第14話 レベルアップに努める

 ニコが一人でワイルドボアを倒した。

 この事実は、ニコが思っている以上に村への貢献が大きかった。


 というのも、2日に1回の頻度で行われていた村人たちの狩りが、なくなったのである。


「本当にニコには頭が上がらねえや」


 とはアキナワの言である。


 1日おきに行われる狩りは、村人の体力を大きく削っていた。

 命を落とすリスクが伴う、それでありながら成果がなく終わる日も多い。


 ハイリスク・ローリターンの作業は村人たちの精神をすり減らしていた。


 だがしかし、ニコがワイルドボアを一人で倒してしまった。

 しかも1日に4頭である。


「えへへ、すごいでしょニコは~」

「だからなんでマナが得意げなんだよ」


 マナカが嬉しそうにニコの腕に抱きつく。ニコは困ったような様子でいるが、マナカを振り切ることはできない。


「――っ!」


 そんな風にニコがデレデレしていると、決まってニコには頭痛が訪れるのは最近分かったことだった。と言っても耐えられないほどの頭痛ではないので、別段問題はない。


 それはともかくとして、ニコは村人の中では英雄として扱われていたのだった。


 ニコ4頭も倒したから、今は村人も余裕がある。

 よって狩りに駆り出されていた村の男衆は、精力的に農業に力を入れていた。


(この村の農業が盛んになるのも、時間の問題かな)


 また、余裕がなくてできていなかった村の設備に関しても、徐々に改善されていた。


 まずは村の防衛設備。主に魔物に対するものだが、徐々にさびれていた。よってここ10年、ずっと夜は4人の村人が徹夜で見張りをしていたのだ。

 ゴブリンは村人でも倒せるし、ワイルドボアは火を見せれば逃げてしまうので、安全には問題がない。

 ただ問題だったのは、やはり村人の体力的な問題だった。見張りと言っても少しばかり高いやぐらで夜中の間ずっと立っているという環境。お世辞にもいい環境とは言えなかった。


 それをずっとなんとかしたいという思いは村長のヤックにもあったのだが、しかし今までは時間も労力もなかった。


 だが、その状況が改善されつつある。


 まだ村の北側だけ――一番家が多い区域――だが、そこに頑強な柵が設置される計画がスタートしていたのだった。

 昨日の宴の後に行われた村会議にて、村人の一人が「狩りの負担が減ったなら、見張りの負担も減らしてくれ」という提案があった。たしかに、狩りがなくなれば一番負担が大きいのは見張りの人間である。


 そこで、まずは家の多い北側に柵を設置しようという話になった。

 二重に柵を設置。その外側に簡易的な堀を作ることで、そちらの見張りを要らなくしていこうという話だった。


 そうすれば、今まで休みなしだった見張り番も、4日に1回は休みが来るようになる。あるいはもう一つの方角にも設置をすれば、2日に1回休める。


 そうなれば、村人もみな均等に休めるだろうということだった。


「に、ニコくん。ま、マナカちゃん。こ、こんにちは」

「こんにちは、マルトさん」


 その見張り番の一人、マルトが村を出ていこうとするニコとマナカに声をかけた。


「に、ニコくんはどこかに行くのかい?」

「ええ、ちょっと狩りをしに行こうと思います」

「か、狩り⁉ き、気を付けていくんだよ?」

「はい、ありがとうございます」

「ま、マナカちゃんも」

「うん!」


 こうして順調に村が軌道に乗っているのはニコのおかげ、というのはもはや昨日のことで村人の共通認識となった。

 だからだろうか、まだ二十代半ばのマルトはニコに対して緊張しているようだった。


 ニコは、ようやく村に恩返しをすることができたような、そんな気持ちになっていた。




 ニコの周りには、実に45体のゾンビがうろついていた。


 というのもゾンビのレベルが45になったからである。前回のワイルドボアとの戦いのときよりも増え、ステータスも上がっているから森でも問題なく動くことができる。


「マナカ、あんまり離れちゃダメだよ?」

「うん、わかってるわかってる~!」


 そう言いながらスキップして先行していくマナカ。

 ニコと、その周りに愛しの「ゾンちゃん」が付いているからか、マナカは少しもおびえた様子も見せずに堂々と歩いている。

 いや、前にワイルドボアを見つけたときもそこまでおびえていなかったから、ただただ肝っ玉が据わっているだけかもしれない。


 そんな2人がこうして森をうろついているのは、理由があった。


 レベル上げである。


「ん! ゴブリンはっけーん!」


 マナカが指をさして大きな声を出す。


「え、どこ?」

「あれあれ!」


 マナカが指さす方向を見ると、かすかにゴブリンらしき緑色が見えた。


「え、あれが見えたっていうの?」

「うん!」


 村育ちだからなのか、それとも生まれ持ったものなのかは分からないが、マナカは目がいいらしい。というかたぶん。


(才能があるんだろうな)


 前にワイルドボアと対峙したときも、直感で最適の動きをしていた。

 たぶん、なんとなくで何をするべきなのかが分かってしまうのだろう。


 ニコにはそんな才能はない。毎回毎回、頭を振りしぼって次の行動を捻出している。ただ、ニコも別にマナカに嫉妬することもなく、むしろ頼もしいなあと思うばかりであった。


 そんなマナカとともに、今日もレベル上げをしていく。



 成果はワイルドボア3頭とゴブリン10匹だった。



『ニコ・オルライト』


 Lv.48(+5)

 力  71(+10)

 防御 54(+8)

 賢さ 55(+9)

 敏捷 85(+10)

 運  30(+5)

 魔力 32(+5)


《スキル》 【ゾンビ使い】



『ゾンビ』


 Lv.51(+6)

 力  52(+7)

 防御 52(+7)

 賢さ 52(+7)

 敏捷 52(+7)

 運  52(+7)

 魔力 52(+7)


《スキル》 【増殖Ⅰ】




 ――――――――――――――――――――



 スキル欄を作ってみました。

 ちなみにスキルは一人一つだとこの世界の人間は思っているようですが、実際には複数持つことができます。

 例のごとく、強い種族(竜人族、魔人族)は複数持ちが当たり前ですね。つ、つえええ……。


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