世話になります。ごちそうさまでした」
***
俺たちは駅をスルーして会社まで歩くことにした。というのも電車で会社の最寄駅まで向かうとちょっと遠回りなのだ。店に入る前よりも人通りは多く、チェーン店なども開店し始めていた。それだとしてもまだ朝早い。
俺はホカホカのコーヒーを飲みながらゆっくりと歩く。あぁ、タバコが吸いてえな。
「私、料理って全然しないんですよね」
料理得意な男でもいるのかな。まぁ、いるか。間宮さんくらいなら中学生から彼氏が途切れないタイプだろう。
「お恥ずかしながら不器用なんです。なんというか、センスがないってよく両親に言われます」
あぁ……そっちね。
「やっぱり、キラキラ女子としては料理ができたほうがいいですよね」
あっ……これはまずい。まさか、料理を休みの日に教えてくださいとか、家に来ませんとかとか言われたらどうしよう?!
とりあえず、否定だ。
「いえ、SNSで自宅をあげると女性の場合は特定されたりとかあるんで、よくないっすよ。あくまでもお仕事なんですし」
「あぁ、やっぱりそうですよね」
よし……諦めてくれた。間宮さんはピタリと足を止めた。
そして何かを閃いたように笑顔になる。
「今週の土曜日、藤城さんのお家で料理教えていただけませんかっ?」
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