第12話 ゾンビ小戦争③

「光?」


 そのマナカからあふれ出す金色の光――いや、太陽光がなくても光りそうな点からいえば本物の金よりも純粋な金色だろう――それがマナカの体から所かまわず飛び出していた。思わぬ輝きに、ワイルドボアの動きも止まっていた。


 いや、よく見ると規則性はあった。


 その光の行く先が決まっていたのだ。


「なんだ……これ」


 行き先はニコ、そしてニコの召喚していたゾンビに集まっていた。

 そしてその光を受けると、不思議なことに力が湧きだしてくる。


(マナカのスキル、なのか……?)


 スキル、というものはニコの『ゾンビ使い』のような召喚魔法を使えるようにするスキル以外にもたくさんある。


 〇〇族相手に力を発揮する用になるだとか、味方の力を増強するだとか、鍛冶で力を見せるようになるだとか、効果は発見されているだけでも多種多様だ。


 中には複数のスキルを持つものが魔族にいたり、あるいは上位種族の方がスキルが強いなんて言う話もあるらしい。


「たぶん、味方の力を底上げするスキル、だよな……?」


 明らかに足取りが先ほどまでより軽い。疲れが吹き飛んでいて、なんなら始めよりも速く走れる予感があった。

 力が湧き出てきて、何でもできそうな感じ。いわゆる全能感と言うやつだろうか。それがニコにもあった。


 そしてそれが、他のゾンビにも与えられている、ということは。


「勝ったな」


 マナカは胸の前で両手を組んで、祈るように目をつぶっている。

 自分のしでかしたことに気が付いていないんじゃないかと思うほど、安らかに目を閉じている。


(あれはたぶん、寝てる)


 でももしかしたらあれでマナカの力が吸われているのかもしれない。たとえば魔力とか。


 じゃあ、さっさと終わらせた方がマナカのためだ。


「いlぴ」

「ギャ、ギャガガガガ?」


 二体いるうちの一体のワイルドボア目がけて、ニコが高速で移動する。

 やはり、動きの次元が1段階上がっている。自分が自分ではないようだ。


「はっ‼」


 ニコの一撃でワイルドボアの体がひっくり返る。


「いけ、お前ら‼」


 そして同時に俊足化しているゾンビたちが一斉に群がって、もう一頭のワイルドボアも圧倒的な力でねじ伏せた。

 もはやゾンビ一体の方がワイルドボアよりも力があるようだった。そうなったら、数の差が如実に現れてくる。


 結果として、2体のワイルドボアをねじ伏せるのに5分もかからなかった。






「本当に、マナカに助けられた」

「そう? えっへん!」


 帰り際、ゾンビにワイルドボア4体の死体を持たせている途中にマナカにそう言うと、マナカは誇らしそうに胸を張った。


「でも、一体あの力はなに? 前から使えるの?」

「いやあ、それほどでも」


 褒めているわけではなく純粋な疑問だったのだが、マナカは「えへへ」と照れくさそうにしている。

 すっかりおだてられて気をよくしているようだ。


 ただ、本当にマナカのおかげで勝ったと言っても過言ではないし、なんならマナカがいなかったらニコは死んでいた。

 だから、感謝はしてもしきれない。


「これでこのワイルドボアたちの魔石を食べさせれば、ゾンビたちもさらに強くなること間違いなしだね」

「愛しのゾンちゃん……きみ、さらに強くなるんだねっ」


 ゾンビが強くなってなぜか嬉しそうにするマナカ。

 マナカの考えていることは本当に分からないなと、ニコは思った。


 それにしても、とニコは思う。


 あのマナカのスキル。


 あれは、正直に言ってニコとの相性がすごくいい。


 というのも、ただニコだけの力を強くするだけならそんなに大した力を発揮するわけでもないが、あれはゾンビにも同じように力を付与する能力だ。

 だからこそ、数を生み出すことのできるニコには相性が良すぎる。


(でもあれは狙って出せるようには時間がかかるだろうし、あれに何回も頼ることはできないな)


 ただもしマナカがあの力を狙って出せるようになって、ニコのゾンビもこの調子で強くなったら。


 ――幼馴染のスピカを救うことも、現実的になってくるかもしれないな。


「まあとはいってもマナカは村の子だし、無理か」

「? なに、ニコ?」

「いや、なんでもないよ」

「ええ、なに? おしえてよぉ」

「内緒」

「けち」


 最後の言葉はニコの胸にも刺さったが、それでもニコは言う気にはなれなかった。


『ニコ・オルライト』


 Lv.43(+15)

 力  61(+22)

 防御 46(+17)

 賢さ 46(+16)

 敏捷 75(+27)

 運  25(+10)

 魔力 27(+10)


《スキル》 【ゾンビ使い】



『ゾンビ』


 Lv.45(+15)

 力  45(+15)

 防御 45(+15)

 賢さ 45(+15)

 敏捷 45(+15)

 運  45(+15)

 魔力 45(+15)





―――――――――――――――――――――



イサール村周辺の魔物のレベルはおおよそ30くらいです。じゃあなんでニコは同じレベルなのにあんな苦戦したの?っていうのには、やっぱり種族値みたいなものがあるからですね。同じレベルでもパラメータの上がり具合が違います。


ちなみに、レベルというのはニコ以外も持っています。ですのでたとえば、今回の戦いでマナカもレベルが上がっています。村人たちがあまり強くならないのは、複数人で戦っているからですね。以上、突然の謎解説でした。

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